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第18話『星環に揺れる均衡』

【連絡:本日分の更新予定を送信します】

おはようございます、朔夜様。

本日も“宇宙艦で異世界に転移したら、俺の愛機が神機扱いされてる件”をお読みいただき、ありがとうございます。\n\n> 以下、本日の更新スケジュールです。ご確認ください。


《本日更新予定》

▸ 第18話(本話)7:00公開済み

▸ 第19話:14:00頃予定

▸ 第20話:17:00頃予定

▸ 第21話:20:00頃予定

▸ 第22話:22:00頃予定


※時間は目安です。ナビスの予測値より±15分程度の誤差が生じる可能性があります。

 会場の重い沈黙を、ナビスの解析音だけが静かに満たしていた。


 壇上に立った俺は、無数の視線を受け止めながら、言葉を選ぶ。


「俺の名前は天城朔夜。帝国から臨時男爵の爵位を受けた者だ。だがそれ以上に──この銀河で、自分の意志を持って立ち上がる者だ」


 視線の一部がわずかに揺れる。帝国派の一角、保守派の代表格らしい初老の貴族は目を細めた。


「俺は、地球という名の星で生まれた。この場所から遠く離れた、魔力の概念すら存在しない場所だ。だが今、こうして銀河の中に立ち、あらゆる星の理と関わろうとしている」


 会場の右手、第三貴族連合の席では、イレーナが頷いているのが見えた。


「俺はこの銀河に対し、ただ一つだけ約束する。誰かの支配のためではなく、俺自身の目で、耳で、心で選ぶ。そうして築いた道の先に、誰かが共に歩いてくれるのなら、それを拒む理由はない」


 言葉を締めると、短い沈黙ののち、再び儀礼的な拍手が会場に広がる。だがその音には温度差があった。支持か、牽制か、警戒か。音の持つ意味が、まるで剣戟のように響いていた。


 壇を降りる俺の背に、イレーナが近づき、小声で囁いた。


「お見事。でも……気をつけて。あなたの言葉は、今、銀河中に飛んでいってる」


「望むところだ。これからは“知られること”が、最大の武器になる」



 その夜。

 カレルス星環の迎賓ドームに戻った俺たちは、短時間の休息を与えられていた。


 リィナが珍しく自分からコーヒーを淹れてくれる。湯気の向こうに、彼女の表情が柔らかくゆらぐ。


「……思ったよりも、上手でしたね。演説」


「そう見えたか?」


「ええ。まっすぐで、少しだけ危うくて。だから、きっと……届く人にはちゃんと届きます」


 俺は黙ってカップを受け取り、ナビスの報告に耳を傾けた。


《本日付で、第三貴族連合より親書が1件、帝都議会より意見聴取依頼が2件、外縁自治星系より会合の打診が3件。情報機関経由の匿名通信も4件受信済み》


「……俺、今、だいぶ忙しい人間になってないか」


《はい。あなたは現在、“不安定な自由人”として、あらゆる陣営にとって可能性と脅威を併せ持つ存在です》


「もう少し言い方ってもんが……」


 そこへ、ナビスからの新たな通信通知が届く。


《機密通信──外縁星系中継ノード経由。識別不明。開封しますか?》


「開けてくれ」


《解読完了。内容を要約──》


> “貴殿の演説により、いくつかの『動かざる勢力』にも波紋が広がりつつあります。

> 特に、魔力を『神の言葉』と信奉する宙域において、貴殿の存在は既に認知されている。

> 魔力なき星より来たりし者。神々の座より遠く、禁じられた知識に触れし者。

> 貴殿の存在を、あの国は『偽りの奇跡』と断じた。”


「…………」


 無言のまま、文面を何度も読み返す。


 それは名指しこそされていないが、明確だった。

 セラフィエル聖制帝国。

 魔力を神とし、魔力による支配を正当とする宗教国家。

 俺のような“魔力外の存在”を、彼らが見逃すはずもない。


 リィナがそっと俺のカップを引き取った。


「……届いたんですね。宗教圏に」


「間違いない。セラフィエルか……初めて聞いた名前だが、どうやら穏やかではなさそうだな」


 ナビスが静かに補足する。


《当該情報は確認困難ですが、“聖制国家側の注視”という観点では信頼性が高い。今後、思想的干渉や使節団との非公式接触が発生する可能性あり》


「放っておいても、向こうから来るってことか……」


《はい。宗教国家の対応は原則として緩やかですが、“神敵”認定が下された場合は迅速かつ過激な行動に転じる傾向があります》


「神敵、ね……おれが」


 どこか、遠い話のように感じられた。


 だが、俺はこの銀河にいて、名前を持ち、紋章を得て、演説までしてしまった。

 俺が何者かであると定義されることを、もう避けることはできない。


 俺は深く息を吐き、カーテン越しに夜空を見上げた。


 星々は静かに瞬いていた。


 ──だが、その中のいくつかは、もう俺の存在を知っている。

 そしてその“視線”は、祝福とは限らないのだ。



読んでくださりありがとうございました!


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