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第1話『星を喰らう空』

はじめまして、こんにちは!

この作品は、星を眺めていた大学生が、気づいたら宇宙船の中で目覚めてしまったところから始まります。

しかもその宇宙船、ゲームで自分が設計した“最強の艦”っていう……もうツッコミどころしかない展開です。


SF、魔力、異世界、宇宙戦艦、ちょっと不親切なAIなどなど、盛りだくさんでお届けします。

まずは1話、ゆるっと読んでもらえたら嬉しいです!




 俺の名前は天城朔夜あまぎさくや

 大学で天文学を学んでいる、ごく普通の宇宙オタクの大学生だ。


 人付き合いは得意じゃないし、研究室で一人黙々とデータを見てる時間が好きだった。

 夜の観測なんて誰も来ないから、静かでいい。今日も屋上の観測所で、いつものように星空を眺めていた。


 俺がハマっていたゲームは《コズミック・フロンティア》っていう宇宙戦略シミュレーションだ。

 天体の運行、艦隊の運用、魔力に似た“エーテル”エネルギー……。

 空を見ている時も、ついその世界の星図と重ねてしまうくらいには中毒だった。

 

 その日も、いつものように一人きりで星空を見ていた。空は澄んでいて、都市の喧騒も届かない場所だった。

 静かで、孤独で、それでいて心地よい時間──俺にとって、何よりの安らぎだった。


「……あれ?」


 今夜の星空に、妙な光が混じっていた。

 紫色に脈打つような光。その挙動は、どう見ても恒星の動きじゃない。まるで心臓の鼓動みたいだった。

 妙に引っかかる。

 こんな星は今までに見たことがない。


 気になって望遠鏡を覗き込んだ瞬間、視界が一気に闇に染まった。

 落ちる、というより、吸い込まれるような感覚──。

 自分の身体がばらばらに解体されて、どこか別の空間に投げ出されるような不快な浮遊感。



 次に目を覚ましたとき、俺は見知らぬ空間にいた。


 視界の中で、青白いホログラムがふわふわと浮かんでいる。

 座席に身体が固定されていて、どうやらリクライニング式のパイロットシートに座っているようだ。

 室内は微かに振動していて、周囲には精密機器の起動音と、かすかな電子音が混ざったようなリズムが満ちていた。


《コマンダー。意識の復旧を確認。魔力波動、安定》


 どこからか女の声が聞こえた。

 だがその声には、人工的な共鳴音が混ざっていた。人間じゃない。


「……誰だ、お前」


《艦名:アストラ・ヴェール。本艦は現在、重力干渉により降下中です》


「は?」


 アストラ・ヴェール──その名前に、俺の背筋がゾクリとした。

 それは、俺が《コズミック・フロンティア》で使っていた、最強の愛機の名前だった。

 ゲーム内で自分で設計し、武装もAIもカスタムした究極の艦。


 船内のインターフェースも、HUDも、音声ナビも……すべて俺がゲームで使っていたそのまま。

 だが、これは夢じゃない。そう断言できるほどの“リアル”な感触が、全身に突き刺さっていた。

 自分の体温、汗、呼吸、目の前の画面のきめ細かい粒子感まで──あまりに現実的すぎる。


《推定着地点まで120秒。表層温度上昇。衝撃に備え、体勢を固定してください》


「ちょっ、おい、マジで落ちんのか!?」


《なお、祈りの効果は未検証です。試してみますか?》


「皮肉言ってる場合か!!」


 コックピットの外では、赤く燃え上がる大気圏の炎が視界を埋め尽くしていた──。



 着陸は……どうにか無事だった。

 アストラ・ヴェールは、広い丘陵地帯の谷間に突き刺さるような形で着地していたが、機体の損傷は最小限。

 中の俺もかろうじて無傷。


 だが、安心する間もなく、機体が警告を発した。


《接近反応。コルベット級艦艇、四機。帝国式構造。識別コード:男爵家私兵》


「えっ、戦艦!? しかも四機!?」


『そこの艦に告ぐ。ここは帝国領だ。無許可の着陸は軍事的挑発と見なす。即座に降伏せよ!』


 コックピットのモニターには、魔導甲冑を着た兵士たちと、古びた艦艇が映し出されていた。

 ただのロールプレイかと思うような世界観。それが今、目の前の“現実”として迫ってきていた。


 どうする? 交渉? 逃げる? ──いや、そもそもこっちに選択肢はない。


《交渉失敗と判断。非殺傷モード、全自動防衛システム起動》


「えっ、ちょ、ま──」


 機体が震え、外殻から青白いフィールドが展開される。

 続けて、機体下部から四門の可動式レーザーが展開。相手艦を一瞬でロックオン。


 先制攻撃は、私兵側だった。

 コルベットの一機が主砲を展開、エネルギーを収束してから発射。

 赤い魔力弾が、こちらのコクピット目がけて一直線に飛んでくる。


《迎撃します》


 その瞬間、ヴェールの側面から展開されたバリアが音もなく魔力弾を吸収した。

 カウンター射撃。青いレーザーが逆方向から走り、相手艦の砲塔をピンポイントで破壊する。


「うおお……マジかよ……」


 続いて残りの三機が包囲陣形を取り、挟み撃ちを狙ってくる。

 その動きを読み切ったかのように、AIが指示を飛ばす。


《回避機動、手動制御に切り替え可能です。どうしますか?》


「いや、無理だろ俺! お前がやってくれ!」


《了解しました。模擬戦データを基に、戦術パターン:七番を実行》


 機体が滑るように動いた。

 地面すれすれを滑空するように前進、左へ急旋回。後方から撃ち込まれた魔導弾を回避しながら、同時に右側艦の推進器を破壊。


 一機、沈黙。


 残りの二機が前方から突っ込んでくるが、それを迎え撃つようにドローンポートが開き、四機の小型支援機が展開される。


《照準補助開始》


 ドローンから赤いレーザーが伸び、敵艦の弱点を表示。

 主砲が二連続で火を吹き、右艦の動力炉をシャットダウン。


 最後の一機が離脱行動を取るも、機体全体を包むように展開された魔力フィールドに接触し、操舵系統がショート。


 四機、戦闘不能。


『っち、なんだあの化け物機は!? 全部ダメだ、動力落ちた、制御きかねぇ! 誰か応答しろ! 畜生……装甲ごと抜かれた!? もう無理だ、やられるッ!』


《戦闘終了。被害報告:ゼロ。精神的敗北度:推定98%。……素晴らしい結果ですね、コマンダー》


 息が荒い。手が震えている。

 画面の中で、青く輝くアストラ・ヴェールのシステムが静かに明滅している。


 これが……俺のゲームで使っていた艦? 本当に?

 まるで冗談のような現実が、今この手の中にある。


 どこだ、ここは。

 なんなんだ、この世界は──。


 ──そう、ここは現実ではない。けれど、夢でもゲームでもない。

 俺は今、本当に異世界の宇宙で、戦争のど真ん中にいる。


 そして、その中心には、俺の手で設計したはずの神機アストラ・ヴェールがある。


 冗談じゃない──でも、心はなぜか、少しだけ、昂ぶっていた。



ここまで読んでくれてありがとうございます!

主人公・朔夜は訳も分からぬまま、とんでもない艦に乗ってとんでもない戦闘に巻き込まれました。

AIも口が悪いし、周囲からも怪しまれるし、先行きはかなり不安です(笑)

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