第16話『銀河貴族の紋章と誓約の席』
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帝都からの返信は、わずか一日後に届いた。
《条件付き受諾を確認。アマギ・サクヤ殿に対し、“臨時男爵”の地位を付与する》
《特例措置として、艦の保有および運用権は個人の裁量に委ねられる。ただし、軍事的暴走や治安破壊とみなされた場合、爵位は即時剥奪され、艦は帝国軍管轄下に置かれる》
この文面は、一見“承認”に見えて、実際は“監視”と“制限”の継続だった。
だが、それでも──俺はこれで、“帝国に名を刻んだ”ことになる。
この日を境に、朔夜・アマギは正式に帝国貴族──辺境臨時男爵としての認可を受けた。
それは銀河社会において、政治的・軍事的な正当性を得るということでもある。
同時に、全方位からの注目と干渉を受けることも意味していた。
*
式典は、帝国側から選出された中立地──辺境星ダリエルにて執り行われることになった。
ダリエルは軍港としても知られる要塞都市であり、地表の大半を防衛拠点と議会施設が占めている。民間人の出入りは厳重に管理され、帝国でも数少ない“政治的無風地帯”だとされている。
俺たちがアストラ・ヴェールで星系外縁部に到着すると、すぐに帝国艦艇の迎えがつき、厳重な識別プロトコルの下で入港が許可された。
ナビスが淡々と報告を続ける。
《地上施設“セレス・ドーム”に式典会場を確認。会場規模は貴族中位階級の承認式としては異例の規模です。出席者には帝都騎士団関係者の名も見られます》
「帝国も、本気ってことか」
《はい。あなたを“形式的に認める”のではなく、“利用可能な存在として保有する”段階に進んだ証左です》
式典が始まる前、俺は控室にて帝国儀礼服に袖を通した。
黒と紺を基調とした礼装は、俺のような部外者にはいささか窮屈にも感じられたが、着てしまえば不思議と気が引き締まる。
リィナがさりげなく襟を整えながら、ふと呟いた。
「……似合ってます。嫌味じゃなく、本当に」
「ありがとな」
その声が、少しだけ緊張を和らげた。
*
会場は、白銀の装飾が施されたホールだった。
天井には透過結晶で作られたドームが広がり、外の星空が美しく映し出されている。
中央に浮かぶ魔力投影の立体紋章──それは、帝国が承認する爵位者の証だった。
階級ごとに分かれた席には、すでに百名以上の参列者が着席していた。
その中には、帝国本庁の監察官、貴族評議会の代理人、そして外交観察団名義の貴族代表までが含まれていた。
開式を告げる合図と共に、空中スクリーンに俺の経歴が表示される。
《氏名:アマギ・サクヤ/出生:不明/所属:不明艦籍/魔力適応率:Cランクを大きく超過/登録特例区分:異星来訪者》
異星来訪者。
その言葉が会場に響いた瞬間、空気がひときわ張り詰めた。
「本日、銀河帝国の承認をもって、辺境地帯防衛および艦隊管理を担う資格者として、アマギ・サクヤ殿を“臨時男爵”に任ずる」
宣言と共に、空中に映し出された紋章が変化する。
それはどの貴族家とも関係のない、完全に独自の意匠──
流星の軌道を思わせる弧と、艦影を模した鋼鉄の意匠が融合した、“俺だけの家紋”だった。
貴族たちの視線が一斉に俺に注がれる。
驚き、嫉妬、侮蔑、そして興味。
その中で、俺は前へと歩を進めた。
「この爵位を受け、俺はこの銀河の一角に責任を持つ存在となる。
だが、俺は“誰かの命令”に従うためにここに立っているわけじゃない」
ざわめき。
それでも俺は構わず、視線を正面に向けて言葉を続けた。
「俺が守るのは、人だ。そして、俺自身の意志だ。
それを妨げる存在があるなら──たとえ帝国であっても、俺は従わない」
静寂が落ちる。
誰もが、次の反応を窺っていた。
その中で、最初に動いたのは、イレーナ・フローヴェルだった。
彼女は立ち上がり、ゆっくりと、だが確かに拍手を送る。
「まったく……本当に厄介な“貴族”を生み出したものね、帝国は」
皮肉交じりの微笑と共に、拍手の音が広がる。
第三貴族連合の代表者たちも続き、やがて会場の半数が儀礼的な賛意を表した。
その光景は、まるで“新たな時代の幕開け”を象徴しているようだった。
*
式典終了後。
控室に戻った俺に、ナビスがデータを提示する。
《正式な爵位登録が完了。アマギ家の紋章は銀河貴族データベースに追加されました。また、臨時爵位とはいえ帝都直轄区での航行許可も得られます》
「つまり、公式に“貴族社会の門”をくぐったってことだな」
《はい。同時に、今後あなたを利用しようとする者も増加します。敵意とは限らず、好意もまた、武器として機能します》
「面倒な世界だな」
それでも、俺は立った。
この銀河で、俺という“存在”が、確かに認められたのだ。
──なら、次はこの地に“自分の旗”を立てる番だ。
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──NAVIS