第十六話 嵐は過ぎ去って
大蛇を倒し、一先ず平和が戻った寮優高校の歴史研究部の4人は部室に集まっていた。部室の窓際にあるテーブルに響子が座っており、その前の机に3人が座っていた。各自弁当を食べていたが響子の言葉によって食事のペースが落ちていた。
「んで?どう言うことかしっかり説明してくれるんだろうな?お前達」
「えぇとですね・・・・・・実は・・・」
と、言うわけで再び始まったアンナによる事情説明。三回目ともなると慣れたものだが時間も押している為手短に説明した。一通りの説明を聞き、それまで黙っていた響子が口を開いた。
「なるほど・・・悪魔に生まれ変わり・・・俄かには信じられねぇ話だが実際に見た以上、信じるしかないな。それで?この部もそのために作ったわけか。顧問がアタシなのは偶然か?」
「完全に偶然っすね。まさか先生まで生まれ変わりだとは思わなかったっすよ。俺が先生を選んだのは独り身で何もすることないから暇してそーだなとおm痛ててててててててて!!!ギブギブギブギブギブ!!!!!首絞まってる!マジ洒落にならんから!!!!」
「ほぅ?お前、アタシが何だって?もう一回言ってみな?」
「何でもないです!何でもないですから!!!」
戌亥は失言により見事にお灸を据えられている。その様子を二人は傍観しながらご飯を食べていた。ちなみに、朱子崎響子は元スケバンであり、かつては天下に名を轟かせた有名人である。今では丸くなり、当時の片鱗を少し見せる程度だが良き教師である。
「そういえば・・・・・・先生の特性、『棘源凶蘭華』《サングイス・ラングスイル》・・・でしたっけ?それはわかったんですけど、先生は何の生まれ変わりなんです?」
「ん?あぁ、言ってなかったか?私はどうやら、
『エリザベート・バートリー』の生まれ変わりらしいぞ」
「エ・・・『エリザベート・バートリー』!?!?ま、マジすかぁ・・・」
「えぇと、戌亥君。私達は知らないのだが、教えてくれるかい?」
「『エリザベート・バートリー』はハンガリー王国の貴族です。吸血鬼伝説のモデルとなったとされていて、史上名高い連続殺人者。『血の伯爵夫人』と言う異名を轟かせた人物ですよ」
「れ、連続殺人者・・・・・・そうか・・・・・」
アンナと橙花の顔から血の気が引いていく。そんなこんなで歴史研究部での話し合いが終わり、体育祭午後の部が始まった。第一種目は応援合戦である。結果は無事に終わった。ちなみに、盛大な応援よりも旗持ちのアンナが1番目立っていたと言う。第二種目は騎馬戦。戌亥は騎手で参加していた。ちなみに、3人の騎馬は全員別のクラスの庶民仲間である。何故別のクラスなのかと言うと、周りのセレブ達から猛烈に拒否されたからである。世の中世知辛いと思っていたら仲間を見つけて結集したのだ。ちなみに、チーム「庶民ズ」は東軍にもいたらしい、やたらこの2チームが闘志を燃えたぎらせた結果、西軍と東軍の最後の生き残りは件の「庶民ズ」だったのだ。そして最終決戦が始まった。右手を伸ばし、左手で受け止め、頭を後ろに下げて、騎馬が前に出る。混戦に混戦を続けた結果、結局勝ったのは西軍だった。
「victoryィィィィィィィィィィ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎!」
大歓声によって迎えられるなか戌亥が勝利の雄叫びをあげた。そんなこんなで徒競走。は、特に面白いこともなく終わり、東軍が勝った。その結果、最後の選抜リレーを前に両軍の得点は同じとなった。ここでアナウンス・・・その結果両軍からブーイングが上がった。その内容とは、
「これより、最後の種目の『組対抗選抜リレー』を始めます!ちなみに、この種目の得点はなんと『1億点』です!!」
だった。今までの競技は何だったのか。参加生徒はおろか来賓から観客の保護者まで。全員が同時にツッコミを入れる勢いだったのだが、そんなことはなく、普通にリレーが始まった。伊達に選抜されているわけではない。ほとんど差がつかないまま遂にアンカーまで回ってきた。西軍側は自分達が勝つと思っていた。何故なら西軍のアンカーは陸上部の絶対的エースだったからだ。しかし、その期待はあっさりと覆された。それを覆したのは誰か?言うまでもなく生徒会長、姫夜麻橙花であった。10m前にいた西軍アンカーをあっという間に追い抜き、その後15mも引き離してぶっちぎり1位でゴールしたのだった。そして閉会式。見事に東軍側からの大歓声を聞き終えた後、やはり長い校長先生の挨拶が始まった。それも実に10分だった。そんなこんなで長い閉会式も終わり、一同帰路に着くのだった。