第十五話 嵐の終わり
響子によって20mばかり殴り飛ばされた蛇は再び鎌首をもたげ上げ、様子を見ていた。自身の口を封じていた口枷は外されていた。だがそれでも襲ってはこなかった。巨大な体を誇る自分を20mも殴り飛ばせる相手なのだ。下手に動くわけにはいかないだろう。その間に3人は事情を聞こうとしていた。
「えっと・・・朱子崎先生・・・?なんで先生がここに?て言うか、その様子は一体・・・」
「ん?あぁ、これか?いやーよくわかんねぇが気づいたらこの変な空間にいてな。誰も見当たらねぇんで探し回ってたら校庭から音が聞こえてさ。そんで来てみたらお前ら3人がいるだろ?そんで何かと戦ってるから見てたら蛇が誰か食おうとしてるだろ?まずいと思って何かしなくちゃと考えてたら急にこの姿になってさ。そんで、よくわからんが殴り込みに来たって感じだ」
どうやら事情も知らないまま飛んできたらしい。それでも頼もしい味方であることにはかわりないのだ。ふと思い出した様にアンナが尋ねた。
「朱子崎先生。特性・・・えっと、ご自分の能力はわかりますか?」
「能力・・・?あぁ、さっき頭に流れ込んできたアレか?なら分かるぞ。触れた相手を拘束して、斬り刻む・・・って言うのか?まぁ、そんな感じだ」
3人の顔から血の気が少し引いた。少なくともわかっている中で唯一のまともな攻撃手段である。頼もしい事この上ないのだがそれでも恐ろしい事に変わりはない。とにかく、これで大蛇を倒す算段がついたのだ。響子は既に大蛇に触れている為能力の発動条件は整っている。詳細を後で話すと約束し、ひとまず響子に倒してもらうことになった。蛇は毒液を吐き出したが、それを先読みしていたアンナの指示で誰にも当たらなかった。続いて再び大口を開け、飲み込もうと突っ込んでくる。その前には右手を突き出した響子の姿があった。右手の指を鳴らす。それと同時に蛇の口が閉ざされる、蛇は口枷を外そうと力を入れ、目を見開いた。その瞬間、蛇は全身を切り刻まれ、白目を剥いた。蛇は地に倒れ込み、尾から塵と化して消えていく。響子は呟く。己が能力、その特性の名を。
「棘源凶蘭華」
《サングイス・ラングスイル》
3人は光に包まれ元の姿、制服姿とジャージ姿に戻る空は青く戻り、校舎から賑やかな声が聞こえてきた。