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第十二話 持たざる者の抵抗


「ば、馬鹿な・・・何故私の手に奴の旗ではなくこんな石ころが・・・!」


そう、悪魔アンドロマリウスの手にはアンナの旗ではなく、ただのつまらない石が握られていたのだ。その石を握り潰しながら悔しそうに叫んだ《アンドロマリウス》の隣にいて、何があったか見ていた《ヴォラク》は答えた。


「確かに、君の【完全窃盗】《パーフェクトスティール》は発動していたし、狙いも正しかったよ。ただ・・・邪魔がはいったんだ。これは僕も予想外だったよ。まさかただのつまらない人間が邪魔してくるとは思わなかったよ」


そう言いどこかを指さす。その先には戌亥の姿があった。その手には大量の石が握られており、何かを投げた後のフォームだった。


「まさか・・・私の【完全窃盗】が発動する瞬間を狙って石を投げたのか!?旗ではなく石が盗まれる様に!?」


そう、《アンドロマリウス》の右手が光り、【完全窃盗】が発動したちょっと(本当に少し)前。戌亥は石を投げ、アンナの旗ではなく、石が盗まれるタイミングを見計らって投げだのだ。タイミング、位置の両方が完璧に揃っているいないと上手くいかなかった、どっちかと言うと賭けに近い博打をやってのけたのだ。そして見事賭けに勝ったのだ。結果、旗は盗られなかった。


「見事だ・・・!戌亥君!!だが、これではまずいからな。どれ」


《ムルムル》と打ち合っていた橙花は槍を大きく跳ね上げた瞬間に、手を動かして蛇達を動かした。それは戌亥を守るために必要なことだった。悪魔の妨害ができると知られた以上、戌亥も攻撃対象になりうるからだ。蛇達を戌亥の守りにつかせた橙花は再び打ち合いはじめる。その打ち合っている相手、《ムルムル》は焦っていた。相手は見るからに戦闘向きではない能力なのだ。つまり変身時における身体強化の恩恵が少ないはずなのだ。それなのに互角に打ち合えているからだ。これはまさにその通りであり、アンナの場合、ジャンヌ・ダルクは軍人であったが故にその身体強化の恩恵も高いが、楊貴妃は戦闘に関しては全くの無力と言っていい。よって、身体強化の恩恵が少ないのである。それなのに悪魔と互角に打ち合えているのは姫夜麻橙花という、元の身体能力が高いが故であろう。その背後で何が起きているか理解できていないアンナは攻撃を耐えつつ、隙を伺っていた。そしてその隙はすぐに訪れる。馬に乗る亡霊の攻撃を受ける。今度は流さず、横へ押し飛ばした。騎士は地に落ちる、馬は騎士へ駆け寄った。その隙を逃さなかった。馬と槍兵の間をすり抜け橙花の元へ駆ける。後ろからは亡霊達が追いかけて来るがしばらくは追いつかれないであろう距離があった。旗を地面に突き立て、棒高跳びの様に飛び上がる。その隙を《アンドロマリウス》は逃さなかった。再び右手を翳し、旗を盗もうとした。今度は妨害をされない様に注意を払った。【完全窃盗】発動の瞬間まで手のひらを向けなかったのだ。だがそれでも叶わなかった。再び戌亥の妨害が入り、その手の中には蛇がいたからだ。発動する3秒前。戌亥はかなり大きい石を投げた。それも悪魔の方へ向けてである。悪魔も超常の生物とは言え、生物である。飛んでくる物を避けるか受け止めようとする。そしてこの悪魔は後者だった。飛んで来た石を受け止めようとした。そしてその時【完全窃盗】は発動された。それは戌亥の足元にいた蛇を盗んだのだ。そして石は悪魔に当たる事はなく、そのまま地面に落ちた。


「なん・・・おのれ・・・たかが人間風情が、伯爵たるこの私に2度も恥をかけさせてくれましたねぇ・・・もはや許せませんよ!」

「馬鹿!そんな事言ってる前にアイツを・・・!」


怒りに我を忘れそうな《アンドロマリウス》を叱咤する《ヴォラク》が《ムルムル》へ視線を向けた時にはもう遅かった。その視線の先には槍を構え、突進の構えでこちらへ駆けてくる《ムルムル》の姿があった。見ると先程までと違い、兜がなくなり、目が露わになっている。その目は虚で、空を見ており、焦点があっていない。アンナの旗が兜を叩き割り、その目が露わになった瞬間、橙花が魅了したのだ。魅了によって洗脳された《ムルムル》は正気を失い、ただ橙花の意のままに動く傀儡となる。そして今、その人形は仲間だった2体の悪魔に攻撃を仕掛けていた。

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