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9話 VOLTS BAR:I am in the JUNKTION

よろしくお願いします。

Twitter:@Arinkoln0719にあらすじ動画のリンクを投稿しています。

合わせてご覧ください

 オレたちはTAKE-THR3E(テイクスリー)のエコロケーションのお陰で安全に街に戻ることができた。ここはD地区の中心。エデンで1番の賑わいを誇る繁華街。

「ねえ、あんたたちにあたしから言っておかなければならないことが山ほどあるわ。そのために落ち着いて話せる場所を探さない?」

「でもオレ、金持ってねえし……」

 オレがそう言うとTAKE-THR3Eが不敵に笑う。

「大丈夫。私が奢ってあげるから」

 オレたちはTAKE-THR3Eについていくことにした。Volts Bar(ヴォルツバー)のネオンサイン。変圧器がズラリと並ぶ。中は薄暗い。レンガの壁。コンクリート打ちっぱなしの床に配線がいっぱい走っている。雰囲気はガレージ風だ。


「おぉ、ねえちゃん久しぶりじゃねえか」

 カウンターから顔を出したのは頭にコンセントの穴が並んでいる男。

「あら、マスター元気のしてた?」

TAKE-THR3Eはフランクに話しかける。

「そのガキどもは?」

「あたしの新しい仲間よ」

「ふーん、まぁいいや。みんな好きなとこに座りな」

TAKE-THR3Eは奥のテーブルに座った。オレたちもそれに続くように座る。


「マスターごめん聞かれたくない話だから店を閉めて。Real-eyes(リアライズ)くんには電気。他の子たちには適当な飲み物見繕ってくれる?」

「あいよ」

どうやらTAKE-THR3Eはマスターと顔見知りらしい。マスターは頷くとレコードプレーヤーの針を落とす。流れ出したジャズ。擦り切れたレコードがプツプツ音を立てている。暗いガレージライトとの組み合わせ。マジオシャンティよな。


「さて、今からみんなに大事な話をするわ。あなたたち、どうして女の子のメンバーがいないの?」

「どうしてって言われてもなぁ……」

「まぁ、なりゆきで結成されたチームだからね」

「これじゃあ誰がミトコンドリア・イヴが誰だか丸わかりじゃない」

 TAKE-THR3Eがそう言うと、オレたちは顔を見合わせる。

「TAKE-THR3Eさんは知ってるんですか? その……」

「実はあたしはね、D地区を昔勢力下に置いていたABCDのメンバーだったの。結局、他のチームに負けちゃったけどね」


 D地区とE地区にはレールギャングがいない……いや、いなかった。E地区は今までトラムや線路が見つからなかったと言う理由で放置されたのだが、D地区は違う。レールギャングABCDは突如姿を消したと言われている。


「あたしたちは負けて、ミトコンドリア・イヴの子は相手のチームにカルテルかメビウスの科学に売られたんだ」

「それは、辛い話だな。仲良かったんだろ? ミトコンドリア・イヴの子と」

「ええ、そう。あの子はとても優しくていい子だったわ」

 TAKE-THR3Eはそう言うと、マスターからグラスを受け取った。

「Bちゃん……どこにいっちゃたの?」

 どうやら友達のことを思い出して酒が飲みたくなったようだ。TAKE-THR3Eがウィスキーを傾ける。

——カタリっ。

 飲み終えたウィスキーの音。

「マスター、2杯目」

 TAKE-THR3Eの声。マスターは無言でグラスにウィスキーを注ぐ。

「あたしが仲間にして欲しいって言った本当の理由はね。Bを取り戻したいからなの。あたしはそのためならなんでもやるつもりよ」

 TAKE-THR3Eはパイプを加えながらそう語る。

 それで、さっきのセリフってわけか。オレもチェリーを守りたいから助かる。TAKE-THR3E。教えてくれてサンキュな」

「いいのよ、仲間だもの」


 オレも真似してウィスキーに口をつけてみた。やべぇ、スパークリングウォーターじゃないのか? 大丈夫か?

「ふふっ、リンゴくんはまだ子どもね」

 TAKE-THR3Eから輪っかの形の煙。急に子どもに戻ったような……変な気分だぜ。

「モーンさん、他に必要なことってあるんですか?」

 チェリーはどうやらTAKE-THR3Eを気に入ったらしい。

「そうね、そろそろチーム名を決めたいわね」

「名前ですか……」

「いいじゃん、名前。かっこいいのつけよ」

 さっきまで美味しそうに電気に夢中になっていたReal-eyes身体を変圧器から起こした。

「確か、チーム名ってリーダーとかメンバーの能力を元につけるんだよね。三月兎同盟もリーダーのアリスが人形使いでメルヘンな能力持ってるからだし」

 チルアウトがそう言うと、TAKE-THR3Eは頷いた。


「でも、オイラ。チェリーちゃんの能力知らないじゃん。トラムの声が聞こえるくらい?」

「それはミトコンドリア・イヴとしての能力でしょ? 元々の個人の能力よ」

「前にちょっとだけチェリーにレッドエヴォルブ飲ませたことあったな……。でもあの能力はよく分からん」

「じゃあ、それを教えてくれる? チェリーちゃん」

 チェリーは恥ずかしそうにモジモジしていたが、やがて決心したように語り始めた。


「私の能力は白い翼が生えるんです。ミュータントじゃないのにおかしいですよね」

「それはきっと動物とは関係ない翼の能力だと思うわ。例えば霊的な存在とか」

「霊的な存在ですか……」

「まぁ、霊的な存在と言えば妖精とか天使とか悪魔だよね。話を聞いてる限り天使だね」

「てんし……」

「旧時代の宗教に登場した存在だよ。神の使いで神の言葉を人々に伝える役割を持っていたらしいよ」

 チルアウトがそう説明すると、チェリーが何かを思いついたように口を開いた。


「あの……。それだけじゃないんです。私……」

 そう言ってから顔を真っ赤にして俯く。

「なあ、どうしたんだよ。前聞いた時もこの調子でさ」

 TAKE-THR3Eが何か知ってるようにこっちを見てくる。

「ねえ、チェリーちゃん。同性のあたしになら話せる?」

 TAKE-THR3Eがそう問いかけると、チェリーはこくりとうなずいた。

 チェリーはTAKE-THR3Eに耳元で何かをささやいた。TAKE-THR3Eは目を丸くしたが、すぐに口元に笑みを浮かべた。

「なるほど、それはちょっと男の子にいうのは恥ずかしいかもしれないわね。でも、あなたの能力はとても素敵だと思うわ」

「ありがとう……」

 チェリーは嬉しそうにTAKE-THR3Eに抱きついた。オレたちは二人のやりとりを見ていたが、何がどうなっているのか分からなかった。


「おい、TAKE-THR3E。チェリーの能力って何だよ?」

「あら、それは秘密よ。チェリーちゃんが言いたくなったら言ってくれるでしょう」

「ふざけんなよ。オレたちは兄妹だろ? 仲間同士で秘密なんてないぜ」

「そう言わないで。チェリーちゃんは恥ずかしがり屋さんなのよ。彼女のペースに合わせてあげなさい」

 TAKE-THR3Eはそう言ってチェリーを守るように抱きしめた。


「ちぇっ、わかったよ」

 オレはチェリーが自分から言ってくれるのを待つことにした。

「まぁ、僕もなんとなく察してるけど敢えて言うつもりもないよ。能力の恥ずかしいような部分の名前をつけてもなんかイヤだしね」

 チルアウトは不器用に笑顔を見せた。


「んじゃ、単純に見た目からとってエンジェルウィングスにするか」

「え、ダサいじゃん。マジないわ。リンゴ、センスなさすぎかよ」

「うるせぇ、オメェに聞いてねぇよ。チェリーはどう思う?」

「うーん。正直言ってお兄ちゃんネーミングセンスないよね」

「ぐっ、チェリーにまで言われた……」


「まぁ、安直だと誰がミトコンドリア・イヴかバレるからね。こういうのはどうかな? サンクチュアリーって聖なる場所って意味なんだけど」

「サンクチュアリーか……。うん、悪くない」

「私もいいと思うわ」

「やったぁ! じゃあ決まりだね」

 Real-eyesが「ウェーイ!」

 ハイタッチ。

「じゃあ、今から俺たちはサンクチュアリーだな」

 オレがそう宣言すると、みんな拍手してくれた。なんだか嬉しかった。

 みんなが仲間で良かったと心の底から思った。


 TAKE-THR3Eは一人一人に酒を注いだグラスを渡してくる。

「サンクチュアリーの結成を祝して乾杯しましょうか」

「ちょい待ち!チェリーは水な。他のヤツらは知らん」

 オレはそう言ってチェリーのグラスを取り上げると、代わりに水を注いだ。

「えー、いいじゃん」

「ダメダメ。チェリーは未成年なんだ。保護者権限でアルコールは飲ません」

「あ〜あ、ケチんぼだなぁ」

 Real-eyesが文句を言ってくる。だが、無視した。


「私はお酒なんて飲みたいって思わないから大丈夫だよ。それにReal-eyes君もチル君もお兄ちゃんだって未成年でしょ。結局自分の飲みたいものを飲めばいいんじゃないかな」

「オイラはスパークリングウォーターで。ガチ電気のヤツね」

「ったく、そう言う注文してくれるとありがてぇよ。うちはボルツバーなんだ。ここには電気以外には付き添いの多種族用の水かウィスキーしかねえ」

 マスターはそう言いながらもグラスを用意した。


「それじゃ、サンクチュアリーの結成を祝して乾杯!」

 オレがそう言うと、みんなグラスを合わせた。みんなのグラスの合わさる音が心地よく響く。このチームでこれからやっていくんだという期待感が高まる。

オレたちは一斉にグラスを口に運んだ。

「マスター、このスパークリングウォーターって直流? 電流が上品でめっちゃ美味しいじゃん! マジであり寄りのありだわ」

Real-eyesが嬉しそうに声を上げる。こうして朝からのパーティは続いていったのだった。


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をしたうえで、本作を読み進めていただけると幸いです。

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