8話 Gang Orca: She is a hero……
よろしくお願いします。
Twitter:@Arinkoln0719にあらすじ動画のリンクを投稿しています。
合わせてご覧ください
「ハァ、ハァ、もう無理。動けねぇ」
Real-eyesは息を荒らげながらそう叫ぶ。オレもチルアウトもReal-eyesを救いあぐねていた。
もう、どうしょうもねえのか? 彼は汗だくで肩を上下している。リンゴが電磁砲でチーフを撃ったReal-eyesがズタズタにされるのを座して見てるのなんてやだぜ。クソみたいな人生でも仲間は裏切らねえって決めてたんだけどな。
「ねえ、あんたたち。助けが必要?」
と、声。黒髪の女。野生的で知的な顔。ぴっちりとした黒にライダースーツ。革製のグローブとブーツ。彼女は咥えていたパイプから泡を吐き出すとワーウルフの視界を遮った。
「だ、誰だ? オマエ」
オレは咄嗟にそう問いかける。女は不敵に微笑みながらこう言った。
「あら、人に名乗らせる前に自分から名乗ったらどうなの? 坊や」
「わ、悪ぃな。オレはリンゴって言うんだ。あんたは?」
オレがそう答えると女は少し驚いたような表情を見せたが、すぐに笑みを浮かべた。
「ふーん、リンゴくんっていうのね。あたしはTAKE-THR3E; Morn’よ。この街の外で良く危ない遊びをしているの」
「つまり、あんたもエデンの住人ってことか?」
危ない遊びをしてるっていうのは、この世界ではエデンの住人という意味を持っている。いつからかそんなスラングができてしまったらしい。都市外活動をしてると言うことはTAKE-THR3Eはジャンクハンターのようだ。
エグザイラーにも集団ごとに決まった言い回しがあるらしいが、オレには理解できない。
「ええ、そう。よろしくね」
「まぁ、よろしく……あんたの名前なんて呼びゃいいんだ」
「テイクスリーでもモーンでもいいわ」
なんだか調子が狂う女だ。とにかく今は猫の手も借りたいくらいだから丁度いい。
「助けて欲しい」
オレはそう頼んでみるが、TAKE-THR3Eはニヒルに笑うだけだった。
「あたしはね、一方的な関係って嫌いなの。だから助けて欲しいなら取引をしましょう」
そう言ってTAKE-THR3Eはオレにタバコを差し出した。オレはそれを受け取ると、タバコを咥えたがすぐにむせてしまった。
「どんな?」
TAKE-THR3Eは笑みを浮かべながら答える。
「あたしをあんたたちの仲間になさい。その条件が飲めるんだったら、助けてあげる」
「わかった。その条件飲むぜ」
オレがそう言うとTAKE-THR3Eの口紅を塗られた口角がニヤッと上がった。
「いい子ね」
TAKE-THR3Eはバラストを踏みしめるとReal-eyesを抱えて大きくジャンプした。
「ブリーチングって言う能力よ。良かったら覚えなさい」
そう言うと彼女はトラムの上に降り立つ。
「めっちゃ助かったぜ。あんた身体能力すげえのな」
「ありがとう、リンゴくん」
TAKE-THR3Eはそう言うと、オレたちに微笑みかけた。
「早速だけどあたしの戦い方を教えるわ。さっきの泡がホイッピング。ジャンプがブリーチング。それからエコロケーションは超音波を出す力よ」
TAKE-THR3Eはパイプを加え直すと泡をたくさん放出した。更にエコロケーションで振動を加えることで相手の動きを封じていく。
「どうかしら、私の能力は結構便利なのよ。こうやって体の内部にダメージを与えることもできるの」
すると、チーフはその場で蹲って動かなくなった。
「なるほどな。すげえ能力だな」
「私は誇り高きオルカのミュータントなの。この力で今まで仲間を守ってきたわ」
「モーンさん。オルカって確かシャチのことですよね」
チェリーがそう問いかける。
「そうよ。シャチの遺伝子を受け継いでいるのよ」
「まぁ、オルカのミュータントは最強だよね。IQ高いし能力も多彩だし」
チルアウトがそう言うとTAKE-THR3Eはフッと笑った。
「あら、ありがと」
「とりあえず、これであのクソオオカミどもは動けねえだろ。そろそろ夜も明けるし、大丈夫じゃねえか?」
オレがそう言うと、TAKE-THR3Eはこう答えた。
「いえ、まだよ。あのワーウルフは死んでいないわ。彼が人間に戻っても油断は禁物よ」
「なんでだ?」
「あなたは、仲間を殺されて残念だったわねって引き下がれるの?」
「そりゃあ、許せるわけねえし……」
「まぁ、彼らも同じってことだよね。TAKE-THR3Eさん」
チルアウトがそう言うとTAKE-THR3Eは頷いた。
「ねえ、見て! 花火が上がってる」
チェリーがそう叫ぶんだ。オレとチルアウトは夜空を見上げる。そこには赤や青、オレンジなどの美しい花火が打ち上げられていた。
「この花火、トラフィックフライの愛のメッセージなんだよね。ロマンチック」
チェリーは頬をピンクに染めながらうっとりと眺めていた。
「てかさぁ、こう言うの見てるとめっちゃ滑りたくなるじゃん」
「命の危機の後にそれかよ」
オレがReal-eyesに突っ込むと、TAKE-THR3Eがニヤッと笑った。
「あら、花火にインスピレーションを感じて滑ろうってこと? いいアイデアね」
「おっ、モーン姐さんわかってんじゃん」
「じゃあ、私をエスコートなさい男の子」
そう言うとTAKE-THR3EがReal-eyesのホバーボードに飛び乗るとトレインベースの空を走り始めた。
もしよろしければ、
・ブックマークに追加
・広告下にある「☆☆☆☆☆」から評価
三つ数えろ
[verse]
オイルライターが赤く燃える頃
Sha-ba-da-ba あたしは一人きり
オルカのとぶ背徳の街
誰もが欲に駆られる退廃の街
メッキに彩られて廻るroulette
ねえ、どこに行ってしまったの?
誰にも知られず傾けたバーボン
心の奥にヤイバを隠して
[chorus]
見えない夜を過ごして
失せ物に囚われて
こびりついた復讐の妄執
黒いライダースーツ
歩き始めた夜の路地裏
パイプの煙くゆらせて
心のサイレンが静かに唸る
黒い髪をなびかせて
[chorus2]
Bが止まらない
ボルツバーの喧騒
流れ始めたジャズ
あたしはまた
誰かを試してる
[verse]
日が沈み情報が錯綜する頃
La-ba-du-wa裏ぶれた裏通り
オルカのように泳ぐ情報
誰もが葛藤に囚われる監獄の街
熱気に隠された誘惑
君はいつもまっすぐね?
心の揺らぎに快楽を得る
心の奥のヤイバを欠いて
[chorus]
消えない傷に目を瞑る
失せ物に命を賭けて
こびりついた後悔の妄執
黒いライダースーツ
走り出した夜の路地裏
パイプの煙を吐き出して
心のサイレンが薄れかけた
黒い髪をなびかせて
[chorus2]
Rが鳴り止まない
ボルツバーの喧騒
擦り切れた心
あたしはまた
誰かを試してる