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4話 CHILL OUT the REBEL DOCTOR

よろしくお願いします

「じゃあ、早速お医者さんに診てもらおうぜ」

「うん。お兄ちゃんと一緒なら安心だよ」

「ああ、最強のお兄ちゃんだぜ? 任せとけ!」

 オレはチェリーの手を引いて家を出る。E地区とD地区の間、そのD地区側にクリニックはある。無免許医はこの世界では極一般的な存在。旧時代には医者になる為に免許が必要だったとかマジ不便じゃね。そんなわけで無免許医に会いに行く。


 クリニックは平屋のレンガの建物。E地区が元雑居ビル群なのに対してこっちは元倉庫街らしいだってよ。白いペイントに塗りつぶされ、そこに赤い文字で「CLINIC」と書かれている。


「なあ、チェリー。ミトコンドリア・イヴになると体調に影響があるかもしれねーからちゃんと言え。我慢すんなよ」

「うん」

 オレはチェリーの頭を撫でながらクリニックのドアを開ける。薬品の匂い。消毒液か……鼻につく。古いカウチソファーの待合室には黄ばんだポスターが貼られている。

「予防接種を受けましょう」とかなんとか。アポカリプス以前の遺産。んなん誰も気に留めねえのにな。

 しばらくすると、奥から物音がして誰かが出て来たので声をかける。


「ちょっと、妹がヤベェことになってんだよな。診てくれると助かるんだわ」


「何しに来たの? お師匠様ならいないけど」

 答えたのは15〜6歳ぐらいの少年。反応は淡白。黒髪に水色のメッシュ、ツーブロックの髪。首にはヘッドフォン、左耳にはピアス。


「んだと? こるぁ」

 オレは少年の胸ぐらを掴んで持ち上げる。少年は抵抗しない。冷めた目でオレを見つめる。

「あの人、基本ここにはいないんだ。弟子である僕もここで放置だし」

 どうやら、飛んだヤブ医者の扉を叩いたっぽいな。ただでさえイラついてんのにムカつく事態になってんじゃねえよ。

「なあ、じゃあ妹は診てもらえねえってのかよ?」


 少年のめんどくさそうな目。

「まあ、僕のできる範囲ならいいよ。お代はいらない。それに僕はまだ医者じゃないし」

「お兄ちゃん。この人にとりあえず相談してみようよ」

「ちっ、分かったよ。ほれ」

 オレは少年を放す。オレなんか思ったよりもイライラしてんなぁ。相当テンパってんのかもな。ちょっと、深呼吸して落ち着こうぜ。


「あー、なんかわりぃ。オレ余裕ねぇみたいだわ」

「ここに来る人はみんなそうだよ」

 彼はそう言って白衣の襟を正す。この病院には人がほとんど来ないらしい。若造一人が実質運営している病院なんか信頼できるかと言う話だろう。

 オレもそう思うぜ。けど、レールギャングやカルテル、メビウスの科学なんかの息のかかってる診療所に連れていけるわけねえからな。

 病気を治しに行って蒸発とかマジで洒落にならんからな。


「僕はチルアウト・ド・ラ・ゴン。一応ドクターサムワンってヤブ医者の弟子やってる」

「そうか、オレはリンゴ。リンゴ・ロックスター。で、妹の名前はチェリー・ロックスター」


「で、なんでここに来たの?」

「ああ、実はな……」

 チェリーの背中の紋章について話した。チルアウトは難しい顔を浮かべていた。

「えっ……」

 キョロキョロ。辺りを見回すチルアウト。誰もいないことを確認し小声で。

「ミトコンドリア・イヴだね」

「ああ」

「声が大きい。ミトコンドリア・イヴのの人を企業や研究者が狙ってるんだから」

「マジかよ」

「本当にここに人体実験フリークのお師匠様がいなくてよかったよ。いるとここも人が蒸発する病院になるからね」


 チルアウトは白衣を脱いで放り投げる。

「ねえ、君たちについて行っていいかな?」

 チルアウトの顔は相変わらず彼は黒い皮の手術カバンに散らかしていた服やら個人的なものを放り込み始めた。彼の顔は何を考えているのか分からなかった。


「別に構わねえけど、妹になんかあったらタダじゃおかねえぞ」

 オレはチルアウトを睨みつける。

「分かってる。お師匠様にここ開けるって連絡するから待ってて。雰囲気いけると思うけど」


 電話をかけ始めるチルアウト。どうやら繋がったらしい。

「もしもし、ヤブ医者? しばらく診療所空けるから」

『チルアウトか。へいへい、了解。好きにしちゃってちょうだいな。オレは実験で忙しいんだ。気安くかけてくんなクソガキ』

「わかったよお師匠様。じゃあ、切るから」

 チルアウトは電話を切った。

「というわけで、お師匠様の許可は取ったから行こう」


もしよろしければ、


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をしたうえで、本作を読み進めていただけると幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします!


Transparent Frequencies(チルアウト・ド・ラ・ゴンキャラクターソング)

[Intro]

静寂の中 脈動する音

見えない世界 感じる鼓動


[Verse 1]

深い闇の中 浮かぶデータ

冷たい論理が 温かさを隠す

カメレオンの目 世界を観察

変幻自在の 僕のメロディ


[Chorus]

Transparent frequencies

響き渡る心の奥底

Deep house of ambience

見えない僕の真実の姿


[Verse 2]

白衣の下の 複雑な回路

感情のノイズを フィルタリング

冷静な判断 暖かい思い

矛盾の中で 探す調和


[Bridge]

時に見える 仲間の痛み

隠せない 僕の本当の想い

科学の海を 泳ぎながら

失わない 人間性


[Chorus]

Transparent frequencies

響き渡る心の奥底

Deep house of ambience

見えない僕の真実の姿


[Outro]

静寂の中 脈動する音

見えない世界で 感じる鼓動

Transparent frequencies

Deep house of ambience


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