33話 Y3K’s DREAM!
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砂埃を巻き上げながら、ハーレー・ヘンドリクソンとプロミネンス・チャージャーがジャンクヤードコンパウンドに滑り込んでくる。Y3Kが操るハーレーの後ろには、HOT-ROUTE69の派手なプロミネンス・チャージャーが続いていた。
エンジン音が静まると、Y3Kは軽々とバイクから降り立つ。彼女の長い髪が風に揺れる。
「やっと着いた……」
その声には少し疲れが混じっている。
HOT-ROUTE69も車から飛び出してくる。
「おいおいおい、Y3K! 今日もカッコいい走りだったぜ!」
「HOT-ROUTEこそ、相変わらず」
私は小さく頷いた。二人の後ろで、スマーティGPUが降りてくる。
「ふう、長旅だったな」スマーティGPUが伸びをしながら言う。
「でも、ホットライオットの前にみんなで集まれてよかったわ」Y3Kが付け加える。
HOT-ROUTE69が大きく手を叩く。
「そうだぜ! さあ、オレのトレーラーハウスに行こうぜ。ホットライオットの作戦会議だ!」
一行は、ジャンクの山を縫うように歩いていく。途中、Y3Kが口を開く。
「ねえ、みんな。私、少し相談があるの」
HOT-ROUTE69が振り返る。
「おう、珍しいな。お前が相談なんて」
「ホットライオットの後のことなんだけど……私、アトリエを建てたいの」
自分の意見を話すのが苦手なので少し躊躇いがちになってしまった。
「アトリエ?」
スマーティGPUが興味深そうに聞き返す。
「うん。私の3Dスキャン技術を活かせる場所。でも、それだけじゃなくて……」
その時、HOT-ROUTE69のトレーラーハウスが見えてきた。外観は錆びついているが、所々に派手なペイントが施されている。
「おい、続きは中に入って続きを聞こうじゃねえか」
私たちはトレーラーに入る。壁には様々な設計図。テーブルの上の車のミニチュアが置かれている。
なんだか見慣れた普段のトレーラーハウスなのに別の家みたい。
「さあ、座れよ」
HOT-ROUTE69が椅子を指す。
全員が席に着くと、
「で、そのアトリエってのは具体的にどんなもんなんだ?」
一つ深呼吸。
「私が思い描いているのは、単なる作業場じゃないの。この世界の記憶を保存し、新しい未来を創造する場所」
ああ、なんか私自分の言葉に熱がこもってるみたい。
「私の3Dスキャン技術を使って、この世界の姿を完全に再現する。そして、それを基に新しいデザイン、新しい世界を作り出す」
「へえ」
スマーティGPUが興味深そうに聞き入る。
「具体的にはどんなものを?」
「例えば……エデンの街並みの完全な3Dモデル。それを基に、未来の都市設計を行う。あるいは、失われた技術を再現し、新しい形で蘇らせる」
「はい、それはすごく面白そうです。しかし、そのようなな大規模なプロジェクトにはそれ相応の準備が必要になる場合があります」
「そう。だから、みんなの力が必要なの」
「オレたちの?」
メンバーの間で小さなざわめきが起こる。
「そう、メタルパンクの技術力と創造性。それがなければ、私の夢は実現できない」
HOT-ROUTE69は腕を組み、考え込む。
「確かに、面白そうだ。でもよ、リスクも大きいぜ?」
「分かってる。でも本当にやりたいんだ」
「そうだな……」
HOT-ROUTE69は深く頷く。その目には、Y3Kと同じ熱が宿っている。
「スマーティGPU、お前はどう思う?」
スマーティGPUは少し考えてから答える。
「技術的には可能だと思います。Y3Kの3Dスキャン能力は非常に高精度ですからね。問題は……」
「資源か?」
HOT-ROUTE69が言葉を継ぐ。
「大規模な建造物を作るには、相当な材料が必要になります」
「お前、どのくらいの規模を考えてるんだ?」
「理想は……小さな街一つ分くらい」
「おいおいおい、でかすぎねえか?」
HOT-ROUTE69が目を丸くする。
「大きすぎるかもしれないけど……。私の夢は、新しい未来の原型を作ること。そのためには、街全体のモデルが必要なの」
「でもよ」
HOT-ROUTE69が首を傾げる。
「そんな大規模なもの、どうやって守るんだ?」
一瞬言葉に詰まる。確かに、セキュリティの問題は彼女も懸念していた点だった。
「それは……」
その時、静かに座っていたY3Kが口を開く。
「私にアイデアがあるんだ」
全員の視線がY3に集中する。
「私の3Dスキャン技術を応用すれば、高度なセキュリティシステムを構築できる」
Y3Kは自信に満ちた表情で説明を続ける。
「例えば、アトリエ全体の3Dマップをリアルタイムで更新し、不審な動きを即座に検知する。さらに、私の複製能力を使えば、偽装された警備員を配置することも可能」
「ほう、いいじゃねえか!」
「しかし、そのような高度なシステムを構築するためには膨大な演算能力が必要になります」
「だからこそ、力を貸してほしい。スマーティならば、効率的なシステムが構築できるはず」
スマーティGPUは少し考え込む。
「はい、その可能性はあります。」
HOT-ROUTE69が大きく手を叩く。
「オモシレエ!」
彼は興奮した様子で立ち上がる。
「Y3K、お前の夢、オレは乗った!」
「本当?」
「こんな面白いプロジェクト、見逃せねえよ」
「私も協力します」
スマーティGPUが手を挙げる。
「HOT-ROUTE、スマーティ……ありがとう」
私の声は少し震えていた。
HOT-ROUTE69が大きな声で言う。
「よーし! じゃあ、さっそく計画を立てようぜ!」
彼は大きな紙を取り出し、テーブルに広げる。
「まずは場所だな。Y3K、どこに建てたいんだ?」
「できれば……ここから近い場所がいい」
「そうだな、オレたちがすぐに駆けつけられる距離ってことか」
「それに、この辺りの地形なら、私の3Dスキャンデータもたくさんあるから」
「なるほど。では、この辺りはどうでしょう?」
彼女が指さす場所は、ジャンクヤードコンパウンドのマーケットの外れだった。
「そこなら、この先は広大な砂漠だ」
HOT-ROUTE69が同意する。
「うん。そこなら……理想的」
「よし、決まったな!」
HOT-ROUTE69が声を上げる。
「街一つ分ってのは、さすがに無理があるかもしれねえ。でも……最初は小さく始めて、徐々にでかくしていけばいいだろ?」
「ありがとう、みんな」
「それじゃあ、まずは手始めに、基本的な設計図を作ろうぜ。スマーティGPU、お前の出番だ」
スマーティGPUは頷き、ポケットからデバイスを取り出す。
「了解です。Y3K、あなたの理想のレイアウトを教えてください」
私は興奮気味に自分のビジョンを説明した。楽しい! 二人は熱心に聞き入り、時折アイデアををくれる。
HOT-ROUTE69が突然立ち上がる。
「おっしゃ! この話の続きは、ホットライオットの後にしようぜ!」
メンバーたちは驚いて顔を上げる。
「そうか、ホットライオット……」Y3Kが呟く。
「ああ。お前の夢のアトリエのために、オレたちは勝たなきゃならねえんだ!」
全員が頷き、決意に満ちた表情を見せる。
「よーし!」 じゃあ、作戦会議を始めるぜ! ホットライオットで勝って、Y3Kの夢を実現しようじゃねえか!」
メンバーたちの歓声が上がる中、Y3Kは静かに微笑んだ。彼女の夢は、仲間たちの力を得て、少しずつ形になり始めていた。
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