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32話 It said “Am lovin' U"

よろしくお願いします。

Twitter:@Arinkoln0719にあらすじ動画のリンクを投稿しています。

合わせてご覧ください

 オレたちはマカロニスパークのガレージに帰ってきた。キャサリンが熱い抱擁でオレたちを迎えた。

「おかえりなさい。お風呂には入って男前になったみたいだけどH2アーミーも男前になってるわよ」

 キャサリンはウィンクを飛ばしてきた。みんなはそれに大笑いだ。


 確かにH2アーミーのボディーはサビが落とされて落ち着いた黒に染め上げられている。オレはその塗装が好きだった。

「おお、見違えたな。キャサリンがやったのか?」

「そうよ。油垢もピカピカにしたから綺麗に見えるでしょ?」

「ああ、一晩でここまで仕上げるなんて」

「ふっふーん、どうよ」


 キャサリンが胸を張って答えると、

「あのぉ、お嬢。悪いんだけど偉そうにしないでもらえませんかね? お嬢は事務方なんでほぼ書類仕事だったと思うんすけど」

 ヤカモトソンが頭をかきながら文句を言っていた。


「えー、ちょっとぐらいいいじゃない?私だって黒のペンキ缶運んだし〜」

「よくないっすよ、技師としての信用問題に関わるっす。あとお嬢、男前になってるっすよ?」

 キャサリンの鼻の下に丁度オイルが跳ねたのか黒くなっていた。


「えっ、うそっ!」

「ぎゃー、なにこれ!」

 キャサリンはH2アーミーのサイドミラーで確認すると顔をタオルで拭っている。オレはその様子を見て大声で笑った。


「でも、こんなにすぐに直してくれるなんてな。さすがだな!」

「だろう? セ・トボーイはオレの見込んだ男だぜ? これぐらいできて当然だぜ!」

 やって来たのはマカロニスパークだった。どうやらオレたちに気づいてガレージの2階から降りて来たらしい。


 彼はニカッと人懐っこい笑顔を作るとH2アーミーのボンネットに手を乗せる。

「そうなんすよね。自分も黒いペンキを運んだっす」

 彼がそう言うとオレたちはまた笑いころげてしまった。

「自分にかかれば500ミリリットルを一気に運べるっすよ」

 力コブをつくって見せる。


「コイツはお前さんたちのことをきっと待ってたぜ? なあ、お前さんがゲットしたってクリスマスプレゼント渡してやれよ!」

「クリスマスプレゼントって。V8エンジンのことじゃん」

 Real-eyesのツッコミにみんながどっと笑った。


「なあ、TAKE-THR3E。なんか変じゃないか?」

「変って何がよ」

 TAKE-THR3Eは肩をすくめて手のひらを上に向ける。


「こう会話が独特でコミカルって言うか……オレたち全員なんか変な雰囲気に呑まれてるみたいな……」

「アハハ、なんのことかしら〜」

 キャサリンは笑いながらとぼける。


「おいおいおい、さてはキャシー。レッドエヴォルヴを飲んだな? イタズラしやがって!」

 HOT-ROUTE69が笑いながら指摘して、みんなまた笑い転げた。


「キャシーガールの能力は古典芸能の一種であるシットコムの世界を再現するんだぜ。イカすだろ?」

マカロニスパークは人差し指を立てながらそういうとニヤリと笑った。


「シットコムって」

 みんなが笑っているのを見ながら、オレは困惑した。


「ねえ、シットコムって何?」

 RAPID-BOYが不思議そうに訪ねて来た。


「RAPID-BOYくんは知らないのね。同じ舞台や登場人物で毎回違う笑いの話を展開するテレビ番組のジャンルよ」

 キャシーは人差し指を立ててRAPID-BOYに教えてくれた。

「一種のコメディね」

TAKE-THR3Eは諭すような口調でそう言う。

「なるほど! だからみんなの会話が変なんだね! 僕も面白く喋れるかな?」

 そう言いながらRAPID-BOYは考えるような仕草で顎に手を当てる。

「きっと大丈夫じゃん。RAPID-BOYは顔芸が得意だし」


◝(๑꒪່౪̮꒪່๑)◜


「ていうか、いつまで続けんだ? この件。H2アーミーの話に戻ろうぜ」

「そうっすね。H2アーミーのボディのレストアは終わったんで確認して欲しかったんすよ。コイツはみなさんのことをきっと待ってたと思うんすよね」

「よし、じゃあ話しかけてみるか。元気だったか?」

 オレがH2アーミーを撫でると、H2アーミーのヘッドライトが輝き始めた。


 H2アーミーは嬉しそうだ。

「ちょっと待ってよ。なんか変な状況になってるからなるべく関わらないようにしてたけどH2アーミーが動き出すのはさすがにおかしいよね」


 このおかしな雰囲気に切り込んだのはチルアウトだった。

「おい、何がおかしいんだよ」

「H2アーミーは感情のない機械だよ。配役足り得ないんじゃないかな」


「はい、その指摘は正しいです。私はスマーティーGPUです。私はあなたの指摘に同意します。私はあなたの指摘に同意します。私はあなたの指摘に同意します。私はあなたの指摘に同意します。私はあなたの指摘に同意します。私はあなたの指摘に同意します。」

 スマーティーはそう言いながら何回も同じ表情を繰り返していた。


「ああ、もう。鬱陶しいよ。キャシーいい加減に能力止めてくれるかな?」

「なんか癖になっちゃってて。今度から意識して止めるようにするわね」


 キャシーがシットコムの能力を止めたことを確認した上で、オレは再びH2アーミーに向き直った。

 なぜこのタイミングで動き出したのかは分からない。でもこいつには必ず何かの理由があるはずだ。

 オレは冷静に気持ちを切り替えて、H2アーミーのエンジンルームを開ける。そこにはジャンクスライムが忍び込んでいた。ジャンクスライムはエンジンルームから飛び出すとチェリーに飛びついた。


『キュイキュイ』

「もしかして、あなたジャンクヤードで出会った子?」

「チェリー、こいつのこと知ってるのか?」

 オレは驚いた。このスライムは一体なんなんだ? そしてなぜ今になって動き出したんだ?


「お兄ちゃん、この子私がジャンクヤードで見つけたスライムだよ。私、この子にスプリングを食べさせてあげたの」

 チェリーがそう説明した瞬間、キャシーの顔つきが変わった。

「ジャンクヤードにいたスライムが懐くとは思えないんだけど」

「この亜種の生態を調べてみないと分からないけど、多分宿借りをする性質があるんじゃないかな」

「おいおいおい、マジかよ。オレは気づかなかったぜ。確かにコイツら形の整ったバッテリーやエンジンオイルのタンクの中によくひそんでるけどよぉ」

「それでよく人間と巣の奪い合いになるんだね。まあ、つまるところ狂暴と言うより欲しいものの取り合いをしてたってことだね」


 オレはジャンクスライムをチェリーから引き離そうとしたが、ジャンクスライムはしがみついて離れなかった。

「チェリー、大丈夫か? 噛まれたりしなかったか?」

「大丈夫だよ。この子は噛まないよ。ねえ、可愛いでしょ?」

 チェリーはジャンクスライムを抱きしめて満面の笑みを浮かべた。オレはその様子に呆れた。


「可愛いじゃなくて、危ないんだよ。ジャンクスライムは金属を溶かすんだぞ。H2アーミーの中に入れておくなんて、いつか大事故になるかもしれないよ」

「そんなことないよ。この子は私に懐いてるから、H2アーミーには手を出さないよ。ねえ、そうでしょ?」

 チェリーはジャンクスライムに問いかけると、ジャンクスライムは『キュイキュイ』と返事をしてくる。

 キャシーは驚いた表情でチェリーを見た。


「信じられない。人間の言葉を理解してるみたい。そのまま言葉を話したりして」

「そんなわけないだろ?スライムがどうやって喋るんだよ」

『ボク、話せるよ』


 突然、誰かの声が響き渡った。全員に聞こえたらしく全員が拍手している。

「ねえ……これ、またシットコム使ってる」

 Y3Kがそう指摘するとキャシーは

「てへっ、話の流れでは声が聞けるかもって思って」

と答える。まあ、このスライムと喋る方法があるなら是非とも聞いてみたいところだな。

オレは早速ジャンクスライムに話しかけた。


「なあ、お前の声は聞こえるけどオレらの言葉はわかるか?」

『キミ達の言ってることはわかるよ。けど、今のボクはRAPID-BOYのアテレコなんだ!』

 その様子にみんながどっと笑った。結局スライムが話し始めるシチュエーションが訪れることもなくキャシーのレッドエヴォルヴの効果が切れてしまった。


「でも、チェリー連れて帰れないぞ。都市の外のモンスターは持ち込み禁止だからな」

オレはチェリーの方を見る。チェリーも悲しげにこっちを見つめていた。

「じゃあ、ここでみんなで世話しよう。マカロニスパークさんお願い!」

「やれやれ、チェリーガールの頼みとあっちゃ断れねえぜ。いいぜ! キャシー、チェリーガールのいない間のコイツの面倒は頼んだぜ」


 マカロニスパークはそれだけ言うとそのまま眠り込んでしまった。

 オレたちはこうして無事ヤカモトソンさんにV8エンジンの組み込みをお願いするのであった。

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をしたうえで、本作を読み進めていただけると幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします!

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