29話 How to drive the car?
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オレたちがトレーラーハウスに戻ると、HOT-ROUTE69が待っていた。一台はプロミネンス・チャージャーBody-B。で、もう一台はオープンルーフのスポーツカーだった。
車体は黒、緑色のパズル柄があしらわれている。
「あなたはどうやら私の車に興味があるようですね。この車体はジグソーαと言います。私が生成した設計図を元に1から組み上げたオリジナルのスポーツカーです。HOT-ROUTEの趣味ですが私が使用しています。因みに私も満更でもないです」
スマーティーGPUがそう言うとHOT-ROUTE69は親指を立てる。
「じゃあ、Y3Kはヘンドリクソンで行くから……」
「おいおいおい! そりゃなしだぜ。お前は俺たちと一緒に来るんだ。せっかく大勢でワイワイやれるってのにバイクで一人ってのはどうかと思うぜ。どれぐらい変かって言うとオレンジチキンが道端を歩いているくらいストレンジだぜ」
「うざ……。ほっとけよ」
Y3Kは逃げようとするがHOT-ROUTE69は彼女の腕を掴んで離さなかった。
「HOT-ROUTEの意見は正しいです。Y3Kはみんなと一緒に過ごすべきです。それは彼女のためにもなりますし、私たちのためにもなります。私たちは仲間ですから、一緒に楽しむべきです」
「だったら……チェリーちゃんとがいい」
Y3Kはチェリーを指差した。
「えっ、私? お兄ちゃんY3Kちゃんと一緒に行っていい?」
「ああ、いいぜ。Y3K、チェリーを頼む。人見知りのお前だけで大丈夫か?」
「別にそんなの関係ないじゃん……。同い年だし」
「じゃあ、RAPID-BOY君もこっちね」
「えっ、僕も?」
∑(゜Д゜)
「どうしたんだ?RAPID-BOY」
「なんでもない……。えっと、リンゴくんと行きたかったなって……」
「オレと行っても楽しくないだろ。歳の近いチェリーやY3Kとの方がいいんじゃないか?」
「あぁ、うん……」
彼の声は曇っているみたいだった。なんだよ。そんなに一緒に来たかったのか?
「じゃあ帰りはオレと一緒な」
オレがそう言うとRAPID-BOYは嬉しそうに「うん!」と言ってチェリーたちの方にかけて行った。
「おいおいおい、オレは幼稚園じゃねえんだぜ。あと一席空いてんだ、もう一人コイツらの面倒見るヤツ居ねえのかよ」
「じゃあ、オイラが行くじゃん」
そう言ったのはReal-eyesだった。
「ああ、引率役頼んだぜ。特にHOT-ROUTEがチェリーに変なことしねえ様に監視してくれ」
「おいおいおい、しねえから。シスコンなんて止めちまえ」
Real-eyesが乗り込むとHOT-ROUTE車は発車した。
と言うわけでオレはスマーティー、TAKE-THR3E、チルアウトと同じ車になった。
「この車、実にユニークだね。カーボンファイバー製のボディだよね、これ。ふむふむ、車体の軽量化をすることで、コーナリングの自由度や操縦性が向上しているのか。なるほど」
チルアウトは興味深そうにジグソーαを観察している。
そして、TAKE-THR3Eがスマーティーに話しかけた。どうやらドライビングの練習をするみたいだな。トラムと大分運転方法が違うみたいだし。
「スマーティー、この車はどうやって運転するの? 私たちは素人だから教えてちょうだい」
「はい、運転方法に関する質問ですね。まず、ハンドルを握ってください」
スマーティーGPUは助手席のシートに寄り掛かりながら答えた。
「足元にペダルが三つ並んでいるみたいだけど」
「はい、その三つのペダルは左から順に、クラッチ、ブレーキ、アクセルです。クラッチはギアを変えるときに使います。ブレーキは減速や停止に使います。アクセルは加速に使います」
「こんな感じかしら……」
「しかし、TAKE-THR3E。ペダルは踏み込み過ぎると危険です」
スマーティーが言うと同時に車が急加速し、一気に道路の端に向かって走り出した。TAKE-THR3Eがペダルを踏み込んでいたためだった。
「TAKE-THR3E、ブレーキ踏んで!!」
TAKE-THR3Eがブレーキを踏んでハンドルを回す。リアタイヤがスライドしてハイウェイに沿って走り始めた。
「あっぶねぇなぁ。なんでハンドブレーキをいじったんだよ」
「ドリフトするにはこうしたらいいと思ったの。野生のオルカの感覚を使って運転するとこんな感じよ。こう言うのってレースに必要な技能よね」
「うん、サーキットで使う技だ。急ブレーキ時に発生する運動エネルギーをクイックなハンドリングと一緒に利用するテクニックをドリフトと言うんだよね。けど、僕にはできないよ」
「意外と簡単ね。感覚的には海を泳ぐのに似ている気がするもの」
TAKE-THR3Eの運転するジグソーαはハイウェイの直線を走り始めた。
どうやらTAKE-THR3Eは感覚派みたいだな。オレは初めて乗るのにあんな大胆なことしようと思わねえぞ?
「H2アーミーはSUVで車体が重いのでドリフトするのはもっと簡単かもしれません。この車輌は極端に軽く設計されているためとても不器用ですので運転には注意が必要です」
「へぇ、そうだったのか。軽い方が速いイメージがあるけどな」
「いいえ、実際にはそんなことはありません。車体が軽くなるとタイヤの摩擦係数が少なくなるので結果的に速度が出ない可能性があります」
「まあ、重すぎても軽すぎてもスピードが出ないってことだよね。確かにSUVは車高が高いからちょっと軽かったら重心の問題で速度を出しにくくなるかも。でも、サスペンションシステムやタイヤ性能なんかのトータルバランスが重要だよね」
チルアウトは説明を補足した。
「おい!それってレストアの時も立ち会ってサスペンションやタイヤ選びをした方がいいってことか?」
オレが訊ねるとチルアウトは肯定の意味でうなずいて答えた。
「まあ、部品のことがわかるのであればそれに越したことはないよね。分かればだけど」
ったく、分かればを強調すんなよ。と、その時だった。
「そう言えばあなたたちはウェルプレイドのルールを知っているのですか?」
「いや、知らねえなあ。もしかして色々複雑なルールがあるのか?」
「いいえ、そこまで複雑というわけではありません。5回他のレールギャングチームに勝利することで何かが起こるそうですが詳細は不明です。逆に2回負けてしまうとトラムが沈黙することが知られています」
「勝ったらご褒美があるのかよ!いいじゃねえか」
遠くの方から何かが近づいて来た。
「おい、なんだあれは?なんか近づいてきてるぞ」
スマーティーがカメラの望遠機能を使ってそちらを確認する。そして、映し出された姿に一瞬声を詰まらせる。
「なんだよあれ……。戦車か?でも、脚生えてねえか?」
そいつは戦車の形をした生物だった。4本の脚を持っており頭には砲口が付いている。
「おいおいおい、やばいぜスマーティー!タンクセラトップスが出やがった」
HOT-ROUTE69がプロミネンス・チャージャーを並べて来て言った。
「セラトップスってアイツは恐竜なのか? 全然そんな風に見えないぜ?」
「ほう、話には聞いていたけど実物はこんななんだね。どちらかと言うと戦車に近いサイボーグ生物だからね。まあ、見た目は戦車だけどきちんとケラトップス類の特徴を備えているみたいだよ。ほら」
チルアウトが指さす先にあるのはトリケラトップスの角と同じだけの数がある砲身だった。
「アイツはとにかくナワバリ意識が強えんだ。群れで行動するヤツらだから囲まれてタコられるかも知れねえ」
「ますます、興味深いね。草食動物だから縄張り意識よりも群れの意識の方が強いはずだけど……確かタンクセラトップスは鉱物食だった筈だね。もしかしたら希少な鉱物を守るためと……うーん、後は戦車に搭載されていた国防のためのAIの影響か」
最近のチルアウトは色んなものに興味を持っているみたいだ。実際に旅をして実物に触れることで彼の中で何かが変わって来たのかも知れない。それはいいことだと思う。オレもちゃんと変われてんのかな……。そんなことをぼんやり考えているとタンクセラトップはオレたちの乗る車に向かって砲撃を始めたのだ。
タイヤから火花が散る。
「ライフルのスコープで確認したけど一体しかいないみたいだよ!」
「RAPID-BOYでかしたぞ!やるじゃねえか」
「一体だけってことは逸れオスかも?逸れオスは気が立ってて凶暴らしいから気をつけた方がいいらしいじゃん!」
そうReal-eyesが言った瞬間、
「おいおいおい、奴っこさんコッチに気付きやがったぜ!」
HOT-ROUTE69の声を残してプロミネンス・チャージャーはオレたちの車から離れていく。
プロミネンス・チャージャーの低くてうねる様なエンジン音が遠ざかって行き、アスファルトを踏みつけるような激しい音と耳をつんざくような激しい銃声がこちらまで響いてきた。どうやらRAPID-BOYがライフルでタンクセラトップを狙撃したようだ。だが、撃たれた当のタンクセラップは微動だにせず今度はこちらに向かって走って来る。
「チル、なんかいいアイディアはあるか?このままじゃ防戦一方だぜ!」
タンクセラトップのスクラムアタックは素早くそして鋭く、避けるにも限界がある。このままじゃジリ貧だ。オレはそう判断し、チルアウトに尋ねた。だが、そんなオレを横目で見るだけで何も答えないヤツの表情はいつも通りで涼し気なものだ。
「とりあえず、TAKE-THR3Eさんのホイッピングで撹乱するくらいかなぁ。動きを止められると思うけど」
チルアウトはそんなことを言ってくる。
確かに、そうすればタンクセラトップの動きを封じることはできる筈だ。だが根本的な問題は解決していない。
「あら、それならホイッピングにエコロケーションを合わせて胴体の内部からダメージを与えればいいのよ」
TAKE-THR3Eは落ち着いた様子でそう言うとパイプを咥え直した。
「でっ、オレが電磁砲を撃ち込むって訳か……。よし、じゃあ向こうのメンバーと示し合わせて一気に攻め落とすぞ」
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