28話 Machaloni-Sparks Garage
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マカロニスパークのガレージに着いた時、オレたちは驚いた。そこには色々な車が並んでいる。その中にはオレたちも見たことのないような車もあった。マカロニスパークのガレージはジャンクヤードコンパウンドの中でも一番大きい。それに一番人気があるらしい。オレたちはHOT-ROUTE69についてガレージの中に入った。
「へえ、ちょっとしたミュージアムみたいだね。古い車がいっぱい並んでいる」
チルアウトは興味津々と言った様子で車の下を覗き込んでいる。チルアウトは人にはあんまり興味がないみたいだけど博物学とか医学とかは好きなんだよな。
「おいおいおい、マカロニスパークの爺さん!いるか!?」
HOT-ROUTE69は、ガレージの奥にいる老人に声をかけた。老人は白い髪とひげを生やしており、ウェスタンハットを被っていた。ウェスタンハットにはガラスのような羽が刺さっている。彼はオレたちに気づくと、笑顔で迎えてくれた。
「ハウディ!ホッティボーイじゃねえか? 久しぶりだな。背え伸びたんじゃねえか?」
「おいおいおい、よしてくれよ爺さん。これ以上背が伸びちまったらガレージの天井をぶち抜いちまうぜ」
「それで、今日は何の用だい? ボーイ」
「表のコイツのレストアを頼もうと思ってよ。このリンゴたちのH2アーミーなんだ。」
「H2アーミーってぇと、そこのボーイ共はさっき電話で聞いたI李の知り合いってことかい? だったら話は早いぜ。オレが見てやるから安心しろよな」
「ああ、よろしく頼む」
手を差し伸べるとマカロニスパークはどっこいしょ立ち上がる。オレの手を強く握りしめた。
「リンギィボーイ、見せてもらうぜ!」
H2アーミーに近づいていく。マカロニスパークはそう言うと注意深く車を観察したいた。そして車の下を覗き込んだ瞬間、
「ったたた。こりゃ参ったぜ!最近腰が悪くていけねえ!」
と言って彼は自分の腰をバンバン叩く。その様子があまりにも面白くてオレたちは思わず笑い出してしまった。マカロニスパークはオレたちの方を向くと、
「でもよ、なんでホッティボーイが直してやらねえんだ。お前さんも相当な腕じゃねえのかい?」
「おいおいおい、コイツらはオレ様のレース相手だぜ。コイツのクセとか分かってたらレースすんのに面白くねえじゃねえか?」
「面白くないではなく、正しくはフェアではないです」
スマーティーは間髪入れず突っ込む。
「もう、おじいちゃんは座っててよ。無理しちゃダメよ!」
ガレージの外から現れたのは金髪の女の子だった。
「なんでぇキャシーガール、もうチアの集まりから帰って来たってぇのかい?」
キャサリンはマカロニスパークの孫だそうだ。なるほど、言われてみればそっくりかもしれない。
「……よ」
Y3Kはキャサリンと顔見知りのようだ。
「チャオ! Y3Kちゃん元気してた? 私は元気いっぱいよ!」
「……別に……」
Y3Kは恥ずかしそうに目を逸らした。キャサリンの勢いに押され気味だが別に悪い気はしないみたいだった。
「ねえ、Y3Kちゃん。キャシーちゃんのその服すごいかわいいよね!」
「えっ……あ、うん。そうだね」
チェリーは興味津々でキャサリンの服装を褒める。すると彼女は嬉しそうにくるりと回ってみせた。
「うふふ、そうでしょう? これね、チアのユニフォームなのよ」
動きに合わせてスカートがふわりと浮き上がり、裏地の模様やプリントもしっかり見える。スポーティで可愛らしい雰囲気があってとても似合っていると思う。チェリーは憧れの眼差しでキャサリンの衣装に見惚れていた。
「素敵ね、そのユニフォーム。チアリーディングっていうダンスがあるのね」
TAKE-THR3Eはカラッとした声で言った。
「チェリーちゃんは、ああいうの着てみたいの?」
「うん。でも、私。運動音痴だから似合わないかも……」
チェリーは素直に褒め称えるが、オレは少し言葉につまってしまう。
キャサリンは実際はとてもかわいいし似合ってるんだけど、年頃の男の子としてはその……な。
まあ、好きとかそんなんじゃないんだけどな。かわいいし。
「お兄ちゃんって、ああいう子がタイプなの?」
チェリーが小声で囁いて来たのでオレは我に帰った。
他のヤツの反応はどうだろう。
チルアウトは……。彼は興味なさそうだ。
RAPID-BOYはオレがそっちに目をやるとなぜか俯きがちになっている。
Real-eyesの方を確認してみると、彼は完全にキャサリンに釘付けだった。
「おい、Real-eyes。大丈夫か?」
オレが小声で問いかけると彼はハッと我に返ってコホンと咳をする。
「ああ、大丈夫じゃん。少し気が抜けただけだから」
Real-eyesは平静を装ってそう答えてくれたが、まだ動揺しているように見えた。そんな彼の様子をキャサリンは見逃さなかったようだ。彼が照れている様子に気づいているようだ。
「キャシーガール、その格好でガレージに降りてくんじゃねえ! 変な虫がついたらどうするんで」
「爺ちゃんが無茶しないように見張りに来たんですぅ!」
キャサリンはあっかんべぇをした。
それを聞いてHOT-ROUTE69は笑い出す。
「おいおいおい、マジかよ? キャシーに睨まれてたら怖くて落ち落ち自動車の修理なんてできねえなあ。だろ?」
今度はキャサリンが慌てた様子で答える。
「ちょっと、何バカなこと言ってんのよ! もう知らないからね!」
HOT-ROUTE69にからかわれて膨れ面のキャサリンをマカロニスパークは、
「キャシーガール。怒ったら折角の可愛い顔が台無しだぜ」
と言って優しく頭を撫でた。キャシーはこういうノリもが好きなのかよ。すると彼女も笑顔になって、
「もう、爺ちゃんたら!」
と言いつつ照れている様子だ。
「とにかく整備の仕事はダメだからね! 変わりに私がやるから!」
マカロニスパークをガレージ脇のベンチに座らせると「着替えて来るね」と言って奥に引っ込んで行ってしまった。
マカロニスパークはそんな孫娘を眺めながら感慨深げに言う。
「やれやれ、こんな嬉しいことはねえだろ。あんな小さかったキャシーガールがあんな立派になっちまってよ!」
そう言うとマカロニスパークは腕を組んで何度も頷いた。
「60年前のことを話せるヤツももうだいぶ減っちまったんじゃねえか?」
「おいおいおい、爺さん勘弁してくれよ。何回も聞かされたぜ! どれぐらい聞かされたかと言うとドーナッツに穴ができるくれえ聞かされたっつの! なあ、スマーティー」
「はい、私が聞いた数を正確にカウントしたところ876回聞かされています。他のお年寄りを合わせると10000回になります」
「と言うわけだ! 悪いが爺さん。オレたちは忙しいんで昔話にゃ付き合えないんだよ。いくぜ、Y3K!」
「おじいちゃん、バイバイ……」
メタルパンクのメンバーは、預け終わったらトレーラーハウスに来いとだけ言って出て行ったので、オレたちはしばらくマカロニスパークと話をした。
ちなみにマカロニスパークの話は10代の頃にアポカリプスを体験した時の話だった。彼はラジオでカルテルが使っていたナノマシーンが暴走して遺伝子組み換え実験の装置を乗っ取ったと言う情報を聞いて、急いでエデンまで逃げて来たらしい。新しく生まれたサイボーグ生物やミュータント生物は瞬く間に生息地の版図を広げ人間には住みにくい世界になってしまったと言う。その中でも比較的住みやすいエデンや周辺地域に人々が集まって暮らすようになり現在の世界になったと言う。
「この地域は他の大陸の地域とウィンディーマウンテンズで隔てられてんだ。オレはそこまで急激には変わらねえって信じて生きることにしてんだぜ」
「実に興味深いですね、お爺さん。僕にもっと聞かせてください」
普段淡白なチルアウトが珍しく身を乗り出して話を聞いている。
「何、おじいちゃんまた昔の話?」
キャサリンは着替えて戻ってきたが、チアリーダーのユニフォームから作業着に変わっていた。彼女の作業着はピンクで胸には赤い星型のファスナーがついていた。
「そうだぜ、昔話はジジイの楽しみの一つだ!」
と彼は楽しそうに言うと孫娘の顔を見つめて言った。
「オレたちジジイはもうすぐ死ぬ!けど、オレたちはお前たちにレガシーを残す努力をして来たんだぜ? お前の好きなチアも平和だった頃のダンスなんだ。大切にしろよ……」
それだけ言うと彼は眠たそうに目を閉じ、あくびをして椅子に深く座り込んだ。すぐに静かな寝息が聞こえるようになり、椅子の背に体をあずけて寝てしまっていた。
「じゃあ、H2アーミーは預かるね。車のレストアは私とセ・トさんがやるから」
「あっ、どもっす。清十郎・藤次郎・家本孫って言います」
「ヤカモトソンさんか……よろしくな」
彼は東方系の放浪民、輪族出身の男だった。彼はヴィジュアル系のバンドTシャツとジージャンを着ていて、ブルーのデニムを履いていた。髪はリーゼントで茶色に染まっていた。背は小柄で猫背な男だったが、意外と筋肉質に見えるのはその体が鍛え上げられているからだろうか?
どうやら、この男がマカロニスパークスガレージのチーフマネージャーらしい。跡取りのキャサリンと並ぶナンバー2というヤツだ。
「じゃあ、このジャンクはウチで預かるわね」
「勘弁してくださいっす、お嬢。勝手に受けないで自分にまず相談して欲しいっす」
「あら、爺ちゃんが受ける気満々だったけど?」
どうやら、苦労症みたいだな。
「親方がオッケーってんなら大丈夫っすね」
「部品とか足りなかったら声かけてくれ。HOT-ROUTEとホットスポットに行く約束してるから向こうで取れる部品が必要になったらオレたちが取って来るぜ。一応レールギャングの収入源はジャンクハンターと被るところが多いからよ」
「了解っス」
「じゃあ、一旦預かって見積もりが出たら電話するわね」
オレたちサンクチュアリはH2アーミーを二人に預け、HOT-ROUTE69の元に向かったのだった。
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