27話 JUNK YARD COMPOUND
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油井に着くとオレたちはトラムを降りて、そこから例のトレーラーハウスに向かう。油井の煙突からは火が上がっている。正直言って元々暑いのに熱いくらいになっていた。
HOT-ROUTE69たちはこちらに手を振っている。彼はトレーラーハウスの窓から大きな体を乗り出していた。オレは軽く手を振り返した。緊張感というかなんともいえない気持ちになるよな。
「おいおいおい!リンゴ遅えじゃねえか。こっちは待ちくたびれたぜ。どれぐらい待ったかってぇとタコスにワカモレソースを挟むのをうっかり忘れちまうぐらいだぜ!」
「こっちは大変だったんだぞ!スライドロックボルターに襲われて。あんなヤツがいるなら教えてくれてもいいじゃねえか」
「あー、わりいわりい。なんかそんなのもいたな。でも無事ここまで来れたんだから問題ねえだろ?まあ、とにかく全員無事でなによりってこった。早速このキャンピングトレーラーに来てくれ。いいものを見せてやるよ」
スマーティーGPUとY3Kも一緒にオレたちを出迎えてくれた。
「ジャンクヤードはこっちだぜ。あの柵の向こう側に見えるのがそれだ」
HOT-ROUTE69が指差す先には切り立った崖。その向こう側にジャンクヤードがあるようだった。ジャンクヤードには錆びた鉄屑などが山積みになっている。
「これって全部旧時代のヤツらが捨てたゴミなのか?」
「はい、正解です。これは旧時代の人たちが不要であるとして廃棄したゴミたちです」
「おいおいおい、ゴミって言うなよな。ほら車がいっぱいあんだろ?宝の山じゃねえか。どれぐらい宝かっていうとこの周辺にあるジャンクヤード全体があの有名な銅山、コッパーマウンテンに匹敵する値段で取り引きされてるってこった。こんな良い場所は他にねえぜ」
「……キモっ」
Y3Kがかなり辛辣なツッコミをHOT-ROUTE69に入れた。
ジャンクヤード内を歩くオレ達の前に錆びた車やクルマが捨てられて山積みにされていた。どれもこれも壊れてはいるが中には結構マシな状態の物もあった。
この辺りはジャンクヤードコンパウンドと言うらしい。油井とジャンクヤードがあってハイウェイ沿いに街ができるくらい栄えてたようだ。ジャンクヤードの中は思ったよりも活気があるようだ。
アポカリプスの後も電気柵のおかげでそこまで凶悪なサイボーグやミュータントは入り込まなかったらしい。周りを見渡してみるとそれなりに人が集まっていてパーツを探しているようだった。
「だがなぁ、何事にも例外はあるもんだぜ。ここのジャンクヤードで厄介なのはスライムっつうミュータント粘菌類だ。奴らはこのジャンクヤードに住むアブないやつらで、どれぐらいあぶねえかって言うと1リッターのタバスコを瓶ごと飲むくらいにあぶねえ」
(゜○゜)!
「えっ、タバスコって飲めるの!?」
RAPID-BOYは驚いた顔文字を浮かべている。
「おいおいおい、今危ねえって言っただろうが……。ぜってーやんなよ。フリじゃねえからな」
「そうなんだ……」
RAPID-BOYの顔文字はショボンとした顔文字に変わった。
「でもスライムって聞くとあまり凶悪そうな感じはないけど?エデンの街でも普通にポヨンポヨン弾んでるよ?ねっ、お兄ちゃん」
まあエデンのスライムはそうだよな。アイツらはネコと粘菌のミュータントでたまにじゃれて来ることもあるくらいだしな。
「いんや、ここの奴らはジャンクを身に纏って防衛して来るからすげぇ凶暴だ」
「もしかして、ここのスライムは用途が違うんじゃないかな。エデンのスライムはペットとコンポストの役割で創出されたって聞いたことがあるよ。旧時代の人たちが大量ジャンクを土に返すために亜種を作り出したとしても僕は驚かないかな」
チルアウトは淡々と分析している。
「ねえ、何を考えてるの?」
RAPID-BOYがそう尋ねると
「いや、それだけでは凶暴である説明がつかないなと思って……」
チルアウトは唸った。
「これはスマーティーGPUです。現状の情報のもとに一つの仮説に至りました。旧時代の人類たちは投棄に来る人たちを追い返す役割をスライムに与えたことが考えられます。スライムたちを凶暴化することで不法投棄者を退ける効果を一定以上与えることができます」
「旧世界の犯罪対策かよ。迷惑な話だな」
オレはそう言うとさっそくジャンクを漁り始めた。
「もしかしてスライムってあれじゃん?なんかいっぱいジャンクくっつけてるヤツ」
Real-eyesはジャンクの塊になったスライムを見つけた。確かにエデンのスライムみたいにネコの耳があるがエデン産は緑なのに対してこちらは黒っぽい。
「本当に仲良くなれないのかな?」
チェリーが近づくと目の前にしゃがみ込んでいた。
「スプリングだよ。食べる?」
チェリーはそう言うと手の上にスプリングを置いてスライムに差し出した。
スライムは触手を伸ばしてスプリングを受け取るとプチプチッと音を立てていた。
「おい、何やってんだよ? 危ないって言われたばっかだろ?」
「はーい」
チェリーは小さくバイバイと手を振ってスライムと離れてオレのとこへやって来る。
「あんまり、危ないことするなよ?」
オレがチェリーの頭を撫でるとチェリーは一緒に車を探してくれた。メンバー6人が乗ることができる車がベストだ。だが、どれもこれも動くものはなかった。パーツは錆びたり壊れたりして使い物にならなかった。
「リンゴー!!これはどうじゃん?」
そんな中、Real-eyesが1台の巨大なSUVを見つけた。どうやらそいつはエンジンがかかるようだ。
「うわぁ、Real-eyesくんが見つけたの? おっきいしカッコいいね!」
RAPID-BOYはそれを見て嬉しそうにしている。
「こいつをレストアしていこうじゃん!」
Real-eyesは車のボンネットに軽く手をおいた。
「うん! どんな車になるか楽しみだね!」
「おいおいおい、ワイルドモービル社のH2アーミーじゃねえか。オフロード向けの車だぜ!コイツはパワーと速度命のオレとはまた違った魅力がある。どれぐらいヤバい車かって言うと、マジに最高にヤバい。動かねえけどな!」
HOT-ROUTE69はニヤリと笑った。
「どうする?オレが手伝うか?」
「警告します。それではアンフェアすぎます。サンクチュアリーの車両性能をこちらが知りこちらが有利になります」
スマーティーGPUがそう回答するとY3Kは
「自動車バカ……」
と小さく呟きあきれた表情をした。
オレはH2アーミーのボンネットを開けて中を見た。エンジンは錆びていたが、まだ動く可能性があると思った。
「HOT-ROUTE、この車を動かすにはどうすればいい?」
「おいおいおい、結局オレに聞くのかよ。まずはバッテリーを交換しないとな。ここにあるのは全部古いタイプの鉛蓄電池だからな。今は水素電池が主流だぜ。それからタイヤだろ?それからオイルやガソリンの補充、ブレーキやライトやワイパー……。まあ、オレができるサービスはここまでだぜ。こっからはジャンク屋雇ってそいつと進めるといい。このジャンクヤードコンパウンドはジャンク屋たちの街だからな!」
親指を立てるとHOT-ROUTE69はニヤリと笑った。
「なあ、I李に頼むのはどうだ?」
「うん、I李はすごいジャンク屋だもんね!」
オレはすぐにI李を思い浮かべた。RAPID-BOYもそうか?
「なら、電話でI李に相談してみましょ?」
TAKE THR3Eはそう言うとスマホを取り出して電話をかけた。しばらくの呼び出し音。通話が繋がる音がした。
「あら、I李。ご無沙汰ねってほどは経ってないかしら」
どうやら電話は繋がったようだ。
「あの、I李。いまね、レッドロックバレーのジャンクヤードでH2アーミーを見つけたの。レストアできないかしら?」
『ごめんなさい。私は電子工作とペイントが専門なの♡ ガソリン車ってなるとちょっと難しいわ』
電話口からI李の返事が聞こえて来た。
『でもジャンクヤードコンパウンドに車が得意な知り合いがいるから紹介してあげる♡』
I李はそう答えて電話を切った。
I李が言うには彼はマカロニスパークと言う自動車工らしい。
「なあ、マカロニスパークって人に頼ろうと思うんだが……」
「おいおいおい、マカロニスパークの爺さんかよ! 大丈夫か? 爺さん、腰を悪くして、最近はほとんどレンチを握ってないって聞いたぜ!」
HOT-ROUTE69はマカロニスパークのことを知っていたみたいだ。オレたちはその言葉を聞いて不安になった。
「でもよ、まあ大丈夫だろうぜ。あそこは若いヤツを何人も抱えているガレージだからな! ジイさんではなく他のヤツがなんとかしてくれんだろ?」
オレはHOT-ROUTE69のレッカーでH2アーミーを引っ張ってもらいながらマカロニスパークのガレージに移動したのだった。
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