表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/42

25話 Humberger Shell

よろしくお願いします。

Twitter:@Arinkoln0719にあらすじ動画のリンクを投稿しています。

合わせてご覧ください

話が前後します!

 カクタスキャットとの騒動から一夜明けた朝、オレこと、リンゴは気分転換にTAKE-THR3Eとチルアウトをエデンの外れにある防波堤に誘い出した。夕暮れ時、潮風が頬を撫でる中、3人は期待に胸を膨らませながら釣りの準備を始めた。


「よーし、今日はでっかいの釣るぞ!」オレは意気揚々と道具を広げ始めた。


 しかし、タックルボックスの中身を確認していくうちに、オレの表情が徐々に曇っていく。


「あれ?おかしいな…」

 オレは荷物を何度もごそごそ探り始める。


「どうしたの?」

 TAKE-THR3Eが不思議そうに尋ねる。


 オレは額に汗を浮かべながら、ようやく顔を上げた。

「いや…まさか」

 申し訳なさそうに言う。

「釣り針を忘れちまった」


 TAKE-THR3Eとチルアウトは顔を見合わせ、大きなため息をつく。


「まったく、リンゴくんったら」

 TAKE-THR3Eが呆れたように言う。

「私の予備があるわ。でも、こんな調子で大丈夫なの?」


 チルアウトは黙って自分の道具を点検し始めた。


 なんとか釣り糸を垂らし始めてから30分ほど経った頃、ようやくオレの竿が反応し始めた。


「おっと、来たぞ!」

 オレが勢いよく竿を引くと、銀色に輝く魚が水面から飛び出した。


「やったぜ!」

 オレは興奮気味に叫ぶ。


 それを皮切りに、オレの竿からは次々と魚が釣れ始め、あっという間にバケツが魚でいっぱいになっていった。


「どうしてそんなに魚が釣れるのよ」

 TAKE-THR3Eが呆れつつも感心したように言う。


「へへっ、腕の良さってやつだな」

 オレが得意げに笑う。


 そのとき、TAKE-THR3Eの竿が突然大きく曲がった。


「あら、私のも…」


 彼女が慎重に竿を引く。水面から姿を現したのは、予想外にも一足の長靴だった。


「これは…長靴かしら?」

 TAKE-THR3Eは目を丸くする。


「おいおい、TAKE-THR3Eさては魚の代わりに靴を食うのか?」

 オレが爆笑する。


「冗談はよしなさい」

 TAKE-THR3Eは困惑しつつも冷静に答えた。


 そのとき、チルアウトの竿が小刻みに動き始めた。しかし、


「あの…」

 チルが困ったように言う。

「どうやら僕の竿に、リンゴが引っかかってしまったみたいだね」


「はぁ?」

オレが振り返ると、確かに自分の釣り糸がチルの竿に絡まっていた。


「おい、どういうことだよ」

 オレは頭を抱えながら、チルの竿に近づく。


 二人で何とか糸をほどこうとしているが、なかなかうまくいかない。汗を拭いながら四苦八苦していると、突然空から冷たい雨粒が落ちてきた。


「おい、天気予報晴れだったじゃねえか!」

 オレが空を見上げる。


雨は次第に強くなり、3人は急いで雨具を着込む。その瞬間、チルアウトの竿が激しく揺れ始めた。


「これは…!」チルアウトの表情が一変する。「すごい引きだ!」


チルアウトは必死に竿を操るが、どんどん引き込まれそうになる。雨で滑る手をなんとか踏ん張りながら、全身の力を込めて耐える。


「おい、チル!大丈夫か?」オレが慌てて駆け寄る。


「こ、これは並の魚じゃない…!」チルが歯を食いしばる。


 TAKE-THR3Eも長靴を置いて、チルの元へ駆け寄った。


「みんなで引っ張るわよ!」


 雨の中、3人で力を合わせ、必死に引き上げる。滑る足場と強い引きに苦戦しながらも、少しずつ糸を巻き取っていく。そしてついに、水面から奇妙な形の巨大な貝が姿を現した。


「なんだ、こいつは!?」


「信じられない!これは伝説のハンバー貝だ!」

 チルアウトが興奮気味に言う。

「アポカリプス前の研究者たちが、ジョークで作り出したミュータント貝なんだ。まさか本当に存在していたとは…」


 3人で力を合わせ、なんとかハンバー貝を陸に引き上げることに成功した。息を切らしながら、驚きと喜びが入り混じった表情で、この予想外の獲物を見つめる。


「へへっ、すげえもん釣れちまったな」オレが息を切らしながら笑う。


 そして、いつの間にか雨も上がり、夕陽が雲の間から差し込んでいた。


 3人は疲れを忘れ、ハンバー貝を囲んで座り込んだ。


「これは本当に貴重な発見よ」

 TAKE-THR3Eも珍しく興奮気味だ。

「エデンの生態系がこんなに進化しているなんて…」


 チルアウトは学術的な口調で説明を始める。

「このハンバー貝は、アポカリプス前の遺伝子工学の結果だと考えられます。当時の研究者たちが冗談半分で作り出したものが、予想外に生存し、進化を遂げたのでしょう」


 オレはハンバー貝をじっくりと観察する。確かに、上下の殻がバンズのような形をしており、中央には肉厚の貝柱が見える。

「まさか本当にハンバーガーの形をしてるとはな…」


 オレは急に何かを思いついたように立ち上がった。

「よーし、こんな面白い釣果が揃ったし、このまま帰るのもったいねえ。みんな呼んでバーベキューしねえか?」


 TAKE-THR3Eは長靴を持ちながら考え込むように言った。

「ええ、いいわね。この靴の謎も解明できるかもしれないし」


 チルアウトも珍しく賛成の表情を見せる。

「確かに、この貴重な標本を詳しく調べる良い機会になりますね」


オレはすぐさまコミュニケーターを取り出し、残りのメンバーに連絡を入れた。

「よし、決まりだ!みんなも呼んで、ここで即席バーベキューパーティーだ!」


 しばらくすると、チェリー、RAPID-BOY、Real-eyes、そしてアリスが到着した。


「うおっ!リンゴ、魚祭りじゃん!」

 Real-eyesが目をキラキラさせながら叫ぶ。


 チェリーはハンバー貝を覗き込んで驚いた声を上げた。

「わぁ、本当にハンバーガーみたい!食べられるのかな?」


 その傍らで、アリスがRAPID-BOYの耳を引っ張っていた。

「ちょっと、RAPID-BOY!あんたったら、また変なこと考えてたわけぇ!」


「いてて!アリス、痛いよ!」

 RAPID-BOYが悲鳴を上げる。


 チェリーはため息をつきながら、お姉さんぶった態度でアリスを諭す。

「もう、アリス。そんなにRAPID-BOYくんをいじめちゃダメでしょ」


 アリスは不満そうな顔をしながらも、RAPID-BOYの耳から手を離し、代わりにチェリーに甘えるように寄り添う。

「だってぇ、チェリーちゃん…」


 オレは呆れながらも微笑ましく見守っていた。

「おいおい、相変わらずだな、お前ら」


 TAKE-THR3Eがため息をつく。

「まったく、いつもこのパターンね」


 オレは焚き火を起こしながら元気よく宣言した。

「よーし、みんな!今夜は釣果パーティーだ!アリスも、もうRAPID-BOYをいじめるのは止めて、一緒に楽しもうぜ」


 アリスはチェリーに寄り添いながら、不満そうな顔をする。

「もう、つまんないわけぇ。でも、このハンバー貝ってやつ、気になるわね」


 Real-eyesは待ちきれない様子で、さっそくハンバー貝を火にかけ始めた。

「うひょー!こいつ、本当にハンバーガーの匂いがするじゃん!」


「ちょ、ちょっと待って!まだ安全性が…」

 チルアウトが慌てて制止しようとするが、


 Real-eyesは既に一口齧っていた。

「うめぇ!マジでハンバーガーの味がするじゃん!」


 アリスも興味津々で一口食べてみる。

「あら、本当に美味しいわけぇ!チェリーお姉様も食べてみて!」


 チェリーは嬉しそうに笑いながら言う。

「お兄ちゃん、こんな楽しいパーティー、ありがとう!」


 オレは魚を焼きながら満足げに答えた。

「へへっ、たまにはこういうのもいいもんだな」


 夜が更けていく中、防波堤では奇妙な釣果を囲んでの賑やかなパーティーが続いた。アリスはRAPID-BOYをからかいつつ、チェリーに甘えたり、時々オレたちの会話に突っ込みを入れたりしながら、独特の雰囲気を醸し出している。チェリーは相変わらずお姉さんぶってアリスを諭したり、RAPID-BOYをかばったりしている。星空の下、波の音を聞きながら、オレたちサンクチュアリのメンバーは楽しいひと時を過ごした。


 最後にオレは立ち上がり、みんなに向かって言った。

「よーし、みんな!明日からまた頑張ろうぜ。でも、たまにはこうやって変な釣果で盛り上がるのもアリだな!」


「おー!」

 みんなが声を合わせて応じた。アリスも珍しく素直な表情で

「たまにはこういうのもいいわけぇ」

 と言った。


こうして、オレたちの予想外で奇妙な、でも心温まる一日が幕を閉じたのさ。オレたちの日常に、こんな突飛な出来事が起こるのは珍しくねえ。それでも、こうして全員で笑い合える時間は何物にも代えがたい。明日からまた、オレたちの冒険は続いていく。だが、今宵の思い出は、きっとオレたちの心に長く残ることだろう。


もしよろしければ、


・ブックマークに追加

・広告下にある「☆☆☆☆☆」から評価


をしたうえで、本作を読み進めていただけると幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ