25話 Humberger Shell
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話が前後します!
カクタスキャットとの騒動から一夜明けた朝、オレこと、リンゴは気分転換にTAKE-THR3Eとチルアウトをエデンの外れにある防波堤に誘い出した。夕暮れ時、潮風が頬を撫でる中、3人は期待に胸を膨らませながら釣りの準備を始めた。
「よーし、今日はでっかいの釣るぞ!」オレは意気揚々と道具を広げ始めた。
しかし、タックルボックスの中身を確認していくうちに、オレの表情が徐々に曇っていく。
「あれ?おかしいな…」
オレは荷物を何度もごそごそ探り始める。
「どうしたの?」
TAKE-THR3Eが不思議そうに尋ねる。
オレは額に汗を浮かべながら、ようやく顔を上げた。
「いや…まさか」
申し訳なさそうに言う。
「釣り針を忘れちまった」
TAKE-THR3Eとチルアウトは顔を見合わせ、大きなため息をつく。
「まったく、リンゴくんったら」
TAKE-THR3Eが呆れたように言う。
「私の予備があるわ。でも、こんな調子で大丈夫なの?」
チルアウトは黙って自分の道具を点検し始めた。
なんとか釣り糸を垂らし始めてから30分ほど経った頃、ようやくオレの竿が反応し始めた。
「おっと、来たぞ!」
オレが勢いよく竿を引くと、銀色に輝く魚が水面から飛び出した。
「やったぜ!」
オレは興奮気味に叫ぶ。
それを皮切りに、オレの竿からは次々と魚が釣れ始め、あっという間にバケツが魚でいっぱいになっていった。
「どうしてそんなに魚が釣れるのよ」
TAKE-THR3Eが呆れつつも感心したように言う。
「へへっ、腕の良さってやつだな」
オレが得意げに笑う。
そのとき、TAKE-THR3Eの竿が突然大きく曲がった。
「あら、私のも…」
彼女が慎重に竿を引く。水面から姿を現したのは、予想外にも一足の長靴だった。
「これは…長靴かしら?」
TAKE-THR3Eは目を丸くする。
「おいおい、TAKE-THR3Eさては魚の代わりに靴を食うのか?」
オレが爆笑する。
「冗談はよしなさい」
TAKE-THR3Eは困惑しつつも冷静に答えた。
そのとき、チルアウトの竿が小刻みに動き始めた。しかし、
「あの…」
チルが困ったように言う。
「どうやら僕の竿に、リンゴが引っかかってしまったみたいだね」
「はぁ?」
オレが振り返ると、確かに自分の釣り糸がチルの竿に絡まっていた。
「おい、どういうことだよ」
オレは頭を抱えながら、チルの竿に近づく。
二人で何とか糸をほどこうとしているが、なかなかうまくいかない。汗を拭いながら四苦八苦していると、突然空から冷たい雨粒が落ちてきた。
「おい、天気予報晴れだったじゃねえか!」
オレが空を見上げる。
雨は次第に強くなり、3人は急いで雨具を着込む。その瞬間、チルアウトの竿が激しく揺れ始めた。
「これは…!」チルアウトの表情が一変する。「すごい引きだ!」
チルアウトは必死に竿を操るが、どんどん引き込まれそうになる。雨で滑る手をなんとか踏ん張りながら、全身の力を込めて耐える。
「おい、チル!大丈夫か?」オレが慌てて駆け寄る。
「こ、これは並の魚じゃない…!」チルが歯を食いしばる。
TAKE-THR3Eも長靴を置いて、チルの元へ駆け寄った。
「みんなで引っ張るわよ!」
雨の中、3人で力を合わせ、必死に引き上げる。滑る足場と強い引きに苦戦しながらも、少しずつ糸を巻き取っていく。そしてついに、水面から奇妙な形の巨大な貝が姿を現した。
「なんだ、こいつは!?」
「信じられない!これは伝説のハンバー貝だ!」
チルアウトが興奮気味に言う。
「アポカリプス前の研究者たちが、ジョークで作り出したミュータント貝なんだ。まさか本当に存在していたとは…」
3人で力を合わせ、なんとかハンバー貝を陸に引き上げることに成功した。息を切らしながら、驚きと喜びが入り混じった表情で、この予想外の獲物を見つめる。
「へへっ、すげえもん釣れちまったな」オレが息を切らしながら笑う。
そして、いつの間にか雨も上がり、夕陽が雲の間から差し込んでいた。
3人は疲れを忘れ、ハンバー貝を囲んで座り込んだ。
「これは本当に貴重な発見よ」
TAKE-THR3Eも珍しく興奮気味だ。
「エデンの生態系がこんなに進化しているなんて…」
チルアウトは学術的な口調で説明を始める。
「このハンバー貝は、アポカリプス前の遺伝子工学の結果だと考えられます。当時の研究者たちが冗談半分で作り出したものが、予想外に生存し、進化を遂げたのでしょう」
オレはハンバー貝をじっくりと観察する。確かに、上下の殻がバンズのような形をしており、中央には肉厚の貝柱が見える。
「まさか本当にハンバーガーの形をしてるとはな…」
オレは急に何かを思いついたように立ち上がった。
「よーし、こんな面白い釣果が揃ったし、このまま帰るのもったいねえ。みんな呼んでバーベキューしねえか?」
TAKE-THR3Eは長靴を持ちながら考え込むように言った。
「ええ、いいわね。この靴の謎も解明できるかもしれないし」
チルアウトも珍しく賛成の表情を見せる。
「確かに、この貴重な標本を詳しく調べる良い機会になりますね」
オレはすぐさまコミュニケーターを取り出し、残りのメンバーに連絡を入れた。
「よし、決まりだ!みんなも呼んで、ここで即席バーベキューパーティーだ!」
しばらくすると、チェリー、RAPID-BOY、Real-eyes、そしてアリスが到着した。
「うおっ!リンゴ、魚祭りじゃん!」
Real-eyesが目をキラキラさせながら叫ぶ。
チェリーはハンバー貝を覗き込んで驚いた声を上げた。
「わぁ、本当にハンバーガーみたい!食べられるのかな?」
その傍らで、アリスがRAPID-BOYの耳を引っ張っていた。
「ちょっと、RAPID-BOY!あんたったら、また変なこと考えてたわけぇ!」
「いてて!アリス、痛いよ!」
RAPID-BOYが悲鳴を上げる。
チェリーはため息をつきながら、お姉さんぶった態度でアリスを諭す。
「もう、アリス。そんなにRAPID-BOYくんをいじめちゃダメでしょ」
アリスは不満そうな顔をしながらも、RAPID-BOYの耳から手を離し、代わりにチェリーに甘えるように寄り添う。
「だってぇ、チェリーちゃん…」
オレは呆れながらも微笑ましく見守っていた。
「おいおい、相変わらずだな、お前ら」
TAKE-THR3Eがため息をつく。
「まったく、いつもこのパターンね」
オレは焚き火を起こしながら元気よく宣言した。
「よーし、みんな!今夜は釣果パーティーだ!アリスも、もうRAPID-BOYをいじめるのは止めて、一緒に楽しもうぜ」
アリスはチェリーに寄り添いながら、不満そうな顔をする。
「もう、つまんないわけぇ。でも、このハンバー貝ってやつ、気になるわね」
Real-eyesは待ちきれない様子で、さっそくハンバー貝を火にかけ始めた。
「うひょー!こいつ、本当にハンバーガーの匂いがするじゃん!」
「ちょ、ちょっと待って!まだ安全性が…」
チルアウトが慌てて制止しようとするが、
Real-eyesは既に一口齧っていた。
「うめぇ!マジでハンバーガーの味がするじゃん!」
アリスも興味津々で一口食べてみる。
「あら、本当に美味しいわけぇ!チェリーお姉様も食べてみて!」
チェリーは嬉しそうに笑いながら言う。
「お兄ちゃん、こんな楽しいパーティー、ありがとう!」
オレは魚を焼きながら満足げに答えた。
「へへっ、たまにはこういうのもいいもんだな」
夜が更けていく中、防波堤では奇妙な釣果を囲んでの賑やかなパーティーが続いた。アリスはRAPID-BOYをからかいつつ、チェリーに甘えたり、時々オレたちの会話に突っ込みを入れたりしながら、独特の雰囲気を醸し出している。チェリーは相変わらずお姉さんぶってアリスを諭したり、RAPID-BOYをかばったりしている。星空の下、波の音を聞きながら、オレたちサンクチュアリのメンバーは楽しいひと時を過ごした。
最後にオレは立ち上がり、みんなに向かって言った。
「よーし、みんな!明日からまた頑張ろうぜ。でも、たまにはこうやって変な釣果で盛り上がるのもアリだな!」
「おー!」
みんなが声を合わせて応じた。アリスも珍しく素直な表情で
「たまにはこういうのもいいわけぇ」
と言った。
こうして、オレたちの予想外で奇妙な、でも心温まる一日が幕を閉じたのさ。オレたちの日常に、こんな突飛な出来事が起こるのは珍しくねえ。それでも、こうして全員で笑い合える時間は何物にも代えがたい。明日からまた、オレたちの冒険は続いていく。だが、今宵の思い出は、きっとオレたちの心に長く残ることだろう。
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