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23話 CACTUS CAT

よろしくお願いします。

Twitter:@Arinkoln0719にあらすじ動画のリンクを投稿しています。

合わせてご覧ください

 夜が明けて空が白み始めた頃、オレたちはエデンの東門をくぐり抜けて街に戻った。みんなと別れて家に帰る。I李に報告に行った後仮眠をとることにした。


「ふぁ〜」

眠い。オレはあくびをしてベッドから抜け出した。

 コーヒーを飲むためにキッチンに行く。妹のチェリーはすでに起きておりエプロンを付けていた。

「お、お兄ちゃん。食品庫が大変なことになってるよ」

「うわー、なんだこれ……。野菜が腐ってんじゃねーか」

 オレは妹の案内で食糧庫を見に行く。ひどい腐敗臭だ。野菜が山のように積まれている。うわぁ、ニオイえぐすぎだろ。これでは食えないな。


「うう……臭いよぉ。お兄ちゃん。すごい臭いが……」

 チェリーは鼻を押さえながら臭いに耐えている。

「ちょっと家を空けすぎたかもな。今日は缶詰で我慢して自分たち用に食材採集に行った方が良さそうだ」

「えっ、採集?」


「そうだよ。オレが広告塔やめてから、レールギャングとしてジャンクハンターの真似事してんだろ? ジャンクハンターは自由業だから身入りが良くなくてな」

「うーん。じゃあ、食糧庫の戸棚洗ったら採集だね」


 チェリーは缶詰を開けると取り分けてくれた。星印のオリジン用スパム。チキンスープ。缶切りであけるとそのまま電熱線の上に乗せて温める。

 昔はIHとか言う調理器具を使ってたらしいが、ヴィンテージ家電はコレクターズアイテム。オレらが買えるわけがない。


 それにふくらし粉とコーン粉を練って焼いたパン。一食分完成。ふくらし粉とコーン粉が生きててよかったな。

「いただきまーす」

 二人で声を揃えて食事を摂る。缶詰だらけの朝食。だが安定の栄養価と旨さだ。塩っからさは自作のパンでカバーしよう。


 こうしてオレたちは食事を摂って棚を綺麗にした後フードハントに出かけることにした。ジャンクハンターをやってるメンバーを誘ったらRAPID-BOYだけが一緒について来てくれた。


「僕だけ?」

「ああ、他のハント経験者にも声かけたんだが……Real-eyesは家族と過ごしたいしTAKE-THR3Eは友達と用事があるって」

「そうなんだ」

 RAPID-BOYはなぜか嬉しそうにしている。


「じゃあ、僕が色々おしえてあげるね」

「おう、助かるぜ。サンキューな」


「今回はプリックペアーを採りにいこうと思います。プリックペアーはカクタスキャットの首になるんだよ」


 RAPID-BOYによるとカクタスキャットはサボテンとネコのミュータント生物らしい。プリックペアーというのはカクタスキャットの実で、比較的簡単に取れるそうだ。

「カクタスキャットは人懐っこいんだけど全身を棘で覆われているんだ。足に戯れてくることもあるから長靴を忘れないようにね」


 オレたちはまた東門からレッドロックバレーに出る。ウェンディゴが歩き回っていた夜とは雰囲気が違う。レッドロックバレーの荒野は直射日光に照らされていた。


 カクタスキャットはそこから少し北に歩いたところに生息している。

「わあ、あちぃ……溶けちまいそうだぜ」

 オレは今日はレザージャケットを着ておらずタンクトップ一枚だがそれでも暑い。


「チェリーも無理せず暑かったらいうんだぞ?」

「ううん。私は大丈夫だから。でも、RAPID-BOY大丈夫なの?ヘルメットかぶってたら暑そうだけど」

「大丈夫だよ。このヘルメットは冷却効果があるんだ」


 そんな話をしていると足元から

「なぁう」

と猫の鳴き声がした。

「RAPID-BOY、そこにいる猫って……」

「この子がカクタスキャットなんだ」

 そこには緑色でトゲトゲしたネコがいた。首のところに赤いプリックペアーがなっている。


「うわぁ、かわいい」

 チェリーがカクタスキャットを抱きしめようとするのをRAPID-BOYが止める。

「待って、チェリーちゃん! そのまま触ったらトゲで怪我しちゃう」

「あ、そっか。ごめん」

 カクタスキャットは甘えたい気分のようですり寄ってくる。


 RAPID-BOYはカクタスキャットの首からプリックペアーを取る方法を教えてくれた。まずはカクタスキャットに優しく声をかけて慣れさせること。次にトゲのない部分を探してそっと触ること。そしてプリックペアーをを軽くひねって外すことだ。カクタスキャットはプリックペアーを取られても怒らないし、むしろ喜んでくれるらしい。プリックペアーはカクタスキャットの種だからな。外れた実には新しいカクタスキャットが生まれる可能性もあるという。その場合は新しいカクタスキャットを親に返してあげればいいそうだ。


「ほら見て。チェリーちゃん」

 RAPID-BOYはカクタスキャットからプリックペアーを取ってチェリーに見せた。プリックペアーは赤い果実で、中には黒い種がたくさん入っている。

「わぁ、すごい、すごい。私がんばらなくちゃ」

 チェリーはRAPID-BOYの真似をしてカクタスキャットに声をかけた。カクタスキャットはチェリーにも懐いてくれて、首のプリックペアーを差し出した。


「なぁ」

 カクタスキャットは嬉しそうに鳴いた。

「やった!私もできたよ」

 チェリーはプリックペアーを大事そうにクーラーボックスに入れた。

 チェリーがきちんとプリックペアーをとれたことにRAPID-BOYも嬉しそうだ。


だが……。

「なぜだー!なんでオレには近づいて来ねえんだ?」

「え?」

 カクタスキャットはまたオレの前にはやって来ずにRAPID-BOYの方へ寄っていき甘え始めたのだ。チェリーのところにも集まっている。


「なあ、なんでだと思う?オレ、なんか嫌われることしたってのか?」

 RAPID-BOYはオレに同情してくれた。

「うーん。カクタスキャットは気分屋だから、今日はたまたまリンゴくんに気が向かないのかもね」

「はっ、マジかよ。クッソー!なんか悔しいぜ。オレもカクタスキャットと仲良くなりてぇわ」

「リンゴくん、これ」


( ・∀・)つ


RAPID-BOYはオレに小さな瓶を渡した。中には液体が入っている。 「なんだよこれ?」

「これはマタタビのエッセンスなんだって。ジャンクハンターの先輩くれたんだけどこれを身につけるとカクタスキャットが寄ってくるらしいよ」

「へえ、じゃあ試しにやってみるか……。ヤバい副作用とか出たらすぐ止めろよ」

 オレは瓶の中の液体を手首に吹き付けて嗅いだ。


「うわ、これめっちゃいい匂いだな。甘くてフルーティーで……」

爽やかな果物のような匂いがする。

「お兄ちゃん、なんかすごい匂い嗅いでてネコみたい」

「あん?なんだよ、ネコって。オレはニンゲンだぜ?」

と、そんな会話をしているうちにカクタスキャットが集まってきた。猫が寄ってきてくれる匂いというやつなのだろうか。


 オレの足元で何匹ものカクタスキャットがゴロンと体を横たえている。みんな喉を鳴らして寛いでいる。

 オレのまわりにどんどんカクタスキャットが集まった。オレの体をよじ登ってくる。

「おっ、うぉい。マジでやめろって。イタイタイタい!毛が刺さるからマジで!」

「お兄ちゃん、モテてる」

チェリーが笑う。

「あはは。リンゴくん……大丈夫?」


(。í _ ì。)


 RAPID-BOYは呆れながらもオレのことを心配してくれる。ああ、カクタスキャットってなんてかわいい生き物なんだ!こんなにトゲを擦りつけて来てこっちは傷だらけだこのやろう。オレはカクタスキャットはもう懲り懲りだと心底思ったのだった。


 オレはカクタスキャットに囲まれながらもなんとか自力で逃げだした。カクタスキャットはまだまだチェリーやRAPID-BOYの方にも集まっているようだ。

「ったく酷い目にあったぜ」

 オレはカクタスキャットのトゲだらけになった体を点検した。幸い、血は出ておらず怪我もなさそうだ。


「あ、お兄ちゃんお帰り」

 オレはチェリーの笑顔を見られただけで疲れなんか吹き飛んだのだった。

「けど、なんでこの一帯しかいなかったんだろう?リンゴくん、理由を知ってるの?」

「さあな、昼寝に丁度いいとかじゃねえか?」


「じゃあ、ちょっと調べてみようよ」

「いいぜ」

 オレは好奇心旺盛なRAPID-BOYに促されてカクタスキャットの調査を始めることにした。オレたちは群れの中心を調べることにした。

カクタスキャットはまず、昼間は日向で基本眠っているということがわかった。


「ねえ、これを見て」

 そこには横穴があって中から香ぐわしい匂いが漂ってきた。

「リンゴくん、あれを見て。なんか臭い液体?」


( ・᷄ฅ・᷅ )


「ほんとだ。お兄ちゃんなんかが発酵してるんじゃない?」

 RAPID-BOYはオレに手招きして、石の横穴に近づいた。オレもついていった。


「おお、めっちゃいい香りだな。良い酒の匂いがする」

オレは酒の入った器を持ち上げると匂いをかいだ。それからぺろりと舐めた。

「最高だぜ!でもめっちゃアルコールが強いみたいだ」

「これ、カクタスキャットの酒だって。アルコール度数が強いからクリニックで消毒にも使われているやつ」

「ねえ、お兄ちゃん。これ持って帰らない? 売れるかもしれないよ」


「そうだな、オレも欲しいところだが……」

「そのことなんだけど、ジャンクハンターの間じゃお酒には手を出すなって言われてるんだ。お酒がなくなっちゃうと群れが離散してプリックペアが取れなくなるらしいから」

「そうかよ。自然と共生するってのも大変だ。でも、もったいないなぁ。めっちゃいい酒なのに」

こうしてカクタスキャットの調査は終わって無事に帰ることになった。


「代わりに帰ったらプリックペアーのジャムを作ってあげるね」

「それ、最高!」

 オレたちはプリックペアーを何に使うかを考えながらエデンへと戻るのだった。

もしよろしければ、


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をしたうえで、本作を読み進めていただけると幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします!

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