21話 Docker-People
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灼熱の太陽が焼き付ける中、オアシスが見えてきたときは本当に安堵した。
「やっと着いたな」
オレは額の汗を拭いながら言った。
TAKE-THR3Eがオレの隣に立ち、オアシスを見つめている。
「リンゴくん、こんなオアシスのコンパウンド知らなかったわ、Bちゃんがいるかもしれないわ」
オレは驚いて彼女を見た。
「Bちゃん?ここにいるのか?」
彼女は首を傾げる。
「確証はないわ。でも、私の直感が……」
近づくにつれ、様々な形の住居が見えてきた。地下の巣穴、木の上の家、廃品で作られた小屋……こんな場所、見たことねえぜ。
「TAKE-THR3E、ここは……」
彼女は頷いた。
「エグザイラーのコロニーね。私たちと同じように、彼らも生きる場所を求めているのよ。この空気の振動……色々な音が混ざり合っているわ」
オレたちが近づくと、様々な姿のエグザイラーたちが見えた。魚みたいなのや、昆虫みたいなの、植物みたいなの……驚きの連続だったぜ。
でも、オレたちを見たエグザイラーたちは、恐れるように身を隠し始めた。
「おい、TAKE-THR3E。なんでこんなに警戒してるんだ?」
TAKE-THR3Eの表情が曇る。
「彼らは何かに怯えているわ。リンゴくん、用心して」
その時、車のエンジン音が聞こえてきた。砂煙の中から現れたのは、ジュピター・ポリス・クルーザーというネイビーカラーのクラシックカーだった。突如車のドアが開くとサイボーグの女性が降りて来た。
「ホールドアップ! 私はDecker-People。エグザイラーハンターだ」
オレは思わず前に出ようとしたが、TAKE-THR3Eがオレを止めた。
「私に任せて。この人とは、別の周波数で会話しないといけないわ」
彼女はDecker-Peopleに向き合い、冷静に話し始めた。
「私たちは彼を助けただけよ。エグザイラーだからといって、見捨てるわけにはいかないじゃない」
Decker-Peopleの機械の目が冷たく光る。
「感情論は無意味だ。エグザイラーはエデンの治安を乱す存在。排除するのが私の任務だ」
TAKE-THR3Eは毅然とした態度で反論する。
「彼らだって生きる権利がある。むしろ、エデンの社会が彼らを受け入れられないことこそが問題じゃないかしら。お互いを理解し、尊重し合える関係こそが大切だわ」
Decker-Peopleが冷ややかに返す。
「だからどうしたというの?」
TAKE-THR3Eは一瞬言葉に詰まるが、すぐに気を取り直し、強い決意を込めて答える。
「それは……私たちが変わらなければならないということよ。エデンもエグザイラーも、みんなが共存できる社会を作るべきなの。それは、素晴らしい協奏曲を奏でるようなものよ」
Decker-Peopleは冷ややかに笑う。
「理想論だな。現実はそう甘くない」
オレは前に出て、TAKE-THR3Eの肩に手を置いた。
「甘いかもしれねえ。でも、オレたちはその理想に向かって進むんだ」
Decker-Peopleが武器を構えた瞬間、空気が凍りついたような気がした。
「みんな、私に合わせて!私たちの力を信じなさい」
TAKE-THR3Eの声が響く。
オレは彼女の背中を見つめていた。突然、TAKE-THR3Eの体が青白い光に包まれ、まるで空気の振動が見えるかのようだった。
「ブリーチング!」
彼女が叫ぶと同時に、天から舞い降りるように宙に浮かび、Decker-Peopleに向かって急降下した。
「くっ……」
Decker-Peopleが身構えるが、間に合わない。TAKE-THR3Eのかかとがサイボーグの肩に直撃し、衝撃波が周囲に広がる。
だが、Decker-Peopleもただものじゃないみたいだな。
彼女の体からけたたましいサイレン音が鳴り響き、オレたちの耳を強烈に刺激した。
「うっ……!」
思わず耳を押さえる。その隙を突いて、Decker-Peopleの腕から青白い光線が放たれた。
「TAKE-THR3E、危ない!」
オレは叫んだが、彼女はすでに動いていた。
TAKE-THR3Eは音波を纏いながら、光線をかわす。その動きは、まるで水中を泳ぐように滑らかだった。
「リンゴくん、電撃を!私たち技を重ねるのよ!」
彼女の声に応えて、オレはレッドエヴォルヴをあおると全身の力を振り絞って電撃を放つ。
電撃とTAKE-THR3Eの音波が絡み合い、青白い稲妻のような光線となってDecker-Peopleに襲いかかる。
「甘い!」
Decker-Peopleが叫ぶ。彼女の体から突如、無数の小型ドローンが飛び出し、赤いライトをちらつかせながらオレたちの攻撃を受け止める。
「くそっ……」
オレは歯噛みする。
しかし、TAKE-THR3Eは冷静だった。
「みんな、耳を塞いで!フィナーレよ!」
彼女の言葉が終わるか終わらないかのうちに、オレは反射的に耳を押さえた。次の瞬間、目に見えない衝撃波がオアシス全体を包み込む。
ドローンが次々と墜落し、Decker-Peopleのサイレンも止まった。静寂が訪れる。
「今よ!最後の協奏曲!」
TAKE-THR3Eの声に、オレたち全員が一斉に動く。
オレの電撃、Real-eyesのホバーボード特攻、RAPID-BOYの精密射撃、チルアウトのメス投げ……そして、それらを全て音波で増幅するTAKE-THR3E。
全ての攻撃がDecker-Peopleに集中する。彼女のサイボーグボディから火花が散り、ついに膝をつく。
「まさか……私が……」
TAKE-THR3Eが静かに近づき、優しく語りかける。
「あなたも、私たちも、エグザイラーも、みんな同じ。生きる権利があるのよ。それぞれが独自の音色を持っているの。その音色が重なり合って、素晴らしいハーモニーを奏でるのよ」
オレは息を呑んだ。TAKE-THR3Eの姿が、まるで女神のように見えた気がしたぜ。
この瞬間、エグザイラーたちの中から小さな声が聞こえ始める。彼らは恐る恐る、しかし確かな意志を持って、オレたちの後ろに集まり始めた。
「私たちも……生きる権利がある」
「エデンで生きられなくても、ここで平和に暮らしたい」
「私たちは誰も傷つけていない。ただ生きたいだけなんだ」
Decker-Peopleは、この予想外の展開に戸惑いの色を見せる。彼女の冷たい目に、僅かな迷いが浮かぶ。
「これが……エグザイラーたちの本当の姿なのか……」
TAKE-THR3Eは静かに、しかし力強く言う。
「見たでしょう?彼らは決して脅威ではない。むしろ、私たちの社会を豊かにする存在なのよ。多様性こそが、最高の交響曲を生み出すの」
Decker-Peopleは長い沈黙の後、ゆっくりとバイクに跨る。
「……今回は見逃す。だが、これで終わりじゃない」
彼女はエンジンをかけ、去っていく。砂煙が晴れた後、オアシスに残されたのは、希望に満ちた空気だった。
サンドストームが目を覚まし、周りの状況を見渡す。
「お前たち……なぜオレを助けた?」
TAKE-THR3Eが優しく答える。
「あなたの生き方を否定する権利は、誰にもないから。あなたの音色も、この世界の交響曲に必要不可欠なのよ」
オレはTAKE-THR3Eに尋ねた。
「なあ、本当によかったのか?」
彼女は静かに微笑んで答えた。
「エデンの外にも、生きる場所はあるはず。私たちにできるのは、その可能性を信じることよ。それに……」彼女は少し照れくさそうに続けた。「みんなと一緒にいると、どんな困難も乗り越えられる気がするの。特にあなたがいてくれると、リンゴくん」
「お、おう……」
オレは彼女の言葉に胸が熱くなった。こうしてオレたちは、新たな困難を乗り越え、また一歩前に進んだんだ。TAKE-THR3Eの強さと優しさが、オレたちの旅を導いてくれている。これからも、彼女と一緒に歩んでいけることを、オレは誇りに思うぜ。
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