18話HEAT out METALIC HEART!
丘を東に降りると一面の荒野。レッドロックバレー。まだ入り口だからなだらかだ。だが、街を離れると段々と大きくて険しい谷になる。オレたちはマリジャ族とワーウルフの騒動を納めてそのままドサクサに紛れて降りてきたのだ。赤茶色の砂。太陽の光を反射して眩しい。乾いた風。砂埃をオレたちの顔に叩きつける。
「ねえ、リンゴくん。あれ見てよ」
RAPID-BOYが何かを指差す。キャンピングトレーラーだ。
「人が住んでんのかな? ちょっと行ってみない?」
「そうだな。行ってみるか」
オレは肩をすくめて同意する。キャンピングトレーラーの方へと歩き始めた。
どうやら、キャンピングトレーラーは修理されたばかりらしい。ホコリもまだそれほど被っていない。窓から内部を覗いてみようとする。だが、カーテンが閉まっている。
「誰もいないのかな?」
チェリーがキャンピングトレーラーのドアを叩く。すると、中から「誰だよ?」という声が聞こえた。
ドアが開くと男性がたっていた。身長は2メートルくらい。険しい顔でオレたちを見下ろしている。そこには細マッチョ体型。褐色の肌。
「おいおいおい、お前ら一体誰なんだ?ここはオレの秘密の特訓場だぜ。ガソリンを飲みてえってんなら話は別だが、オメエらどうみてもガソリン飲むタイプじゃなさそうだなおい!一体全体、何しにここに来たんだよ?」
男は少し苛立った様子で捲し立てた。オレは圧倒されて後ずさった。
「オレはリンゴ。アンタ、名前は?」
「おいおいおい、ってぇことはアレか?お前らが新しくウェルプレイドに参戦してきたって言うニュービーかよ。まあ良いさ。ってかオレのこと知らねえってマジかよ。オレはこの辺を仕切ってるチーム、メタルパンクのリーダーHOT-ROUTE69ってんだ。ホットルートろくじゅうきゅうだぜ? 変な読み方してくれんなよ? オレはプロミネンス・チャージャーBody-B 1970年式っていう車のサイボーグらしいぜ。因みにオレの愛車もオレとおそろだ。サンクチュアリだかパンクチャーだかバンクシーだか知らねえが、テメェらここはオレたちの縄張りだぜ?」
HOT-ROUTE69は偉そうにオレたちに向かって凄んでくる。
チラリとRAPID-BOYの方を見てみると彼は
( °-° )
ポカンとした顔を浮かべていた。
「おいおいおい、もしかして滑ったのか? まあいい。楽しくやろうぜ!」
彼はそう言うと、右手を差し出した。
「ありがとう。オレはリンゴ、こっちがTAKE-THR3Eにチルアウト、そんでこっちはReal-eyes……」
オレは順番に自己紹介すると、HOT-ROUTE69の手をぎゅっと握った。するとHOT-ROUTE69が握り返して来た。彼の手は熱くて硬かった。
「痛え痛え痛え痛い痛い! おい、何しやがるんだ!?」
彼は力の強さでオレに挑戦しているのだと分かった。
「そりゃあ、そうだろ。オレたちとお前らはライバルだ。がっちりスクラム組んで仲良しこよしってわけにはいかねえだろ? じゃあどうするかって、そりゃライバルだからな。フェンシングが剣で語りあうみてぇに痛え痛え痛え! お前もなかなかやるじゃねえか」
オレは負けじと力を込め握り返す。オレたちの手の間には火花が散ったようだった。
「ふん、こういう荒い友情ってのも悪くねえな」
「だってよ。お前ら、コイツらと仲良くしろよ。但し大人しくする必要はねえ。コイツらとライバル力をぶつけ合おうじゃねえか」
「こんにちは、これはスマーティーGPUです。HOT-ROUTEのことは余り気にしないでください。私はあなたとお話ししたいです」
「まず初めに、こちらの全身緑の基盤のサイボーグの姉ちゃんがスマーティーGPUだぜ。なかなか色っぽいだろ?」
「ありがとうございます。しかし、私はサイボーグの中でも機械よりのため、褒められても嬉しいと感じません。HOT-ROUTEはこのような人物ですが私共々よろしくお願いいたします」
「で、もう一人が、Y3K。コイツはまだ若いけど頼りになるオレたちのメンバーだ」
そう言われて顔を出した少女はピンクのサングラスをかけて銀色のジャケットを羽織っている。金属製のアクセサリー、LEDのアクセントが特徴的だ。
「はっ、誰?」
少女はそう言いながらバブルガムを膨らませる。
「おいおいおい、挨拶ぐらいちゃんとしろよ。ライバル関係は挨拶から。じゃねえと、いざバチバチする時に気持ちよく戦えねえだろうが。神様扱いしろってんじゃねえんだ。ゲームで一緒に戦う友達、ライバルとして接してくれねえとって、うっ」
少女はHOT-ROUTE69に蹴りを入れる。
「ウザい……。私はY3K……これでいい?」
Y3Kはつまらなそうに口をへの字にしている。
「はい。正しい対応です。Y3K、あなたは私たちのメンバーとして正しい反応をしました」
「おいおいおい、勘弁してくれよぉ。そっちがその気ならオレだってやってやるよ」
「HOT-ROUTE69、あなたはいつも無駄な力を使っています。あなたはY3Kが真似をするのであなたはもう少しクールになるべきです」
「入ったら?せっかく来たんだから」
「ありがとう。私はチェリー14歳。だいたいおんなじ位だね」
「はぁ、だから何?」
「えっと……」
「私はY3Kにお友達と仲良くなる方法を提案します。それは愛想良くすることです。愛想良く振る舞うことでお友達とコミュニケーションを取りやすい環境を築くことができます。実践してはいかがですか?」
「そう言うのホントうざいから……」
「Y3Kちゃんだっけ? あの二人っていつもこんなかんじなのかしら?」
「そう……。ってか、二人とも正反対の性格でぶつかってばっか。マジウザいいんだけど」
「あなたはちゃんと二人のこと分かってるのね。偉いじゃない」
TAKE-THR3Eがそう言うとY3Kは照れていた。
「別に……。ウチら一応、チームじゃん」
「Y3K、あなたがしっかりしなくてはいけません」
「うっさい。はぁ……マジでウザい。ウチは帰るから」
Y3Kは面倒臭そうにバイクに跨ると、そのまま何処かへと走り去ってしまった。
「気をつけて帰れよ!ハイウェイを離れんじゃないぜ」
——ビー!
クラクションの音が返って来た。
「ったく、手のかかる妹分だ」
「はい。しかし、私にとって手のかかる人物はもう一人います。それはHOT-ROUTE69あなたです。私はあなたの普段の行いを分析してあなたが『手のかかる』に分類されるという回答を得ました。あなたはどう思いますか?」
「おいおいおい、そろそろやめようぜスマーティー。オレらに仲良くして欲しいのは分かったからよ。でも、お前はちょっと考え過ぎだぜ?」
「私はあなたの健全な回答を要求しただけです。あなたが止めて欲しいということを望むのであれば回答を停止します」
オレは二人のやりとりをしばらく見ていたがひと段落ついたらしい。
HOT-ROUTE69はドラム缶から缶詰の空き缶にガソリンを掬うとテーブルに置いた。
「あー、すまん。チョコバーとコーラでいいか?こんなもんしかねえけど。Y3Kは食性が人間と近いタイプでお菓子しか持ち込まねえんだよな。後で買い足してやるの忘れねぇようにしないと」
オレはお礼を言うと、コーラの缶を開けて乾杯をした。
HOT-ROUTE69は豪快にガソリンを飲み干す。
「あー全然ダメだ。なってねえぜこりゃ!不純物入りすぎてて味がエグいわ」
彼はなんとも言えない表情を浮かべている。
「オイラは電気で」
Real-eyesは変圧器の電極をつかんで電源を入れた。
「それにしてもガソリン食のサイボーグはめずらしいじゃん」
「はい。私は本来、電気エネルギーで生命維持を行っていますのでガソリンを飲むことはできません。しかし、HOT-ROUTEはそちらを好む様です」
「まあ、ガソリンを飲むタイプは比較的珍しいよね。手に入れるのも大変なんじゃないかな。世界が崩壊してからは石油の輸入なんてできないし」
チルアウトは興味深そうにしている。
「気になるか? まっ、それがオレがここに住んでいる理由ってことだな! ガソリン欲しけりゃ原油汲みゃいい。ガソリン食のヤツらが生活できる様にな!」
窓の向こうにそびえる火のついた煙突を指した。
「煙突から火が出てるよ!」
Σ('◉⌓◉’)
あれって油井じゃねえか?
「おっ、そうだ。おめえらに是非ウェルプレイドを申し込みてぇんだ。って、おいおいおい。マジかよ? おめえらコンソール持ち歩いてねえのかよ。コンソールはレールギャングにとって大事なツールだぜ?コンソールを持ち歩かねえレールギャングなんざ具のねぇハンバーガーみてえなもんだぜ」
「えっ、コンソールって持ち歩けるんですか?」
チェリーが驚いた様に言った。
「おいおいおい? あたりめえだろ。アレがなきゃトラムのソフト面をいじれねえんだからよ」
「私はスマーティGPUです。私はウェルプレイドのメタルパンク流のルールを提案しようと思いましたが難しい様ですね。今度来る時は必ず端末を持参してください」
「リンゴくん、そろそろお暇しないと街に帰れなくなるわよ」
TAKE-THR3Eが声を掛けてくる。
「マジか。チル、こっから街ってどれぐらいかかるんだ?」
「まあ、歩きで半日ってところだろうね。今出れば日暮れまでにはギリギリって感じじゃないかな」
「お兄ちゃん、絶対、今出た方がいいよ」
「そ、そうか? 分かったよ。じゃあ、またなHOT-ROUTE、スマーティー!」
「急ぐのであればハイウェイ沿いに移動してください。街までの一番早いコースです」
「おう。まあ、今度一緒にウェルプレイドしようぜ。オレのカリカリにチューンした走りでバッファローウィングみたいにしてやるぜ!」
オレたちはキャンピングトレーラーを後にした。
Hot Route 69
オレの名前はHOT Route
69って言うんだぜ
カーはチューンをして爆上げ
赤土の荒野でfight the game
オレの名前はHOT Route
69って言うんだぜ
カーはチューンをして爆上げ
赤土の荒野でfight the game
ギラギラ光る荒野のpetro oil
イケイケファッションは輝くretro style
溢れる思いが奏でるハートbeat
示そうぜ燃え上がる走り屋attitude
バトろうぜぶち上げようぜroad race
満タンのエンジンで先陣をno break
万全のコンディで地獄へバトろう
燦然と登場だ汚すぜcabonate
オレの名前はHOT Route
69って言うんだぜ
カーはチューンをして爆上げ
赤土の荒野でfight the game
オレの名前HOT Route
69って言うんだぜ
カーはチューンをして爆上げ
赤土の荒野でfight the game
おいおい、お前らテッペン取ろうぜ
ノリノリでこれからブチかましに行こうぜ!
ゴリ押しでゲームの勝利を勝ち取ろうぜ
追い込みでびびらせて追い抜いてやろうぜ
パンパンガンガン準備は万端
バンバン判断峠の難関
ギャンギャン弾丸のようにワンパン
南南湾岸取ろうぜ三冠
オレの名前はHOT Route
69って言うんだぜ
カーはチューンをして爆上げ
赤土の荒野でfight the game
オレの名前はHOT Route
69って言うんだぜ
カーはチューンをして爆上げ
赤土の荒野でfight the game
今日もご機嫌なニトロエンジン
エンジンって呼ばれるぐれえ尖ろうぜ前進
そうだぜオレは記録の破壊シン
ハカイシになるまでのお付き合いだガソリン
最高で彩光な太陽な才能
会場は街道でライジョウは大層
ハイオクで満タンハイ速でUターン
はい、即終了ずっと俺様のターン
[Verse]
Yo, my name is Hot Route 69, you know I'm on fire
Tuned up my car, ready to go higher (uh-huh)
In the red dirt wilderness, I'm fightin' the game
Hot Route 69, remember the name (yo, check it)
[Outro]
赤土の荒野でfight the game
オレの名前はHOT Route
69って言うんだぜ
カーはチューンをして爆上げ
赤土の荒野でfight the game
オレの名前はHOT Route
69って言うんだぜ
カーはチューンをして爆上げ
赤土の荒野でfight the game




