2話 RINGO and REAL-EYEs the Ultimate tag team
「ああ、イライラすんなあ!」
解雇だとふざけんな!
この退廃した街でオレだって必死に生きてんだよ! オリジンは能力がねえだ? だからレッドエボルヴを使うんじゃねえか。オリジンは生身で脆弱だ? だったらミュータントはどうなんだよ? サイボーグは?
オレはイライラして空中をブン殴る。さっきのレッドエヴォルヴの分の能力が残ってたみてえだ。
「なんだと?」
通りをホバーボード(前時代のスケボーからタイヤ取って風で浮かぶようにしたヤツ)で走っていた少年、
金髪、赤いパーカー、黒いキャップ。
彼はオレの雷光を浴びてホバーがブーストしてしまった。コントロールを失ってトラムに突っ込む。
——ドンガラガッシャン。
緊急事態発生。トラムっていうのがまずかった。
トラムの所有者はレールギャングと言われる宗教系のゴロツキ集団だ。打ち捨てられたトラムを走らせて企業に乗っ取られた手前勝手な政府に変わって治安維持活動をしている。勿論手前勝手な治安維持だ。だから相当クソったれな私刑も多発する。
「うぉ。ヤベエなぁ……逃げ……」
「逃すかよ。オメェ、レッドエヴォルブの広告塔、E地区のリンゴじゃん? リンゴ・ロックスターじゃん? お前の家に火炎瓶投げ込んだるわ」
ホバボ少年がイキリ散らかしてくる。金髪、赤いパーカー、黒いキャップを逆さに被っている。
「ホバボのガキ、イキってる場合かよ。ズラかんねーとやべえぞ」
後ろのトラムに目を向けると少女が煙の燻っているトラムから降りてきた。
「はぁ? 人様のことシビビってしたくせにそれはねーわけ」
鋭角なツインテール。鮮やかなショッキングピンクのゆるく巻かれた髪。ゴスロリの服、プラザのハンドバッグ。シャルルの5番の香水が鼻につく。
「オタクらみたいなバカでもわかる言葉で言うわね。ウチらに喧嘩売ってるつもり? B地区じゃウチらは法、イコール神なわけ。ついでにオタクら私刑確定。オーライ?」
全然オーライじゃない。レールギャングに迷惑かけることになるなんて。オレみたいな下級層の小市民はレールギャングには関わらないことを常に意識して生活を送っている。それを今日オレは破ってしまった。
だからオレはやばいって言ったんだ。そう叫びたくなるのを堪えて目の前の少年に声をかける。ここはB地区なので三日月茶会のテリトリー。とっととズラからねーと。ヤベエ奴に喧嘩売ったな。
「だから言ったろ? トンズラこかねーとって!」
その声に答えたのか少年はホバーボードでオレを掻っ攫った。まったくなんて日だ。
「こういう時には何て言えばいいんだよ?」
オレは少年の背中にボヤく。だが、少年は気にした様子はなかった。逆にこの様子を楽しんでいる節さえある。
「そりゃもちろんウェーイ! アガんじゃん? このシチュ」
どうやらその足に——ホバーボードに自信があるようだった。オレはヤケクソ気味に
「いいや。サイッコーに痺れるね。っつーわけでですよ? 弾幕はオレに任せてくれ。で、オマエは……」
「Real-eyes!オイラの名前は振り切り屋のリ、ア、ラ、イ、ズじゃん」
「お……おう。じゃあ、Real-eyesは安全運転でぶっ飛ばしてくれ!」
「へーい、かしこまっ。ヒューウィゴー」
ビルの階段を一気に滑り上がる。後ろから響くレールギャングの追手が銃声。Real-eyesはホバーボードを傾けて弾丸をかわし、踊り場で急ブレーキをかけた踊り場を直角的に曲がり、そのまま屋上へ。傷んだ防水シート。それが剥がれかけてヒラヒラはためいている。
「エデンが衰退した街でマジでカンシャだな。メッチャ雑然としてて撒きやすいんじゃねえか?」
「そうじゃん。整ってると滑るとこないから。それにこの辺がアパートメントばっかなのも大きいよ」
そういうや否や道を跨いで貼られた洗濯ロープの上に乗り上げてその上を滑る。
「オイラのテクでワンチャン乗り越えてるんで、ヨロシコ!オイラ見ての通りのサイボーグじゃん」
「マジかよ。ホバーボードと一体化とか新世代じゃねーか。マジパネェなオマエ」
サイボーグ。文明時代にナノマシンを取り込んだ人間の末裔だ。体と人工物が一体化して生まれてくるという特徴がある。機械の種類によってポテンシャルも変わって来るピンキリな種族で人によってはネジ一本と融合みたいなどうしょうもないヤツもいる。
で、オレはオリジン種。産まれたままの人類の特徴を受けついでいる。
「でも、アンタらレッドエヴォルヴあるじゃんかよ」
既にオリジンから進化を遂げたサイボーグやには劇薬。だがしかし、オリジンには一時的に能力を授けるという。
「なあ、オタクらウチらから逃げられるとでも?」
少し下からの声。ロープの滑りながら軋む音。
「ゆっとくけど、アリスちゃんは人形のサイボーグなわけ。上に逃げても、エレベーターしてすぐに追いつけちゃうからムダムダムダぁ!!」
そう言ってアリスは金髪をした小さな人形二つを器用に操ってこちらによこして来た。
人形の手には包丁が握られている。
『ディーがこいつを殺したらお姉様、喜んでくれるかなぁ?』
『ダムがこいつを殺したらお姉様、喜んでくれるよね?』
『『ねぇ!』』
二つの人形はほぼ意味の同じ別々の言葉を放って寄ってくる。
「おお、コワッ! もしかして……人形遊び? アリスって見たところオレたちと大体タメじゃね? タメで人形遊びはヤバいだろ?」
「女の子にそんなこと言っちゃダメ。ほら、怒っちゃったじゃん」
『お姉様は、大人だもん』
『お姉様は、立派なんだもん』
そう言いながら突っ込んでくる人形は手にナイフを持っている。
でも勢力圏外に逃げ込めば……。
「とりま、E地区に逃げてみようぜ」
エデンはA〜Eの5つの地区に分かれてんだよな。地区ごとに治めているレールギャングが違うのだ。アイツらのテリトリーはB地区だから追って来ねえだろ。
「んじゃ、ひらりと華麗にかわして勢力圏外まで行っちゃうね!」
「つか、オレが電磁砲チュドーンってすればマジ反動ヤバくて軽くトべるんだけど」
「いいじゃんソレ……。採用!」
Real-eyesが地面を蹴ってホバーボードを起動させる。その瞬間、オレが親指から放った電磁砲の反動でオレたちは向こう側へと吹っ飛んで行く。
——チュドーーーーーーン。
じゃあな。オレは中指を立てた。顔はドヤ顔だろ……多分な。
「っしゃあ!逃げ切ったぜ!」
「へえ、アンタなかなかやるじゃん。ホバーボードのサイボーグのオイラと電気使いのリンゴ。オレら最強のタッグじゃね?」
「かもな」
こんなご時世だ。助け合って行こうぜ。誰とでもすぐ友達になれるのがオレらエデンの住人のアイデンティティだもんな。
やり切った感満載の笑顔でハイタッチ!パシンッ。
「ウェーイ!」
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どうぞよろしくお願いいたします!
Sky higher(Real-eyes キャラクターソングj
[intro]
いいじゃん、やるじゃん、(ガンバってるじゃん)
いいじゃん、やるじゃん、(ガンバってるじゃん)
Real-eyes キメるぜ ホバボでイケるぜ
(今、何時?) 時間に縛られないじゃん
[Verse rap part]
ウェイ!いい波乗ってる?それとも自分に酔ってる?
合ってる間違ってるとかコマかい事はほっておいてる
ねえ、一役買ってるなんでも上手く行ってる?
なんて、やってんなーって思ってんな?
アがってるっていいってことじゃん
[pre-chorus rap-part]
さぁさぁ、張り切っていきましょう?
じゃあさあ、パリピってことでしょう?
お決まりのことでもオケマルじゃん
自由にトキメキ昂まるじゃん
[Chorus]
青い空を駆け抜けて
白い雲を割っていけ
オイラは何ににも縛られない
肩の力を落として
スリーシックスティー
赤い土埃を上げて
白い光を目指し進め
オイラは何ににも縛られない
未来に進んで
カットバックドロップターン
[Verse rap part]
イェイ!いいコトやってる?それとも自分に迷ってる?
間違ってる正しいとかどうでもいいことは忘れてる
ねえ、みんなでやってる?なんでも楽しくやってる?
なんて、やってんなーって言ってんな?
楽しんでるっていいってことじゃん
[pre-chorus melody part]
さぁさぁ、気分はどうですか?
じゃあさあ、ノリノリってことですか?
お決まりのことでもオケマルじゃん
自由にワクワク高まるじゃん
[Chorus]
緑の丘を走り抜けて
ピンクの花を摘んでいけ
オイラは何ににも縛られない
笑顔になって
スピンアウトスライド
夢を見てるのか現実か
分からないけど気にしないで
オイラは何ににも縛られない
心のままに
フリップフロップホップ
[chorus2]
青い空を駆け抜けて
白い雲を割っていけ
オイラは何ににも縛られない
肩の力を落として
スリーシックスティー
[Chorus]
黒い絶望を割って
黄色い希望を照らして
オイラは何ににも縛られない
真実を見抜け
カットバックドロップターン
[outro]
いいじゃん、やるじゃん、ガンバってるじゃん
いいじゃん、やるじゃん、ガンバってるじゃん
Real-eyes キメるぜ ホバボでイケるぜ
今、何時? 時間に縛られないじゃん
いいじゃん、やるじゃん、ガンバってるじゃん
いいじゃん、やるじゃん、ガンバってるじゃん
Real-eyes キメるぜ ホバボでイケるぜ
今、何時? 時間に縛られないじゃん