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外伝RAPID-BOY is a Dreamy girl

よろしくお願いします。

Twitter:@Arinkoln0719にあらすじ動画のリンクを投稿しています。

合わせてご覧ください

 僕の名前はRAPID-BOY。レールギャング三日月茶会でお手伝いをしている。僕が初めてリンゴくんに会ったのは、まだ僕が小さな女の子だった頃だ。


「さあさあ、オレの芸を見てってくれ!オレに電撃を使わせれば右に出る者はいない!さあ最初はなんだ?」

 彼はそう言ってペンを小刻みに動かす。するとペンが電気を帯びて電撃が形を持ち始めた。

「さあ、鳥さんだぜ!覚えておいてくれ。レッドエヴォルヴはツバサを授ける!」


 そう言って彼がその電気の鳥を空に向かって放つと、それははじけて無数の火花が散った。

「すごい!こんなことができるんだね!」

 僕がそう言うと彼は照れ臭そうに笑った。

「えへへ、ありがとよ。オレの芸を楽しんでもらえたみたいで嬉しいぜ」


 それからというもの僕は暇があると彼の芸を見に来た。それは僕にとって数少ない楽しみのひとつだった。彼は僕にも良くしてくれて、時々お菓子をくれたりした。


「こんにちは、リンゴくん」

「よう、今日はなんの芸を見せようか?」

「うーん、じゃあ宇宙。宇宙がいい」

「うーん、宇宙かぁ。でも宇宙なんてオレ見たことないぜ?」


 宇宙っていうのはこの世界のずっと上の方にある別世界のことで、そこにはいろんな星があって、綺麗な惑星がたくさんあるんだって。でも僕はその時宇宙なんて見たことなかったし空を見上げたってこの世界の空は常に曇っている。


「宇宙かぁ。オレも行ってみてぇ。オレも見たことないけどいいか?」

「うん、大丈夫だよ」

 そういうと彼は不思議な絵を見せてくれた。それは奇妙な幾何学模様の図形だった。

「これは?」

「ああ、これはオレの考えたオリジナルの宇宙だ」


「わぁ、すごい!じゃあ希望って描ける?」

「ああ、いいぜ」

 彼はペンを握りしめると電気の色を青に変えた。そして彼がそれを空に掲げると青い星が浮かび上がった。

「わぁ、すごい!本当に宇宙だ!」

「へへ、面白いだろ?」

 僕はそれ以来、彼との芸を見ることが大好きになった。


「じゃあ、今度は愛を見せて?」

 僕はリンゴくんにそう言うと急に恥ずかしい気持ちになってうつむいてしまった。


「愛か……。愛はわかんねぇよ。オレにも愛を誰か教えてくれたらな」

 リンゴくんにも愛が分からないらしい。僕はなんだか自分だけが大人になったような気がしてなんだか嬉しかった。


 ある日、峯岸という男が彼の元にやって来た。男は彼に向かってこう言った。

「そこの汚いメスガキを追っ払え。推しがこんなキタネエガキしかいないとか我々のブランド力を下げてるのが分からないのか」

 僕はそう言われてすごく悲しかったし苦しかった。僕がメスガキだからリンゴくんの迷惑になってるんだって。


 僕はそれからリンゴくんに会いにいくのをやめた。僕はメスガキをやめなければいけないと思った。

 今の僕じゃリンゴくんの横に立てない。僕は頼もしい男の子にならないといけないってそう思ったんだ。


 僕は髪の毛を男の子みたいに短く詰めた。


「切りすぎちゃったかな?」


 鏡に映る僕は男の子っぽかったけど、女の子には見えなかった。なんだか不思議な気持ちになった。僕は喋り方も仕草も男の子っぽくする様に頑張った。


 男の子として仕事をしようとしてもすぐバレてクビになってしまう。でも、最後に働いたジャンクハンターは自由業だったのでクビになることはなかった。僕はそのお金でまず自分の姿を誤魔化すためにラバースーツを買った。ラバースーツは身体をきつく締め付けてくれる。肩とか腰とか色んなところにサポーターをつけて身体のラインをごまかしてその上から着込むのだ。

 そうやって段々と男の子らしさを追求して行った。


 ある日、僕はヘルメットが必要だと感じるようになった。だって、ヘルメットをかぶることで頭がごまかせるし、髪を隠せるから。

「あら、いらっしゃい♡RAPID-BOY坊やじゃない。どうしたの?」


 僕はジャンク屋にいた。目の前に居るのはI李さんというジャンク屋さんだった。

「あの、僕ヘルメットが欲しいんです。顔を隠せるヘルメットをください」

「うーん、でもどうしてほしいのかしら?」

 I李さんが興味津々な様子で聞いてきた。


「ええと、それは……」

僕は正直に言うことにした。

「僕、男の子になりたいんです」

「どうして?」

「あの、すっごく会いたい人がいて……。その人はストリートでパフォーマンスしてる男の子で、僕はメスガキだから全然釣り合わないんです」

「それはその子が言ったの?あなたの事をメスガキだって」

「ううん、言ってないけど。でも僕は男の子にならないといけないんです。彼のそばにいる大人の人がメスガキはだめだって言ったから。それに彼の横にいて恥ずかしくない大人の男の人になりたいんです」

「うーん、それはあなたにとって茨の道かも知れないわよ。顔を隠すんだもの。あなたが誰か気づかないかも知れないじゃない。それでもやるの?」

「はい、やります」


「そう。じゃあヘルメットを作ってあげる」

 I李さんはそう言って僕にヘルメットを用意してくれた。

「このヘルメットにはあなたの表情をトレスして顔文字を投影することができるわよ」

「わ、すごい!」

 僕は鏡で自分の顔を見る。ワクワクした顔の顔文字が浮かんだヘルメットがあった。

「でも、覚えておいて。あなたの一番大事な気持ちだけは顔文字を表情できないの。それはあなた自身が自分で伝えなきゃね」

「I李さん。僕のヘルメットにどうしてウサ耳があるの?」

「それはあなたがちゃんと女の子だから。あなたは憧れの人のために頑張って男の子になりたいと思ってる。でも、あなたの気持ちは女の子としてその男の子のことがでしょ?」

「うん……」

「なら、わからない程度に女の子としてのオシャレはしなくちゃね。そうしないとあなたはきっとずっと気持ちを素直に伝えることができないわ」

 I李さんのいうことは難しくて分からなかったが、僕よりもっと壮絶なジェンダー経験をしている彼女のことだ。多分何か意味があるんだろうと思った。


 ある日、僕は男の子としてリンゴくんのパフォーマンスを見に行こうと思い立った。

「はい、どうもー!BOW-WOW言います。よかったら覚えたってください。今日はみんなにレッドエヴォルヴゆうもんを紹介したい思うとります」

「こう見えてもですね。ドッペルゲンガーゆうて僕ら一人なんです」

「そうそう、レッドブエヴォルヴがあれば二人になれるゆうこっちゃ」

 そこにはリンゴくんではなく知らない男の子が立っていた。彼の芸はリンゴくんよりも面白かった。どうやら古典芸能の一つで漫才というらしい。でも、リンゴくんのパフォーマンスの方が何倍もみたかった。でもリンゴくんはそこにはいなかったのだ。

「お兄さん、どうでっか?レッドエヴォルヴでっせ」

 僕は少年にそう声をかけられたが、答えずにその場を離れた。


 僕はリンゴくんがいないことにショックを受けて、その場を離れた。僕はリンゴくんがどこに行ったのか知りたかった。僕は彼のパフォーマンスを見ることができなかったから。

 僕は路地裏で一人しゃがみ込んで泣いていた。

 そんな時に声をかけてきたのはアリスだった。

「ねえ、アンタのヘルメット耳がかわいい。ウチが飼ってあげる」

 彼女は僕にそう語りかけてきた。僕はその時、彼女がちょっと怖くて後ろに後ずさった。

「はぁ?なんで逃げるワケ?ウチが飼うって言ってんだ飼われろよボケナス!」

 って言いながら僕の首を思いっきり締め上げた。

「お嬢様、そちら様が死んでしまいます。それ以上は」

 サイラスが止めに入る。

「コレが逆らうからいけないの。ウチの名前じゃダメなワケ?名前じゃなくて金かよ!ほら、こんな端金くれてやるからアンタはうちのモンな」

 僕は彼女に突き飛ばされて尻もちをついた。


「あの、僕は……」

 僕はその場から逃げ出したかった。サイラスは彼女を落ち着かせようと彼女のそばに近づくが、彼女はサイラスを睨みつけると威嚇するように僕に向かって手を向けた。

「近づくな」

彼女がそう言い放つと、彼の手はピタリと止まった。そしてそのまま彼女は僕に近づいてきた。


「あんたさぁ。ウチが三日月茶会のボスって分かってる?アンタみたいなチビウサギ、どうせすぐノタレるんだ。ウチに頭差し出して這いつくばってりゃペットとしてずっと生きてけるワケ」

「お嬢様、言いたいことはお済みですか?申し訳ありません、お嬢様は常にご乱心しておいでなので。いずれ私の方からお詫びを届けさせます」

サイラスはアリスにそう告げた。


「サイラス!アンタウチを馬鹿にしてるワケ?アンタみたいなカス、クビよ」

「よろしいのですか?お嬢様。私がいなくて何ができるのでしょう。着替えはどうされるのですか?食事は?」

 僕は二人を見ていておかしくなってしまった。彼女の発言一つ一つがすごく面白かった。先程まで怖いと思っていたのが急に滑稽に感じられたのだった。

「僕はジャンクハンターのRAPID-BOY。ジャンクハンターとしての仕事の範囲内なら僕は君の手伝いができると思う」

 僕は彼女にそう言った。彼女は僕の顔を睨みつけた。そしてサイラスの方を見て、こう言った。

「なんでお前が言うワケ?」

「お嬢様、彼は立派なジャンクハンターです。彼はプロとしてクズなお嬢様とも関わっていくことを決意されたのでしょう」

 僕は二人とは仕事の範囲内で付き合うことにした。彼女は明らかに僕に敵意を持っていたし、

彼女は僕の首から手を離した。僕は慌てて彼女から離れて後ろに下がった。

「チッ」

彼女は舌打ちをした。そして僕に向かって吐き捨てるように言った。

「では、あなたはこれから当家のジャンクハンターとして雇用しましょう。これからよろしくお願いしますね」

 僕はサイラスの言葉にうなづいた。

 こうして僕はアリス・ヴィヴィッドに雇われることになったのだ。でも、それはリンゴくんが見つかるまでの話だ。もし彼が見つかったら僕は彼と一緒に行く。僕はライフルを担ぎ上げてアリスと共に歩き出した。

明日から2章が始まります

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をしたうえで、本作を読み進めていただけると幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします!

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