15話 Why is a RAVEN like a writing desk?
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オレたちは中心に急ぐと二人の人物が向き合っていた。一人は執事服を着た男性、もう一人は白衣の少年医。前者がサイラスで後者がチルアウトだろう。
サイラスはシルクハットの煙突から煙を吐き出しながら戦っているようだ。
ここはB地区にある大きめの交差点。元々は一階に店舗が入るアパートメントだった廃墟のが並んでいる。いつもはそこそこに人がいるのだがゲームフィールド化しているため人がいない。
「チルアウト様、中々のお手前でございますね」
サイラスはそう言いながら拍手をする。動きは優雅だ。
「まあ、できて当然だよね」
チルアウトは余裕のある表情で、サイラスからの攻撃を避ける。そしてメスを投げた。
刃はサイラスのシルクハットを貫いて壁に突き刺さる。
「これも避けるとは流石でございます」
サイラスはシルクハットを取ると帽子の煙突から蒸気を吐き出して煙幕にする。
「ええ、実に楽しゅうございます。ああ、なんと言う愉悦、快楽! こんな姿お嬢様方には見せられますまい」
サイラスは舌舐めずりをした。
「サイラスさん。あなたは戦闘狂なんだね」
チルアウトがそう問いかける。
「ええ、私めは頑丈と高速移動が得意な蒸気機関車のサイボーグでございます。あなたのような方のお相手をすると、もうボイラーのお湯が滾ってしまって」
サイラスはシルクハットを脱ぐとこちらに向かって一礼をする。オレはドキッとした。
「ねえ、もしかして隠れているの気づかれているんじゃん?」
「そうかもしれねえな」
オレはReal-eyesにそう答えた。
「チルアウト様、次の方がお待ちですので貴方にはここでご退場いただきたく存じます」
サイラスはシュウシュウと音を立てながら手に持ったレイピアでチルアウトに攻撃する。
チルアウトは透明化して避けるとメスを投げた。
しかしサイラスはそれを予測して避ける。
「なあ、Real-eyes。あの戦闘に加わる気力ある?」
「ないじゃん。サイラスさん煙幕貼ってるし、オイラ煙幕と相性悪いじゃん」
「まあ、そうだよな」
Real-eyesの弱点の一つは視界が塞がれることだ。彼は自由に飛び回ることができる反面、その感覚を視覚に頼っている。そのせいで視界を奪われると飛べなくなるのだ。
「Real-eyesは巻き込まれる前に先に行け。オレはもう少しサイラスさんたちの戦いを見てから行く」
「OK!」
Real-eyesはそう言うとホバーボードで飛び上がるとゲームエリアの中心に向かっていた。
「チルアウト様、楽しみましょう。我々はこのような場において不釣り合いなほどに価値ある存在です」
サイラスは剣を振り上げるとチルアウトに向かって切りかかる。
チルアウトはそれを透明化して避ける。
「まぁ、勝手に盛り上がってればいいよ。僕はその間にあなたのことを退場させるから」
チルアウトはやる気のなさそうな素振りでメスを投げる。
「無論、そのつもりです」
サイラスはレイピアを振りかざした。
「さて私も自分の蒸気で咽せないようにマスクをかぶりましょうか」
「あなたはずいぶん古風なディテールが好きみたいだね。そのマスク、カラスの顔みたいで興味深いね」
「ええ、私自身も旧時代の割に早い時期の技術由来なので、その頃の文化は気に入っているのです」
サイラスがつけたのはペストマスクと呼ばれる種類のマスクだった。長さ15センチのクチバシのような形に、ゴーグルと呼ばれるガラス製のレンズがついている。
「ペストには意味はありませんでしたが煙には効果的なのですよ。さて、そろそろ本気を出すといたしましょうか」
サイラスがそう言うと煙幕が巻き上がり視界を覆っていく。チルアウトは素早く煙から逃げ出した。
チルアウトの視界には煙が舞い上がり、その中から現れたサイラスの攻撃を避けた。
サイラスは容赦なく追い詰める。蒸気に紛れて冴えるような剣筋が混じる。
チルアウトは姿を隠しながら、時折メスを投げて応戦するがサイラスはものともしなかった。
オレはサイラスはカラスみたいだなと思った。カラスとは旧時代からずっと街に生息している生物で頭が良い鳥だと言われている。
彼は全身黒い執事服を纏っているし、マスクもペストマスクというカラスのモチーフの入ったデザインだ。
「はぁ、面倒くさいなぁ」
チルアウトはため息をつくと、煙から飛び出した。そしてメスを投げる。しかしそれはサイラスによって叩き落とされた。
「なんかサイラスさんってカラスみたいだね。狡猾さを持つところとか……」
どうやら、チルアウトも同じことを考えていたらしい。
「ええ、確かにそのように見られることもありますね。では、私がカラスならチルアウト様は書きづくえでしょうか」
チルアウトは淡々と答える。
「うん、アリスの一節だね、良いセンスしてるよ。確かに僕はインドア派の知恵ものって感じだもんね」
チルアウトは姿を隠しながら、時折メスを投げて応戦するがサイラスはものともしなかった。
このままではやばいとオレは思った。膠着状態だった。オレが行って何ができるだろうか。そう考えていた時、チルアウトが動き出した。
「ねえ、リンゴくん。流石にそろそろ出てきたら?」
「いや、なんか出にくくてさ」
「君の力が必要なんだよね。まあ、相手の煙幕を這わせて電気を届けるんだけど……」
「チル、そんなことができんのか?」
オレは驚いて言った。
「可能なはずだよ」
オレたちはサイラスの動きをかわしながら会話をする。
「サイラスさん、わりいけどオレ、チルとバトンタッチするわ」
「うぉいー!」
オレたちはハイタッチをするとオレのまわり煙が晴れた。
「ええ、いいですねぇ。最高でございます! こんなゾクゾクする経験。快感! ウェルプレイドでしか味わえません!」
「さて、やるか」
オレはレッドエヴォルヴを飲むとチルアウトに言われた通り煙幕に向けて電気を放った。それはすごい勢いで放たれた。水蒸気は波だって膨張したようだった。
「私のコントロールが効かない! 蒸気を通じて電気を送り私のボイラー内の水を沸騰させたのですね」
煙幕の中からものすごい勢いでサイラスは飛び出してきた。
「ですがここで一太刀入れて差し上げましょう」
サイラスは警笛を上げながらレイピアを構えてこちらに向かってくる。
オレはサイラスの攻撃を避けるために電磁場を形成させて飛び上がる。
「へぇ、磁力ですか」
サイラスは驚くように言った。
「そうそう。電気ってにはいろいろ応用が効くんだぜ?」
しかし、サイラスはそれを見越してレイピアを振り上げた。
「くそっ!」
オレはレッドエヴォルヴの力で電気を放ってサイラスの剣を弾き飛ばした。サイラスはそのままコントロールを失って建物へと突っ込んでしまった。
「ふぅ、危なかったぁ」
オレが安堵していると
「リンゴくん、まだだよ。気を抜かないでね」
チルアウトの声がした。
「ん?」
見るとサイラスが煙を上げて飛び出てきた。
「はい、まだですよ。私は頑丈が取り柄でございまして」
サイラスの執事服にはほつれがあったが、体自身には傷一つついていないようだった。
「スピード出るタンクとかチートすぎだろ」
サイラスは警笛を鳴らしながら加速した。それはまるで黒い風のようだった。
「おいおい、マジで言ってるのかよ」
オレが呆れていると、チルアウトに首をつかまれた。そのままサイラスが突っ込んでくる。オレはその攻撃をギリギリで回避しながらレッドエヴォルヴの力をさらに引き出した。
「彼を止めるにはボイラーの水を全て蒸発させるしかないよね」
「さっきの蒸気に電気を流す作戦はそれを狙ったのか?」
「そうだけど、目算が甘かったみたいだね。まだボイラーに水が残ってる。君が電気を使ってボイラーに直接ダメージを与えるのはどうだろう。それで水が沸騰して蒸気になって逃げ出すはずだ」
チルアウトはサイラスの方を見た。
「大丈夫、僕を信じてくれてもいいよ」
チルアウトはそう言った。
「分かった」
オレは覚悟を決めた。サイラスは警笛を鳴らしてスピードを上げる。オレは今のままじゃ追いつくことができない。
「よし、レールガンを使おう」
オレは指を構えて、ポケットに確保してあったワッシャーをレールガンの弾に変えて放った。その弾がボイラーに当たった瞬間、周囲の空気が揺れた。そして次の瞬間、大量の蒸気と水を撒き散らして爆発した。オレはその爆風に吹き飛ばされそうになった。
「うわぁぁぁぁ」
オレは思わず声を上げた。
「なにこれ、怖っ」
チルアウトも動揺していた。そしてサイラスは蒸気を爆発させながらそこに座り込んでいた。
「や……やったのか?」
「そうみたいだね。僕たちの勝ちみたいだ」
しばらくするとサイラスはゲームオーバーの文字が現れた転送陣によってどこかに飛ばされてしまった」
だが、オレたちには勝利の余韻に浸っている暇はなかった。ゲームエリアの壁が狭っていた。オレたちは慌ててフィールドの中心を目指すのだった。
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