13話 CHALANGE LETTER
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——ピュンっ
何かの音に目を覚ました。
「狙撃だ!」
飛び起きて陰に隠れた。チタン製のベッド。いざという時に盾にできるんだよな。でもマジで使うとは。壁はコンクリだから穴が開く心配はないはずだ。
「お兄ちゃん!?」
オレはチェリーを引き寄せる。そして頭をおさえつける。
「頭を低くしてろよ」
窓の外には電柱が一本。
「狙撃したのは一体誰だ?」
その時、向かいのビルに紫色の何かが動く。アイツか……。
オレはレッドエヴォルヴを煽る。何かねえか?工具箱からナットを取り出す。
——チュドーン!
撃ち出された弾丸は空気を切り裂く。あの紫ヤローに当たったか?
だが、
「あれはトラムの結界か?」
紫色のヤツは結界のおかげで無傷。チェリーは必死こいて頭を下げている。
「おい、チェリー、メンバーに連絡はとれるか?」
「でも、誰に電話すれば……」
チェリーは突然のことに混乱しているみたいだった。
「うん、チルくんに電話してみる」
チェリーは携帯端末を取り出すとチルアウトに電話をかける。
『どうしたんだい?』
「今、窓の外から狙撃されてるの。助けて」
『落ち着いて。誰かから恨まれることって2人はしてるの?』
「私は留守番ばっかだし全然ないよ。お兄ちゃんは?」
「結構方々に喧嘩売ってるから心当たりはありまくるが……。相手がレールギャングってなるとアリスぐらいしかいねぇ」
『相手はレールギャングなんだね? じゃあその銃撃は君たちの命を狙ったものじゃないと思う』
「じゃあ一体どんな理由で……」
『打ち込まれたのは殺傷性のある銃弾じゃないと思う。文通弾じゃないかな』
文通弾とは録画できる弾丸型端末だ。着弾とともに勝手に開かれて内容が表示されるらしい。
「つまり、俺たちにメッセージを伝えるためってことか?」
『おそらく、相手からの手紙が落ちているはずだよ』
「そういうことなら、確認してみようぜ」
チェリーはカーディガンを羽織るとベッドの周りを探す。ベッドの下を覗くと弾丸型のホログラム端末が転がっていた。
「お兄ちゃん、あったよ」
チェリーがその文通弾を拾い上げるとアリスの姿が浮かび上がった。
『サイラス、もう話していいわけ?』
『どうぞお嬢様。カメラは回っております』
アリスの声とそれに答えるサイラスの声が聞こえてくる。
『これを読んでいるってことはキチンと開けたってことね。お姉さんであるアリスちゃんがメッセージを送るとかマジレアだかんな! 覚えとけざぁこざぁこ』
『お嬢様本題を。尺が足りなくないます』
『ウチ、オタクらにウェルプレイドを申請しといたから。逃げんなよ!オタクらはジャンクに群がるドライバーバグなわけ。せいぜいジャンクの上で電動ドライバー回して金属齧ってればい……』
——ブチッ
アリスが喋っている途中でホログラムは消えてしまった。
「切れたな」
「今ので何がわかったの?」
「ほとんど罵詈雑言だったけどウェルプレイドを申し込まれたってのはわかったぜ」
『オッケー。僕もこれからトラムに向かうよ』
「ああ、10時に約束だから他のメンバーが来たら相談しようぜ」
オレたちは急いで家を飛び出す。
「なあ、チェリー。ウェルプレイドってレールギャング同士が戦うゲームだよな?」
「うん、そう。なんか、幾つかルールがあるみたい」
オレたちは走りながら状況を確認する。
「まず、みんなと合流しようぜ。細かいルールについての確認はそれからだ」
オレたちは急いでみんながいるであろうトラムを目指す。
そこには既に先客がいた。
「お〜い! チルから聞いたけどウェルプレイドだって?」
Real-eyesだ。
「ああ、どうやらそうみたいだ」
「取り敢えずトラムの中入ったら? ね」
「そうだな」
オレとチェリーはトラムに乗り込むと席に腰掛ける。
「みんなどうしたの? 血相変えて」
TAKE-THR3Eは不思議そうな顔をしている。
「みんな。俺たちにウェルプレイドの挑戦状が届いたんだ」
オレが説明するとTAKE THR3Eが胸の前で腕を組んだ。
「ウェルプレイド。相手チームはどこなの?」
「まあ、案の定というかなんというか、三日月茶会だよ」
「なるほどねぇ」
TAKE-THR3Eは頷いた。
「チェリー、ルールみたいなのがあるんだろ?」
「うーん、よくわからないよ。トラムの声が聞こえる気がするって言っても感覚的に分かるだけだし」
その時トラムが自動で動き始めた。チェリーはびっくりして運転台の様子を見に行く。
「ねえ、見て。コンソールに文字が表示されてる」
「チル、読み取ってくれ」
「ふむ、なるほどね。まあ、簡単に言うとバトルロワイヤルのゲームってことだよ」
チルアウトはそう言ってルールを説明してくれた。
どうやら、ゲームエリアが設定されておりその中で生き残りをかけて戦うらしい。
「あたしの知ってるルールと同じね。だったら、敵チームに殺されても死なないはずよ」
「うん、そう書いてあるよ。それに、僕たちがかけるのは進化ポイント一つ分らしいね」
「進化メーターってあるけどこれのことか?」
「うん、そうってトラムが言ってる気がする」
「更に言うと、ゲームエリアは時間が経つにつれて小さくなっていくらしいね」
なんでも開始時点の規模は1キロメートルほどで時間と共に縮んでいくようだ。
「これって普通に場外とかありえねえか?おっかねえな」
「だから、僕たちは常にゲームエリアの中心に近づくようにしなきゃならないんだよ」
「敵チームも同じじゃん? それなら、場外に追いやればいいでしょ」
「それも一つの手だけど、敵チームもそう簡単にはやらせてくれないよ。それに、ゲームエリアの壁は迫ってくるしうっかり場外って可能性もあるよ」
チルアウトの言う通りだ。このゲーム、一見敵を倒すことに集中してれば良さそうだがエリアが狭まってくると生き残りをかけた戦いになるわけだ。
「だから、早めに敵チームの数を減らしておく必要があるんだよ」
「なんか、すげえ楽しみになった来たぜ!」
トラムはどうやらB地区の広場で停止したようだ。
目の前には三日月茶会のトラムが停まっておりそこにはアリス、サイラスともう一人紫のヘルメットを被った少年が立っていた。
紫の猫耳ヘルメット、紫の縞模様のラバースーツ。佇まいはRAPID-BOYにそっくりだ。
オレたちは三日月茶会と対峙する。アリスは高笑いしながらこちらに向かってくる。
「お久しぶりじゃない。オタクら、ちゃんとウェルプレイドのルールは理解できたたわけぇ?」
相変わらず鼻につく喋り方だ。
「アリス、僕はちゃんと仕事をしたよ。だから彼らはここに来たんだ」
「こぴー★きゃっとはお利口さんね。あのチビウサギとはダンチなわけ」
そう言ってアリスはヘルメットを乱暴に撫でる。
「あうあう」
彼はちょっと苦しそうな声を上げた。
「僕の名前はこぴー★きゃっと。アリスのメッセージ、僕が届けたんだよ」
(^_^)
こぴー★きゃっとと名乗った少年はにっこりとした表情を浮かべた。
「なあ、おまえはRAPID-BOYの兄弟か何かなのか?」
「それはナイショだよ」
こぴー★きゃっとは人差し指を立ててヘルメットに当てる。
「RAPID-BOYはまだ来ないわけ?」
「アリス様、RAPID-BOY様はいらっしゃいませんよ。彼は正式なメンバーではありませんのでゲームエリアにいらっしゃれません」
「サイラス、金でどうにかしろよな。ウチはRAPID-BOYとこぴー★キャットの両方に囲まれていたいわけ」
「アリス様、RAPID-BOY様は私たちの傘下ではありませんので難しいかと」
「チッ、使えねえな」
アリスは舌打ちをしてこちらを睨みつける。
「何、ボサッとしてんの? さっさと行くわけ。こっちはあんたらを捻り潰さないといけないんだから」
こぴー★きゃっとは肩を竦めてため息をついた。
「なあ、人数が違うけどいいのか? 人数違ったらフェアじゃねえだろ?」
「はあ? 何言ってんのあんた」
「いや、だって、三日月茶会が3人で、こっちは5人なんだぞ」
「リンゴ様問題ありませんよ。人数が足りないチームにはNPCが代理で参戦するルールですから」
「電気ヤロー、舐めてるワケ? そっちがウチらのRAPID-BOYの邪魔してんじゃない」
アリスがそう言った瞬間オレたちはワープ光に包まれた。
「転送が始まったわね。閉じこめられたりしないように祈りましょ」
TAKE-THR3Eはそう言うとパイプに火を付ける。
「じゃあ、行くぞ。みんな、気をつけてな」
リンゴが立ち上がると仲間たちに声をかけた。
「うん、お兄ちゃん。私も頑張るよ」
チェリーも笑顔で返した。
「僕もだよ。Real-eyesくん、TAKE-THR3Eさん、よろしくね」
チルアウトも仲間たちに挨拶した。
「任せるじゃん。オイラたちは最強のチームだからな」
Real-eyesは自信満々に言った。
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