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12話 Be AVOID of KNOCK OFF!

よろしくお願いします。

Twitter:@Arinkoln0719にあらすじ動画のリンクを投稿しています。

合わせてご覧ください

オレたちはしばらくして大森林にあるソーラーの花畑に到着した。

「よし、この辺りがいいと思うわ」

「おお、じゃあこの辺で採集と洒落込もうぜ」

 目の前には大きな花、花、花。ソーラーの花畑が広がっている。すげえ背が高くて花っていうより木だな。

 頭上まで伸びる茎、黒光する身長程の花びら、太陽光をキラキラ反射している。花の形は向日葵のようだ。


「ねえ、もしかしてあの一枚一枚がソーラーパネルなの?」

「ええ、そうよ♡ 今やほとんどのソーラーパネルはソーラーの花由来のものなの。でもこうやって生えてるのね」

 チェリーもI李も興味深げだ。

「リンゴくん、何で木じゃなくて花って言われるか理由を話す?」

 チルアウトは淡々と聞いて来る。

「いや、いい。マジ頭痛くなりそうだしな」

 オレが断るとチルアウトは小さくクスっと笑った。バカにすんなよな。


「とっととロープとペンチ用意しようじゃん。オイラはホバボあるけどみんなはよじ登らなきゃでしょ?」

 チルアウトは背負っていたリュックサックから何やらゴソゴソ。出て来たのはザイルという種類のロープとカラビナのセット、それからペンチ。

「じゃあ、Real-eyes、ひとっ飛びコイツをくくりつけて来てくれ」

「かしこまっ」

 そう言うとReal-eyesはソーラーの花畑の外周を旋回、上昇していく。

「よっと、とーちゃくっと!」

 Real-eyesは手頃な花を見つけると茎にロープを結び付けて降りてくる。


「よっしゃ、みんなはロープを伝って登ってこいじゃん」

 オレたちはロープを結び付ける。よしやったろうじゃねえか。花畑を登り始めた。空中作業はペアでするのがセオリー。今回のはオレとReal-eyesのペア。チェリー、チルアウト、TAKE THR3Eは3人組みだ。

「もう少しで登れそうじゃん?」

「っと、おい、Real-eyes! 萼のとこについたぜ」

「オッケー、それじゃあオイラは花びらを押さえてるからペンチで根本を折っちゃって!」

 オレはロープから手を放す。花の中心部の萼の中にある花びらの根本。ペンチを当てて……。


「せーのっ!」

 勢いをつけてもぎ取ろうとした瞬間。

「うわっ!」

「Real-eyes! 大丈夫か?」

 板のように固かった花びらがぐにゃりと曲がる。すぎに、Real-eyesに絡みついた。


「何が起こったんだ?」

「ソーラーの花モドキじゃん。ソーラーの花に擬態して人を食べるヤツ」

 ソーラーの花モドキ。ジャンクハンターの初心者殺しと言われる存在だ。ソーラーの花は初心者向けだ。戦闘をせずとも手に入るジャンク。だが、間違えてモドキの花びらをとろうとすると締め殺されて溶かされる。マジ自然て怖いのな。

「Real-eyesくん、大丈夫!?」

 別の花からチェリーの声が聞こえる。

「ちょっとやらかしたじゃん!」

 Real-eyesはホバーボードのモーターを噴かしてもがいている。

 苦しそうに顔が歪んでいる。

「ちゃんと花びらがちゃんとソーラーパネルの柄になってるか確認しなかったの?」

 ソーラーの花はソーラーパネルなので紺色に光輝く四角い模様が花びらに並んでいる。だが、モドキは四角い模様がところどころ繋がっている。んなんわかるかよ!


「モーン姐さん。コイツ、擬態能力が高かったんだ。ほぼソーラーの花じゃん」

「しっかりなさい。経験者でしょ」

「そう言われると面目ないじゃん」

「でもまあ、リンゴくんが花びらに電気を流せば解決だよね。ほらこの花びらって電気を流すと柔らかくなる性質らしいし」

 チルアウトが冷静に解決方法を提示してくれた。

「チル、助かるわ! でも、空中でレッドエヴォルヴ飲むのかよ。安心できねぇ」

 オレはそう言いつつも腰に下げていたレッドエヴォルヴを取り出す。

「いてててっ。はやく飲んでよ!」

 オレは思い切って缶の中身を煽る。そして、飲み込んだ瞬間に湧き上がる高揚感を感じた。

「きた来たキタ! Real-eyes、今から電撃を放つぜ」

「はいよ」

 オレは全身に電流を纏う。そして、電気を花びらの根本に放射する。

 すると、花びらは急に柔らかくなっていく。

「うおおおお!」

 オレは電気を流したままペンチで花びらを切り落とした。

「はあ、死ぬかと思ったじゃん」

 Real-eyesは助かったとばかりにホバーボードから降りて一息つく。


「でも、オレたちの方は収穫ゼロだぜ? ソーラーは足りるのか?」

「それは大丈夫。欲しいパネルの数は2枚だけだからチルアウトたちがなんとかしてくれるじゃん」

「じゃあ、また別の花に登るか?」

「いや、オイラたちにはやることがある。今回は今までにないほど激似のモドキのせいだったわけじゃん。警告板を作らないと」

 警告板というのは危険な発見があったときに、他のジャンクハンターのために作る看板のことだ。

「まず平らにして、コイツの花びらの柄が見えるようにして」

 オレはチルアウトに言われた通り曲がってしまった花びらを平らにする。


「ふーん、興味深いよ。レジンの一種でできてるんだね。強度もすごい」

 チルアウトがいつのまにか地上に降りてきていた。背中にはソーラーパネルがあって1枚目を回収できたらしい。

「リンゴくん、ちょっと通電してみてくれる?」

「わかった」

 オレは言われたとおり、モドキに電気を通す。すると、ソーラーの花モドキは柔らかくなって丸まっていたのを段々と開いていく。


「Real-eyesくん、これも結構素材として使ってるんじゃない? 例えば、バスタブとか」

「チルアウト見ただけでよく分かるじゃん」

「なんとなくそうじゃないかなって思ったんだよね。まあ、軽くて丈夫で電気通さないものにはピッタリの素材みたいだし」


 I李はその様子を興味深そうに眺めながら、

「ねえ、私がデザインしてあげましょうか♡サービスしとくわよ」

「マジで? ありがたいじゃん」

 そういうとI李は腰から下げていた金色のスプレー缶を取り出してソーラーの花モドキの花びらに『Be AVOID of KNOCK OFF!』と書いていく。

「もう少しで描き上がるわ」

 I李がそう言うとスプレーでちょっと書き足して完成させた。


「I李がいてくれて助かったわ本当。サイコーにクールじゃん」

「なあ、I李。オレたちと来ないか?」

 オレは前々から考えていたことを口にした。


「え、どうしたの急に? 私を誘うなんて」

「いやさ、お前が絵を描くのを初めて見た時にビビっと来たんだよ。お前と一緒にレールギャングできたらぜってぇ楽しいって」

 I李は面食らったような表情を浮かべながら言う。

「それはありがとう。でも、ごめんなさい。実はね、私には推しているチームが別にいるの」

 そうか……。でも予想はできたけどな。推しチームがあってそのチームを応援しているなら仕方ない。おそらくそのチームは……

「あら♡私の推しチームが気になるの? 私の推しはアルコイリスよ」

 やっぱりそうか。アルコイリスは多様な人たちで形成されているチームらしい。例えばリーダーのマクロファージは分裂で自分の分身を作り出して戦う。


「ウィルスのミュータントは本当に強いって言われてるよね。始祖は戦争目的で作られたとか」

 この世界のミュータントは何かの目的を持って作られた場合が多い。

 自然なままの人間であるオリジン、ナノマシーンに勝手にデザインされるサイボーグ。こんなに多様な人たちがよくエデンで暮らしてるよな。

「まぁ、エデンは人間が住める最後の楽園だからね。後がないと人って協力するんじゃないかな」

「確かにな。オレもみんなと出会わなければこんな生活は出来なかっただろうし」


「あら、どうしたの?」

 そう言って花から降りてきたのはTAKE-THR3Eだった。

「リンゴちゃんから猛烈アタックを受けたけど私がごめんなさいしたってだけ♡」

「I李、待てよ。その言い方はおかしいだろ?」

 I李のボケに対してツッコミをいれる。それでも、I李はオレらのことをビジネスパートナーとして支えてくれると言ってくれた。本当にいいヤツだ。


 オレたちは警告板とパネルをトラムまで運んだ。そして、トラムを発車させる。

「そろそろ一旦お家に戻ったほうがいいんじゃない? 私眠いし」

 チェリーがあくびを噛み殺しながら言った。

 エデンは治安が悪い。だから、留守にすると物が盗まれたり誰かに住み着かれたりする。

「ああ、そうだな。ていうか、オマエらも自分の家見に行かなくていいのか?」

「オイラは大丈夫かな。兄弟メッチャいるし、家はボロいけど何とかなるよ」

「あたしは友達のところをわたり歩いていたから、荷物もないのよね」

 どうやら、TAKE-THR3Eは定住してないらしい。

「僕も休みたいよ。徹夜で戦って冒険して相当疲れているはずだよ。多分だけど、アドレナリンのおかげで冒険できただけだよ」

 チルアウトはそう分析した。確かに体は疲れてるかもな。

「つってもオレ、今眠くねえだよな」

「お兄ちゃん、ダメだからね。ちゃんと寝ないと倒れちゃうんだから」

 チェリーがそう言ってオレに怒ってくる。


「だってさ、愛されてるじゃん。お、に、い、ちゃん」

「んだよ。Real-eyesテンションおかしいぜ?」

「頭がぼぉっとする。徹夜明けのテンションというやつだね。まぁ、ゆっくり休んで再集合すればいいんじゃないかな」

「そうだな、チェリーお前が一番疲れてると思うから早く帰って休もうぜ。みんな、明日の10時にトラムでいいか?」

「ええ、それで構わないわ」

「オイラも大丈夫だよ」

「僕もそれで問題ないよ」

「じゃ、解散な」

 オレは家に向かって歩き出す。

 そして、一旦家に帰るとすぐベッドに倒れ込むのだった。

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をしたうえで、本作を読み進めていただけると幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします!

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