14話
(ちょっ!? いきなり何するんだよ!)
彼がそう思うと同時に短剣を振り払うように斬り上げた為か、相手は後ろへ
弾き飛ばされる
(この短剣すげぇ・・・俺にはこんな腕前なんてないのに)
そんな事を考えつつも次の攻撃を警戒すべく相手の動きを注視していた
騎士は表情こそ兜によって窺えないものの、身に纏う漆黒の全身鎧からは
禍々しい気配を漂わせており明らかに殺意を彼に
向けていることが分かる
騎士は弾き飛ばされた状態から受け身を取り、体勢を立て直すと
今度は体当たりするような勢いで彼に襲いかかってきた
「ひぃぃぃぃ!!」
短剣のような形状の武器を横薙ぎに振るうと、鋭く尖っている切っ先から、
赤黒い液体が飛び出した
それはまるで血液のような粘液であった
騎士はその血塗れの粘液に正面から突っ込むと、その勢いのまま
粘度の高い液と共に後方へ飛び退きつつ、空中に足場でも作るかのように
一度着地し再度飛びかかってくる
(なんだ今の!?)
彼は驚きながらも次の攻撃を予測しつつ、短剣を振り払った
今度は先程よりも少量ではあるが、赤い液体が空中に飛び散る
強酸性の効果が付与しているのか、飛び散る中を突っ込んできた騎士の
全身から煙を上がる
それを物ともせずにそのまま突っ込んでくると剣を振りかぶった
ガキンという鈍い金属音と同時に彼の体が吹き飛ばされる
(ぎゃぁあ!何か飛ばされた!?)
どうやら騎士が剣を叩きつけた衝撃によって、彼は体を半ば
強引に弾かれたようだ
空中で受け身を取ると、ゴロゴロと転がりつつ体勢を整え再度身構える
『ネクロマンサーセット』装備品一式で身を固めているが、どうやら
彼が思っているほど軟そうなものではなくかなりの防御性能があるようだ
そうでなくては、今の一撃で死んでいる事だろう
またその装備のためか身体能力が上がっているのたが、彼は
今の所気付いてもいないようだ
(取りあえず距離をとる!)
彼はバックステップで素早く後方に下がると、牽制するかのように
闇夜と炎のように妖しい輝きを放っている短剣を再び横薙ぎに振るった
突っ込んでくる騎士に再び、強酸性の効果が付与していると思われる
赤い液体が飛ぶ
騎士は先程と同様に盾で弾き返そうとするが、血飛沫を上げながら
大きく後ろに弾き飛ばされてしまった
(よし!この調子でいけばなんとかなるかもしれないな)
彼はそう思ったものの、直ぐにそれは間違いだったと思い知る事になった
騎士はゆらりと立ち上がった
(何であれだけのダメージで平然と動けるんだよ!)
彼は震え上がりつつも、短剣を構えた
再び突っ込んでくるかと思われたが、騎士の全身を包んでいた漆黒の鎧が
ボコボコと膨れ上がったかと思うと一気に弾け飛んだのだ
(なんかグロい・・・)
彼はそう思うも気を抜かずに相手の動向を注視していたが、変化は
劇的であった
騎士消え失せていたからだ
彼はほっとして力を抜いた時、脳内で言葉が響いた
『英霊召喚陣解放・・・英霊名:アレス』
「・・・ナニソレ」
彼はそう思いながら思わずポツリと呟いた