表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ひゃっくり黒魔法

 王国の支配を目論む魔女は、王様を倒すために黒魔法の本へ手を出した。


 黒魔法とは、自分の利益のために他人に害を与える魔法で、どんな欲望もすぐに叶う便利な道具。……重い代償がなければ、そう言いたいところだ。


 魔女が手に入れた黒魔法の本には、「しゃっくりを百回すると死ぬ」魔法の手順などが書かれていた。


 まず最初に、魔女は「しゃっくりを百回すると死ぬ」魔法を王様にかけた。しかし都合の悪い時に限って、王様はなかなかしゃっくりをしてくれない。


 次に、魔女は「一日一回必ずしゃっくりをする」魔法を王様にかけた。しゃっくりの数はほんの少し増えたが、このままだとあと百日はかかりそうだ。


 そこで、魔女は「お菓子を食べるたび一回しゃっくりをする」魔法を王様にかけた。一方、王様はお菓子を食べているところを騎士に止められる。騎士は王様が魔女に黒魔法をかけられていることに気づいたのだ。しかし王様は機嫌を損ね、騎士がいなくなると騎士の悪口を言い始めた。


 そこで、魔女は「悪口を言うたび一回しゃっくりをする」魔法を王様にかけた。邪魔な騎士、止まらないしゃっくり……王様が悪口や文句を言えば言うほど、悪口もしゃっくりもイライラも止まらなくなる。これで王様は二十回しゃっくりをした。やはり騎士は、王様が黒魔法をかけられていることをついに確信。


 そこで騎士は、王様に水を飲むよう提案した。一方、魔女は「水を飲むたび一回しゃっくりをする」魔法を王様にかけた。すると王様が水を飲んでもしゃっくりが止まるどころか、むしろ止まらなくなった。これで四十回。


 そこで騎士は、王様に驚かされるよう提案した。一方、魔女は「驚かされるたび五回しゃっくりをする」魔法を王様にかけた。すると王様が驚いても、しゃっくりが止まらなくなった。これで八十回。


 つまりあと二十回のしゃっくりで王様は死ぬのだ。事の深刻さに気づいた騎士は、王様が驚かないように静かな部屋へ王様を移動させた後、急いで魔女の元へ向かった。


 魔女は様々な黒魔法を操り、厄介な攻撃を仕掛けてきた。騎士は魔女の攻撃を避けながらも、剣で反撃し、魔女を戦闘不能にまで追い込んだ。魔女は不死身だったため倒すことはできなかったが、魔女が弱った隙に黒魔法の本を奪った。そして騎士は、王様にかけられた黒魔法を解いた。


 弱った魔女はその後、戦いの傷を癒そうとしばらく自分の家で休むことにした。そんなある日、お菓子を食べたり悪口を言ったりしただけで、しゃっくりが止まらなくなった。


 あの日、自分が王様にかけた黒魔法を今度は自分がかけられることになったのだ。その事に気づいた途端、魔女は自分がいつ死ぬのか怖くなった。その恐怖がさらに日に日にしゃっくりを増やした。夜は眠れず、ただしゃっくりだけがずっと響いた。


 そして王様に黒魔法をかけてから何日も経った日の夜、ついにしゃっくり百回目に達し、魔女は死んでしまった。



おわり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ