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【1】ゆがむ記憶 崩れる心

 その晩の仕事は、いたく簡単な駆除作業だ。

 夕食後、俺はシスターベロニカと仕事の打ち合わせをしていた。


「いま本部に照合しているが、まもなく正体が分かるだろう」


 警察から提供された監視カメラの映像からすると、恐らく中型犬から大型犬くらいのサイズの敵だろう。こいつらのおかげで、警邏(けいら)の巡査が二名食われている。


「ああ、こいつらなんとなく見覚えがある。新種じゃないのは助かるよ」


 敵が判明すれば適切な武器を選ぶことが出来る。

 場合によっては昨晩のように耐電スーツを取り寄せることも。


 結局、電気を喰らうのは分かっても、工場の電源を有効に使うことは出来なかった。いくらおびき寄せることが出来たって、有効な攻撃手段がなければ意味がない。

 あのまま電源を使っていたら、配電室にいたシスターたちは全滅していただろう。

 ケガをしたのが自分だけで済んで良かった、と思った。


     ☆


 俺は常々、小物程度の処理は警官でも出来るのだから、教団は出し惜しみせずに武器弾薬を提供すればいいのにと思っている。


 そうすれば、自分の仕事も少しは楽になるし、食われた警官も救われたかもしれない。だが教団は、武器の供給量が少ないだのとよく分からない言い訳をしては、莫大な仕事量を自分たちに強要している。


 実に解せない。

 せめて小遣いを増やしてもらわないと割が合わないというものだ。


 ――たとえば、遙香を養えるくらい、とか。


     ☆


 シスターベロニカからの指示が出た。


「現在、所轄が北側K地区を封鎖し、照明障壁を作っている。

 ま、気休め程度にはなるだろう。

 我々は南側県道に接している部分から侵入、駆除作業を行う。

 西側、東側の二カ所に補給担当を配置、今日は通常装備でいいだろう。

 私は最北部ゲート前まで車両で侵入、万一に備えて電磁ネットを用意する。

 始末出来ない場合には、ゲートまで誘導しろ」


「了解。じゃ、用意してくる」


     ☆


 異界獣が沸きだす穴を、教団では『ゲート』と呼称している。

 その外観は、地域によって大きさの差異はあるが、何もない空間にぽっかりと黒い穴が開いて、異界へと繋がっているのが共通だ。


 ゲートはステンレス鋼板の囲いとバリケードで塞いであるのだが、溢れかえった異界獣に毎度破壊されて、結局は市中へとあふれ出す。小物ならある程度は持ちこたえられるが、力の強い異界獣にはあまり効果がない。


 もっとも、近年はセンサー類のおかげで発見が早く、昔ほどの被害は出なくなったが、それでも面倒な連中には変わりない。


     ☆


「今日は普段通りでいいかな」


 俺は装備一式を身につけて、控え室から待機室に戻った。

 先日ボロボロになったコートは、新品に交換してもらった。


「よし、出かけるぞ」


 そう言って、シスターベロニカは電磁ネット弾の入ったコンテナを担いだ。

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