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【12】電気を喰らう者 9 ベロニカside

 私は焦っていた。

 勝利に敵の狙撃を指示されたものの、動きが速すぎて標的を捕らえることが出来ないのだ。

 狙えと言われたのは、四肢をつなぐ中心部分。


 だが、Lサイズピザ程度の大きさのソレはひどく丈夫な脚に守られ、その隙間から弾を命中させることは難しい。


 対物ライフルがあれば脚ごと射貫くことも出来たかもしれないが、手持ちの装備ではそれも不可能だ。側に勝利がいるため、弾をバラ撒くことも叶わない。


 太く毛むくじゃらなその脚は、化け物並な勝利の攻撃がほとんど効かないという。銃も剣も打撃もだ。


 それだけで敵の強さが計り知れないということが分かる。

 現に彼は今、その化け物によって打ちのめされている。


 ――私には、何も出来ないのか――


 口惜しい。

 この、自由に動かぬ腕と脚が恨めしい。

 ベロニカは敵を目で追いながら、無力感を必死に噛み殺していた。


 普段クールを装っているが、愛息子が目前でボロボロにされて平静でいられる母親などいない。

 出来ることなら代わってやりたい。

 だが、彼は自分を信じて囮を続けているのだ。


『足止め出来なくて済まない……』

 苦しそうな勝利の声がインカムから聞こえてくる。

 違う、悪いのはこの四つ足野郎を射抜けない己の方だ。


「言うな」

 たとえお前が食われようとも、一人で死なせはしない。

 いざとなれば、道連れに自爆という手もある。

 ベロニカが最悪のケースを考えるのは、何年ぶりのことだったか。


 ――だが、彼に諦めるなと教えたのは、この私だ。弱気になるなど、落ちたものだ。


「止めるかひっくり返すかしろ。これでは当てられぬ」

『俺に構うな。もっと撃て。簡単に死にゃしない』

「分かっている」


 勝利は入り口ゲートの柵にワイヤーを絡め、体ごとウインチで巻き上げて、自分をエサにずるずる地面を這っている。

 まるでトローリングのようだ。その後ろを、化け物が蜘蛛のように這い寄ってくる。

 彼に撃たれたためか、微妙に移動速度が遅くなっている。これならば。


 ――今度は、外さない。


 ベロニカは銃口を敵に向け、異界獣が足下に近づくタイミングを待った。

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