【5】電気を喰らう者 2
「ふう、到着してしまったぞ。あいつ、どこにいるんだ?」
変電所前まで来た俺は、黄色いテープで封鎖されたゲートの前で周囲を伺っていた。
複数の血の臭いがする。
だが、嗅覚の鋭い俺には、それらが古いものだということも分かっていた。
「……にしても、図面で見ると案外ゲートに近いな。
普段は人がいない施設だから、あえて移さなかったってわけか……。
ま、教団だって電気スキーな獣がいるだなんて知らなかったんだから、今回はしゃーないってことで」
一人でぶつぶつ呟くと、俺は敷地の中に向かって合掌した。
教団はあくまで某一神教を信仰している体でやっているだけで、実際は教団の誰もが信じてなんかいない。
何故ならば、この世には神が複数存在しているのを知ってるからだ。
(……ッ!?)
ふいに背後を車が通り過ぎた。音からすると、トラックのようだ。
(おかしい、まだ封鎖が出来ていないのか? いや、確か教会の車で来たときには警察官がいたはずだ。じゃあ、なんで……?)
バッ、と振り向くと、冷凍車らしきトラックが遠ざかっていく。後部の荷室ドアに大きく魚の絵が描いてあった。恐らく水産関係の車なのだろう。
(まあいい、向こうで注意してもらおう。ダメならダメで運がなかったと――)
「こちら勝利、民間のトラックがそちらに行った。外に誘導してくれ」
『こちら工場前、了解しました、勝利さん。至急手配します』
無線で連絡すると、工場で待機中のシスターから返答があった。
俺はゲートの上をひらりと飛び越えて変電所の敷地内に入った。場内のマップは事前に頭に入っている。
俺は迷わず被害のあった場所まで走っていき、銃の安全装置を外した。




