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【3】独白 だから俺は、今夜もヤツらを狩りに行く

 食後、俺は出動までの間、こんがらがった頭をどうにかしたくてベッドに寝転んだ。じゃないと死んじまうからな。


     ☆


 ……飯食って親の顔見たら安心するなんて、俺もお手軽過ぎるとちょっと思う。


 もしかして俺のメンタルってとうふなの?

 いやいやいやいや……んなわけないよな。


 落ち着いて考えてみると、遥香はなんも悪いことはしていない。

 強いて言えば、深追いした彼女が悪いってことなのかな。


 比べると、圧倒的に俺が悪い。

 確実に俺が悪い。

 どう弁護しても俺が悪い。

 でも、彼女は俺に負い目があると思っている。


 だったらいっそ、今回の不始末でチャラにしてくれても……って思わなくもないけど、やっぱり本当のことを言うのは恐い。

 やっぱ俺って臆病なのかな。


 にしても。


 転校早々こんな騒動になるなんて、災難というかなんというか。

 ……いや、災難だったのは遥香の方か。


 でも俺だって結構な災難だよ。

 せっかく何事もなく出て行こうと思ってたのに、この先どうしよう。


 さっきはすごく恐いと感じたけど、よくよく考えれば、俺がすっかり忘れてるだけで別におかしくも何ともないことなんじゃないのか?


 施設には、イベントとかでたまに外部の子が来る時だってあるし、短期間だけ預かる子供だっている。


 もしかしたら、ハルカはそういう子供だったんじゃないだろうか。

 多分、そう。

 きっとそうだ。

 そういうことにしておこう。




 えーっと……何を言おうとしたんだっけ。


 ああ、そうそう。学校のことか。

 別にキライじゃないんだよね、学校。

 仕事上、必然的に常時転校生なわけだけど、だって落ち着く前に転校しちゃうからさ。


 んで、やっぱり転校生だから、歓迎されないことも多いわけね。

 もちろん絡まれることもある。


 そういう時は、人気のない場所に連れ込んで、ちょっと恐い目に遭わせてやると静かになるし、仮に手を出してきたところで、俺に物理で勝てる高校生なんか存在しない。


 だからそういうのは大した問題にはならない。

 せいぜい問題があるとすれば、友達があんまり出来ないってことかな。

 それはしょうがない。


 それに、ちょっと仲良くなった級友がいたってさ、一般人とはお付き合いを続けるわけにいかないだろ。


 これまで転校の多い俺を心配して、何人かの優しい優しい先生から「孤児だから大変じゃないのか」って聞かれたこともあるんだけど、ちっともそんなことはない。


 どこの教会でも、教団の他の施設でも、俺はみんなにイヤっつーほど愛されている。


 ……まあ、条件付きではあるけども。



 シスターベロニカを除きシスターたちは全員俺に優しいし、何ひとつ不自由のない生活を送っている。

 教会を移動すれば、すごく歓迎されるし、今日みたいにご馳走が並ぶ。


 根無し草の俺には、友達も、思い出の場所もない。

 でも俺は十分幸せだ。



 親はいないけど、俺には教団がある。

 そして、保護者のシスターベロニカがいつも一緒にいてくれる。



 俺が行けばみんなが喜んでくれる。




 ヤツらを殺せば喜んでくれる。





 殺せば殺すほど、みんなが褒めてくれるんだ。






 皆殺しにすれば、シスターベロニカにも褒められる。







 ――だから俺は、今夜もヤツらを狩りに行く。


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