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箱庭と空  作者: うぇざー
4/4

◇4

 

「あ、ボス。」

「ボス遅いっすよー。何してたんすか。」


 警笛が鳴ってすぐに来たが、元々街の端っこにいたから、出入口に来ると、戦闘力のあるやつのほとんどが既に集まっていた。ここにいない奴らは、動けない怪我人や子どもたちの護衛に回ってるはずだ。

 にしても、オレがここに来るまでちょっと時間があったはずなのに、こいつらが攻撃してねぇなんて珍しいな。普段なら、貴族が出てきた瞬間揶揄って適当に攻撃し始めるっつーのに。でも、相手から目逸らしてオレの方見て話しかけてくるぐらいだからそこまで危機感はないんだろう。


「夢の中でジャイを追っかけ回してた。」

「どんな夢ですか、それ。やめてくださいよ。というか、いないと思ったら寝てたんですね。」

「わりぃ、わりぃ。」


 適当に軽口を交わしながら、目線でもジャイと会話する。ジャイは戦闘部隊の中で一番分析力が高い。こいつらが攻撃しようとしない理由がわかるかと思ったが、片眉を上げるだけだった。

 自分で確かめろってか。まったく、可愛げがなくなっちまって。夢の中のジャイは無邪気にはしゃいでてもっと可愛げがあったんだがなぁ。オレは悲しいね。

 そんなことを考えてるのが伝わったのか、さっさとしろとでも言いたげな瞳でジャイが見てくる。しょうがない、いい加減お(キャク)さんの相手をするか。

 オレが、ここに来た瞬間からずっと感じてる視線の元へと向き直る。そこには開きっぱになったドアしか()()()()。だが、確実に()()


「へぇ、これは……。」


 ここまで気配を殺せるなんて珍しい。だいたい地下から来る連中は、ヘンなモン使って姿を見えないようにしてるが、気配の殺し方については素人もいいとこ。

 オレらを舐めてんのか知らねぇが、不自然すぎるくらいに周囲の音を消したり、視線がうるさかったりして、見えないっつう利点を全く活かせてないってのが常だ。

 だが、今そこにいるやつは、そういう不自然さが無いし、感情すらもかなりコントロール出来てる。あいつらが手ぇ出せなかったのも、場所がつかめなかったからか。

 正直オレも、相手さんがあつーい視線をくれてなきゃ、もっと苦労したかもしれねぇな。いやぁ、こりゃ今日の最優秀賞は、すぐに招集かけたヨイで決定だな。


「お前、今までのヤツらとは違ぇな。なんの用で来た。」

「ボス、そいつさっきからずっと、ワタシたちが何話しかけてもダンマリなんだよ。ボスだからって答えてもらえるとは思えないよ。」


 キャメルのやつ、オレのこと馬鹿にしてるだろ。可哀想な子を見る目で見るな。お前らと違って、オレは相手のいる場所を正確に感じ取って、そこに向かって喋ってんの。違う反応が返ってくるかもしれねぇじゃねぇか。


「るっせ! 一応だよ、一応。で、答える気は? 」

「……。」

「ま、そーだろうな。逆にここで話されてもつまんねぇし。いいじゃねぇか、やっぱ分かり合うには拳を合わせんのが手っ取り早いよな。」


 若干、キャメルから白い目で見られてる気がしないでもないがここは黙殺する。

 あいつだってまともなフリしてるが、ここ(地上)の黒部隊にいる時点で、人のことを言えないくらい充分戦闘狂なのは確定なんだよ。強いやつ見るとワクワクしちまう人種なんだ。

 気配を殺せるからイコール強いか、と言われやぁそうとは言いきれねぇが、相手がなんかしらの道具をいつものやつらより使いこなしてるのは確か。期待したくなるのは同じだろ。


 台から飛び降りて見せつけるようにゆっくりと近づいていく。その間も相手の気配が揺らぐ様子はない。

 というか、動きが全くねぇじゃねぇか。まさか期待外れとかないよな? まあいい、ろくに動けねぇなら一旦締めて色々聞き出すだけだ。


「遊ぼうか。」


 大きく1歩踏み込むと同時にサーベルを一気に引き抜く。大振りながら勢いよく刃を走らせると、見えないなにかによって阻まれた。

 貴族サマお得意の見えない盾には慣れているから特に驚きはしない。だが、今の感覚は切っ先が盾に阻まれたと言うより、刃の半ばを1点で受けられたような感じだった。

 一度力を抜いて刃を引いた後、今度は反対の下から切り上げる。すると、それもまた受け止められた。これは本格的にいつものやつらとは違うかもしれねぇ。楽しめそうで何よりだ。

 さぁ、お前はどこまでついてこれる?



 ###



「俺の攻撃に対応するなんてなかなかやるじゃねぇか。地下のじゃ初めてだ。褒めてやる。だが、まだ甘ぇな。一回、大人しくしやがれ!」

「うっ!」


 振り上げた足を相手がいるだろうところに、思いっきり振り下ろす。人間の体特有の柔らかな感触と、重いものを蹴り飛ばす感覚。直後、建物の壁にぶつかる音がした。

 ありゃ、鳩尾に入ったな。だが、予想より手応えが軽い。受け身をとったんだろう。とはいえ、しばらく立ち上がれはしないはずだ。

 なら、とりあえずはどうやって見えるようにしてもらうかだな。戦ってる間に癖がわかったから、あいつの動きもオレは全部わかるし、気配はだいたい察してる奴は他にもいるが、透明人間と話すのもなぁ。

 そう思ってぶっ飛ばした方を見てると、急に周囲の景色が()()()()白い服を着たガキの姿が現れた。説得する必要はなかったみてぇだ。というか……


「え、お前まだガキだったの? 」

「お前だって、ゲホッ、変わらないだろう! ゲホッ。」


 オレの言葉に反応して顔を上げたそいつは、まだ背も伸びきっていない、少年とも青年とも言えないような歳だった。いかにも偉そうな顔と声してやがる。ただ、その瞳にはまっすぐな輝きが灯っているように見えた。

 つか、まじでガキだな。確かにオレと同じくらいの歳なんだろう。だが、これまで地下から来た奴らは、みんな大人だったんだ。それに比べちゃ、充分ガキだろ。ま、こいつのが強いのも確かだけどな。


「オレはいいんだよ。つか無理すんな。強めに蹴ったから、普通なら気絶すんだ。逆になんでまだ意識あんのかが不思議。」

「これぐらいで、気など失うものか、ゲホッ。」


 苦しそうにはしてるが、ちゃんと意識を保ってて、会話も成立してる。貴族なんて軟弱なやつばっかかと思ってたが、こんなのがいたとはな。

 最初はサーベルだけで済ませようと思ってたが、結局体術も織り交ぜないと決めることが出来なかった。武器の相性にもよるが、オレらの中でもそんな奴は黒部隊ぐらいだ。


「これぐらいねぇ。結構本気だったから地味に傷つくんだけど。」

「まさかボスについてこれる人がいるなんてね〜。ワタシ興味出ちゃった。」

「厄介そうな匂いしかしないと思うが。」


 キャメルがオレの横からひょいと顔を出す。興味出たとか言いながら、いざとなったらオレを盾にするつもりだろ、どうせ。キャメルはああ見えて警戒心が人一倍強いからな。

 逆に、めんどそうな顔しながらオレの横に並んだエラトスは、感情に行動が振り回される節がある。多分今は、本当にめんどくさいとしか思ってねぇ。

 2人に続いて他の奴らもワラワラと集まってきた。姿が見えればある程度どうにかなるってのと、オレには勝てないってのがわかったからだ。命と仲間の安全が保証されてるなら、こいつらは割と好き勝手する。


「へぇ、結構イケメンじゃん。というか、そもそも地下の奴らもうちらと見た目変わんないんだねー。」

「ばっか、そりゃそうだろ。」

「えー、わかんないじゃん。」


 目の前でこんなこと言われて本人的にはどうなのか気になって顔を見てたら、それは盛大に引きつった顔でなにか言いたそうにしていた。そんな顔も出来んのかよ。案外、ちょっと戦闘が強いだけのフツーのガキなのかもな。それが、フツーなのかは置いといて。


「もしかしたら、足が4本あって手が6本あるかもって期待してたのに。」

「どんな怪物だよ、それは。」

「強そうで良くない? 」

「キモイだろ。」


 さすがにそれは可哀想で、思わず突っ込んじまった。こいつらとまともに会話しようとしても意味ねぇってのに。だけどな、誰か気づいてやれよ。すごい顔になってんぞ、あいつ。


「まぁいい、とりあえず本部まで行くぞ。話はそっからだ。」

「ボス、地下のやつを連れてっていいんすか? 」

「こいつは大丈夫だ。戦ってる間もただの警戒心しか感じなかったし。多分こいつは頭がいい。わざわざ無駄なことはしねぇよ。」


 というか、すぐにオレは移動しようと思ってたのに、お前らが好き勝手するから、オレもあいつも動けなかったんだろうが。つっても、こいつらはどうせ聞かないんだろうな。逆に口答えされて終わりだ。


「えー、もしかしてボス、こいつ気に入っちゃったの? 」

「シェーク、そんな趣味があったんですね……。」

「いや、ねぇよ! 適当なこと言うんじゃねぇ、ジャイ! 」

「わかってます。いいですよ。どう思うかは人それぞれですからね。」

「なんもわかってねぇ! 」


 何も言わなくてもオレがダメージ負ってる気がする。ジャイはすました顔で誤解を加速させんな。なんだ、追いかけ回したお返しか? あれは夢のことなんだから流せよ!

 こいつらとはまともに話そうとしても無駄だ。いい加減、目の前のこいつをどうにかしよう。


「もういいから、お前ら一旦黙ってろ! はぁ。おい、お前、ここで話すのもなんだから、移動する。着いてこい。」


 オレが話しかけると、どこかほっとした様子で頷いた。

 本部はここと外のちょうど真ん中あたりにある。本部と言っても、部隊の奴らしかいない、避難所とは別の場所だから心配もいらない。

 案内としてオレが先頭を歩こうと、数歩踏み出してから思い出した。そういや、大事なことを言い忘れていた。


「あとオレにそういう趣味はないからな! 」

「わかってる! 」


 必死になって叫ぶまだ大人になりきれていない声と、ゲラゲラとお腹を抱えて笑う声が建物の間に響き渡って行った。


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