File1:S高の幽霊『どうして』
落ちていく。私に笑いかけたまま理絵が落ちていく。目の前で何が起きているのか理解できない私は理絵が踊り場に倒れてもまだ一歩も動けずにいた。
異常に気付いた人たちが大声を出しながら踊り場へ駆けてくる。その中の何人かは私に向かって何かを叫んでいた。内容までは頭に入ってこなかったけれど、その刺激が私を再び動けるようにした。震える足で階段を下りようとする。でも。
「どうして生きてるの」
上から声が聞こえたから。私は振り返って三階を見上げた。つい先ほど通った場所に私と同じ制服を着た誰かが立っている。
知らない人だった。だけど、見覚えがある気がした。反射的に声が出ていた。
「あんたが理絵を突き落としたんだ」
言い掛かりをつけて。
事実を指摘して。
私は階段を駆け上がる。階段の中頃から三階まで。
数秒にも満たない間に、何故か最近学校内で噂になっていた幽霊の話を思い出していた。ただみんなを見ているだけじゃなかったの。
あと一段上がれば手が届く。捕まえなきゃ。誰だか知らないけどあの女は理絵を突き落としたんだから。自分の荒い息遣いだけが音として聞こえていた。
「次はもっと上手にやるから」