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夜の遺産

今回は解説回です


 既に日が暮れて人の気配が少なくなったころ、黒羽は家にあったマフラーと目元が隠れるほどの大ききのジップアップパーカーを着て何時もの廃墟へと向かった


☆☆☆


  黒羽は出来るだけ人に、特に昨日のような仮装に近い服装をした人間に見つかることがないよう慎重に歩みを進め、無事に何時もの廃墟までたどり着くことが出来た。


幸いなことに道中に仮想大会のような格好をした人を見かけることはなかったし、おおよその年齢以外読み取れない人間というのも見かけることはなかった。


昨日が殊更幸運だったのか、もしくは不幸だったのか………。

まあ、敵に出会わなかったのは素直に喜んでいいだろう。


「どうやら、ちゃんと来てくれたみたいだね。」

黒羽よりも先についていたオブザーバーが廃墟に入ってきた黒羽を見つけ話しかけてくる。

「……ああ、それよりも、他のメンバーは?」

黒羽は周りを見渡しながらそう問いかける

「まだ、来てないね」

「……そうか、そう言えば、何でここを選んだんだ?他の場所だと不味かったのか?」

「ん?いや、この場所から君の気配を色濃く感じたから、君が拠点として使っていたのかと思ってここを選んだんだけど?」

オブザーバーが首を傾げながら、そう言う。


その言葉に黒羽は合点がいった。

確かに、元々ここには良く遊びに来ていたし、その時の名残のようなものをこの男は感じているのだろうと。


「そういうことは誰にでも出来るものなのか?」

昨日のアイアンと呼ばれた男と言い、気配を感じるという能力は誰もが持っているものなのか、黒羽は気になり、オブザーバーに尋ねる。


「う~ん、僕の場合は特別だけど、まあ、この世界で他のナイトメア能力者と会っていると自然と身につくものかな?別段特殊な特訓が必要とかそういう訳ではないよ」

「成程、特殊な訓練とかは必要ないけど、直ぐに身につくものでもない、か……。じゃあ、気配を消す方法に関してはどうなんだ?」

自分のは特殊というオブザーバーの言葉に引っかかりを覚えるものの一端は無視して黒羽は先に聞いておきたいことを質問する。

「ん?そっちは夜射をある程度鍛えた人なら出来るよ。……黒羽君はどこまで夜射を鍛えているんだい?」

その疑問に答えようと黒羽は口を開け、少し考え込むと言葉を紡ぐことはなく口を閉じてしまう。


そしてオブザーバーと目を合わせ逆に質問を投げかける。

「先にオブザーバーの能力について教えてくれないか?恩義はあるけどあったばかりの人相手に手の内を明かすのには少し抵抗があるんだ。もし、オブザーバーが答えてくれたら俺も包み隠さず正直に答えるよ」

申し訳なさそうな顔を作り黒羽がそう告げるとオブザーバーはクスリと笑う。

「一体、どうやってそれを判断すればいいんだい?まあ、それに関してはお互い様だけどさ。」

そう言うとオブザーバーは少し考え込み、一度頷くと黒羽の方を向く。きっとゴーグルとネックウォーマーを外せばニヒルな笑みを浮かべていたことだろう。

「…いいよ、僕の能力を教えよう。」

そう言うとオブザーバーは自分のゴーグルに触れる。

「まず、僕は武具召喚系、召喚武具はこのゴーグル、能力はナイトメア能力者の気配の視覚化。

一応言っておくけど僕の能力に気配の隠蔽は意味がないよ。それと副次的な効果として相手がどの系統の能力に該当するのかも一目見ればわかるんだ。

夜射に関しては気配を断つくらいなら出来るよ。後、遺産に関しては回復系の使い切りがそれぞれ、Bランクが一つCランクなら三つ、そのうち一つは昨日君に使ったやつだから使えてあと一回分、それと僕がアイアンとの戦いで使っていた愛武器のクッションナイフが一本、いざと言う時に売り物にしようと思ってる遺産が何点か……。とはいっても日頃持ち歩いてるものだし、別段喉から手が出るほど強力なものはないよ。」


オブザーバーがスラスラと自分の能力や装備について話していく中、黒羽は大量のクエスチョンマークを浮かべていた。


「ま、待ってくれ、武具召喚系?クッションナイフ?そう言えば昨日の回復は結局何だったんだ?遺産って?」

黒羽の疑問に対し、オブザーバーは訝しむようにこちらを見る。

「本当に何も知らないのかい?」

その言葉を受け、黒羽は神妙に頷いた。

オブザーバーは黒羽のその言葉を吟味しながら値踏みするようにジロジロと黒羽を見る。そしておそらくは顎のある位置に手を添えてぶつぶつと何かを呟くと一度頷き再度黒羽に視線を合わせた。

「わかった、他の二人が来る前に君にナイトメア能力者の知識について多少教えておこうか」


そう言うとオブザーバーは黒羽に遺産についてと能力者が大きく分けて三つに分けられていることについて教えてくれた。

その内容を聞き、どこかで同じ話を聞いたような…そんなデジャブに襲われた。

しかし、具体的にどこで聞かれたかは覚えていないため、恐らくは気のせいなのだろう黒羽はそう結論づける。


「それで黒羽君から質問はあるかい?」

人通り話し終えたオブザーバーは黒羽にそう問いかける。

「じゃあ、質問なんだけど、そのクッションナイフていうのはどこら辺が普通のナイフと違うんだ?それと回復の遺産に関してのランク分けについても教えて欲しい。」

「…おぉ、意外と遠慮がないねぇ。まあいいや、ならクッションナイフからかな。クッションナイフは名前の通り衝撃を吸収、というより半減かな?とにかく本来使い手に届くはずの衝撃を減らしてくれるものだよ。難点は効果が刀身にしかないから刀身で受ける必要があるってことかな」


持ってるだけで効果が発動されればいいのに。そう笑いながら言ううオブザーバーを横目に黒羽は昨日の戦いに関して何故あそこまでアイアン相手に防戦できたのか、その謎の一端に触れることが出来た。

…………まあ、勿論オブザーバーの技量あってのものなので黒羽がクッションナイフを持っても意味が無いのだが………。


「それで、次に回復の遺産だけど、これはSランクからDランクまであって、Sランクはあらゆる怪我や欠損すら直すことが出来る上、血の補填や疲労すら癒すまさに万能薬、Aランクは欠損を治すことが可能だけど血の補填や疲労は癒せないらしい。Bランクは体に穴が開くくらいの怪我でも直すことが可能だね。勿論穴の大きさにもよるけど……。Cランクは骨折くらいなら治せるよ、君に使ったのがこれだね。それで、Dランクなんだけど……これは擦り傷くらいなら治せるかな?


一応ランクが全てって訳ではないんだけどね。ランクはあくまで同じくらい力を込めた際の目安だからね。つまり力を……力っていうのは夜射のことなんだけど、夜射を過剰に込めれば実際のランクよりも高い効能を引き出すことが可能なんだ。注意点としては、あんまり強く籠めすぎればその分早く砕けちゃうし、鬱陶しいぐらいピカピカ光って目に悪いんだけど……、一説によるとこのランク付け、効能っていうのは力の伝導率、つまり夜射を籠めた際にどれだけ夜射のエネルギーを回復の効能に変換できるかで変わってくるんじゃないかって言われてるね。」


(成程…後半の話はあまり頭に入ってこなかったが取り敢えず、回復のできる遺産にはランクがあってランク以上の力を引き出そうとするとその分だけ耐久値が減る、みたいな感じか…………)


黒羽がそう思案していると誰かが黒羽たちに話しかけてくる。

「待たせたな」

黒羽が振り返るとそこには三十くらいの男と二十五くらいの男がこちらに向かって歩いていた。


どうでもいい補足


①遺産に関しては夜になると自動的に常時効果が発動するタイプと、特定の意味を含む言葉(キーワードを唱えることで発動するタイプと夜射を込めることで発動するタイプがあります。


誤字脱字報告、感想等お待ちしております。

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