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手掛かり


家に帰宅した黒羽は考える。

紅翔焔が今どこに居て、何をしているのか。


(一番手っ取り早いのは家を訪ねることだけど……)

そこまで、考えて黒羽は嘆息する。

(焔さんの家とか知らないしな~。焔さんと仲いい子に聞くっていうのも手だけど……。絶対変な目で見られるよな~。)


それでも、聞くべきだろうか、でもやっぱり。

そんな問答を心の中で何度も繰り返す。


「はあ~」

正直、女子の家を聞くのは現役の男子高校生にはハードルが高い。

そのため、黒羽は勇気が出ずに何度もうじうじと考える。


しかし、正直その繰り返しにもうんざりしてきた。いつのまにか出来るようになった黒い物体を生み出し操作する技術で黒色の物体を様々な形に変えて遊びながらも流石にそろそろ結論を出すべきだ。

黒羽はそう考える。


考えはするのだが……

(と、とりあえず、外の空気でも吸うか)

なかなか踏ん切りがつかず、一端窓を開けて気分転換を試みる


そこで、ふと黒羽はじっと外を見る。

別段何かがあった訳ではない。

ただ、そう、少し引っかかたのだ。

(そう言えば、最近は夜に出歩くこともなくなったな。何でだっけ?)

黒羽は時間を遡るように記憶を掘り返す。


紅翔さんが学校に来なくなるよりも前

紅翔さんと購買であうさらに前

紅翔さんを目で追うようになる少し前



……紅翔さんに登校中に話しかけられた後からだ。



やはり、最近記憶が朧げなことと何か関係があるのだろうか?

……………………

「どうせ、このまま考えてても結論は出ないだろうし、外、出てみるか……」

独り言を呟きながら、窓を開け、星が良く見える夜の街へと繰り出した。


ズキンっ

その時、何故か胸が痛んだ気がしたが、黒羽は気に掛けることはなかった。


☆☆☆

「はあ~、特に収穫無しか」

現在、黒羽は昔家を抜け出して通っていた廃墟にいた。

ここなら、何か手掛かりがあると思ったのだ。

しかし、一通り見てみたが、手掛かりらしい手掛かりはない。

細部までしっかりと見たつもりだが、昔と何も変わっていない。


黒羽は当てが外れたと多少落胆はしたものの、直ぐに気を取り直す。

元々。一番の目的は気分転換だったのだ。

第一目標は達成できたと思っておこう。


黒羽がそう考えて帰路に着こうとしたとき…



「拙者たちの力を今日こそは主君に見てもらうのだ‼」

外から聞こえてくる誰かの声。

拙者という言葉。

何かの催しだろうか?

こんな深夜に東京や大阪のような都会ではなくうちのような田舎で


更に耳を澄ませてみる。


「おいおい、なら俺も混ぜろよ、血に飢えてんだよ、血によぉ。へへへへへへ」


何だろう、とても危ない人たちな気がする。

大人しく帰った方がいいだろうか……


黒羽は少しの間逡巡するが、直ぐに結論を出す。

(尾行しよう)

黒羽は廃墟を出て密かに声の主を追う。


声の主は二人組で一人はライダースジャケットにダメージジーパンをはいた男で、もう一人は上下ジャージに下駄を履いた男であった。

一見あべこべコンビのようであるが、二つ共通している点があった。


(あいつらが持ってるの、本物か?それに顔を隠してる……)


男たちはそれぞれライダースジャケットの男が顔全体を隠すタイプのヘルメットで顔を隠し、ジャージを着た男が鬼の面で顔を隠している。

更に武器を携帯しており、ヘルメットの男が鉈を、鬼の面の男が刀を持っている。


そのことに息をのむが取り乱すことなく、直ぐに息を殺す。

相手は二人こちらは一人

常人であれば問題ないが、同じ特殊な能力を持つ相手であれば見つかったら終わる。

そのことを肝に銘じながら二人の後をついて行く。

男たちは黒羽に気づくことなく、他愛もない話をしながら、歩き続ける。


一本道などで隠れる場所に苦心することはあったが、黒羽は何とか男たちを尾行する。

そして何度目かの曲がり角男たちが曲がった方向に向かうと


ドンっと


誰かとぶつかってしまった。

「あ、すいません」

反射的に謝ろうとするが、直ぐに違和感を感じ、距離をとる。

「へえ、能力者くせぇのを隠そうとしねぇから期待してなかったが…………お前、なかなかいい勘してんな。あいつらとは大違いだ。」

男がクイっと顎で指し示す方向を見ればそこには先ほど黒羽が尾行していた男たちがいた。


「てめぇ、いつからつけてやがった‼」

「全く最近の若者は礼儀がなってない。正面からこんか卑怯者‼」

黒羽が尾行していた男たちがギャーギャーと騒ぐがそれを意外な男が黙らせる


「ちっ、黙ってろ、このガキをやる前にてめぇらから血祭りにあげてやろうか?」

恐らくはヘルメットの男と鬼の面の男の仲間であるはずの男が怒鳴りつけたのである。

すると男たちはびくりと肩を揺らす。


その姿を見た黒羽と相対する男はヘルメットの男と鬼の面の男に「先に言ってろ」と告げる。

その言葉を受けた二人は怯えたように頷くと逃げるようにその場を後にした。


「待たせたな。これでようやく二人きりだぜ?」

相対する男はにやりと笑う。

「別に待ってないんでいいですよ。


 ……それより、そういう言葉は想い人に行って欲しいもんですね」

黒羽はそう軽口を叩きながらも男を観察する。


若く好戦的な男に見える。

相手も黒羽が観察しているのに気が付いたのだろう。にやりと笑うと虚空から武器を出す。


何の変哲もない棍だ。材質は読み取れない。強いて言えば鉄、なのだろうか?銀色の光沢を放っている

長さは目測になってしまうが、一メートル八十センチ程だろう。

その棍を男はくるりと片手で軽々と回すと両手で持ち直し先端をこちらに向ける。


それに応じるように黒羽も虚空から黒鎌を出す。


「へえ、それがお前の武器か。戦いには向いていないように見えるが……、さあどう立ち回る‼」


男はそれだけ言うと、思い切り地面を蹴り黒羽に急接近する。


そして、そのまま突きを放つ、黒羽の胴を狙った中段突きだ。

それを黒羽は手に持つ黒鎌で何とか防ぐ。


しかし、強烈な突きを受けたことで黒羽はバランスを崩してしまう

その隙を男は待ってくれない。防がれると直ぐに棍を引き攻撃を仕掛けてくる。

しかも、先ほどと全く同じ場所を狙った中段突きだ。


それを今度は後ろに飛ぶことで衝撃を減らす。

勿論、それだけで完全に防ぐことは出来ず、そのまま地面を転げまわる。

男は今度、頭を潰そうと棍を振りぬく。


それを黒羽は黒鎌で受ける。

「おいおい、守ってばっかで勝てるのか?」

男は嘲るように黒羽に告げる。


しかし、そんなものに構っている暇はない。相手の力が強すぎるのだ。

このままだと押し潰される。

黒羽は必死に頭を回す。


そして、


「ちっ」

男は後退した。いつの間にか出来るようになった黒球を生成したのだ。

黒羽はこれをそのまま攻撃に転用することは出来ないが、男は自分たちの特殊な能力に関して詳しそうであった。

そのため、こちらの黒球を警戒して距離をとってくれるという可能性に賭けたのだ。


「……てめぇ、夜射が使えんのか。つーことは能力者くせぇのを隠さなかったのは…俺を釣りだすためか?」

黒羽が男が特殊な能力に詳しいと考えた根拠であるこの[能力者くせえ]という言葉、正直全く心当たりはないが、それを馬鹿正直に言ってやる必要もない。


「どうかな?お前の買い被りじゃないか?」

更に意味深な笑みも浮かべておく。


「ふん、武具召喚系でありながら、夜射を納めてるってぇことには素直に驚かされたぜ。だがな、さっきのやり取りで確信した。天地がひっくり返っても近接においてお前は俺には勝てない‼」


その言葉と同時に男がまたも加速する。いや、先ほどよりもずっと早い。同じ場所を二度攻撃してきたことから薄々は感じていたが先ほどまでの戦いは小手調べだったのだろう。


しかし、動いているのは男だけではない。

黒羽も既に動いている。黒羽は顔を鎌で守るように持ち、男の立っていた方向とは反対に思いっきり飛んだ。

しかし、回避することは叶わず男の棒がドンっという音と共に黒羽の胴体に凄まじい勢いでぶつかる。


「っ」

とはいえ黒羽の行動が無意味だったかと言われればそういう訳でもない。

何故ならこれにより、胴体に棍が生える事態は回避したのだから。

それでも、肋骨の何本かは逝ったかもしれない……。


わき腹を抑えている黒羽は現在凄まじい違和感と激痛に襲われていた。


「だがっ」


黒羽はそう叫ぶと黒鎌に黒い物体を纏わせ、腕力に任せて飛ばす。


先ほども言ったように黒羽はこの黒い物体をまともに攻撃に転用することが出来なかった。

何故なら、生み出すことは出来てもそれを高速で飛ばすことが出来なかったのだ。

そのため、黒羽はそれを直に腕力でもって飛ばすことにした。


とはいえ、黒球状態で飛ばすことは出来ない。

何故なら黒羽の武器は大鎌であり、大鎌を片手で振り回すのは困難だからだ。

そのため、両手で鎌を持っている状態で飛ばすことが出来るこの形を選んだ。


初めは苦肉の策であったが、この方法には思わぬ副産物があった。

それは

「へぇ、飛ぶ斬撃か。最近じゃあアニメとか漫画でオーソドックスな戦闘方法になってるが……嫌いじゃねぇよ?」


男はそう言うと

「だがな、練度が全く足りてねぇ、これじゃあただの大道芸だ。客を沸かせられても戦闘じゃあ、役に立たねぇ」


手に持っている棍を片手で振るいいとも簡単に斬撃を打ち消す。


「それじゃあ、次は俺の番だよな~」

その言葉と共に男は再度、加速する。


何とかもう一度、この飛ぶ斬撃を放とうとするが、正直間に合いそうにない。


積み、だろうか?


その言葉が脳裏をよぎる。

しかし、男から目を離さない。

すると、自分と男との間に誰かが割って入ってくる。


「おっと、いたいけな少年に意地悪するのはやめたまえ、アイアン」


どうでもいい補足


①夜射が使用できたのは当然ですが、焔ちゃんとの練習の成果ですね。ただ、黒羽君はそんなこと覚えていないのでいつの間にか出来るようになっていたという風に解釈しています。記憶になくても必死になって練習していたので感覚が覚えていたという感じですね。


②作中でも書かれていますが焔ちゃんに教えを乞うていたとき同様現在も戦いで使用できる練度にはありません。そのため黒羽君は腕力で飛ばすという脳筋戦法に出ています。ただ、大鎌のため片手で大鎌を振って片手で黒球を投げるということが出来なかったため鎌に纏わせるという戦い方が生まれました。


誤字脱字報告、感想等お待ちしております。

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