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分岐点


「お、どうだった?何パン買えた?」

真人のその言葉に黒羽は首を左右に振り、力なく自分の席に座る。

「ま、まあ仕方ないよ、あそこのパン人気だし、……ほら、もし良かったら俺のおにぎりあげるよ?作りすぎちゃったし」

そう言いながら輝利夜が自分のおにぎりをいくつか黒羽の手に乗せる。

「あ、ありがとう、輝利夜、流石校内ナンバーワン。男に対しても等しく優しく接するお前に俺は憧れるよ」


そう言いながら顔を挙げると、友人に褒められたこと、友人の力になれたことに誇らしさと恥ずかしさを抱いた輝利夜の顔があった。

そして、その笑顔に

「めえぇぇぇっぇぇっぇぇぇぇぇぇ。」

太陽を幻視した。

「お、おい、だ、大丈夫か?一体どうした?」

真人が只事ではない友人の様子に焦りだす。

しかし、そこに思わぬ助け船が現れる

「あれは……恐らく、蒼美君の人徳と美貌の相乗効果によって光を幻視する通称イケメンイマジナリー現象ね」

「な、イケメンイマジナリー現象‼

てっなに?ていうか誰なんだ、あんたは‼」

突如現れた存在に困惑を隠せない真人

「私は輝利夜君ファンクラブナンバーⅥ。シックスセンスの高野よ‼」

もし漫画であれば後ろにドンッというオノマトペが出てきそうな登場をしたのは輝利夜のファンクラブに所属する女子生徒であった。

「それより、彼、不味いわよ。イケメンイマジナリー現象で幻視した光を本物だと感じて混乱しているわ。今すぐ処置しないと……」

「ど、どうにかなるのか?」

恐る恐る高野に尋ねる真人。


「ええ、目に氷を当てれば直ぐに治ると思うわ」

そう言い、高野と名乗る女子生徒はポーチからドライアイスを取り出すと黒羽の目に当てる。

すると、先ほどまで目を抑えて苦しんでいた黒羽の呼吸が安定し始める。


「あ、あれ、俺は一体?」

「あなたは蒼美君に光を見たのよ」

高野が未だ状況が掴めない黒羽に要領のえない説明をする。

「そ、そっかそれはありがとう?」

「いえ、良いのよ。だけど覚えておいて……強すぎる光は人を焼き殺すこともあるということを……」

それだけ、告げると高野という少女は颯爽と去っていった。


黒羽は首を傾げる

「何だったんだあれ」

「いや、一番それを言いたいのは多分俺なんだが?」

真人は疲労を隠さずそう告げる。

「えっ、っと、俺もしかして二人に迷惑かけちゃった、かな」

そんな二人の様子を見ていた輝利夜は少しだけ寂しそうな顔をする。

「いや、全然、むしろおにぎりありがとな。」

そう言いながら輝利夜から貰ったおにぎりを頬張る


そして、目をカット開く


「こ、これは唐揚げおにぎり。唐揚げおにぎりじゃないか。輝利夜君」

「え、う、うん、昨日の残りだけど……」

その言葉に真人が反応する

「その唐揚げはもしかして、て、手作りか?」

「え、うん、そうだけど……」

輝利夜のその言葉に今度は真人が倒れる

「……お、おれは、いったいなにで、しょうぶ、すれば、いいんだ」

その姿に輝利夜は困惑する

「え、えっと何か迷惑なことでもあったかな?」

「ほっとけほっとけ、そのうち復活するから」

そう言いながらおにぎりを食べる姿に輝利夜も食事を再開する。

そして、おにぎりを勢いよく頬張ると

「俺、外の空気すってくるね。」

そう言い、申し訳なさそうな顔をして席を立ち外に向かって歩き去っていった


☆☆☆

俺は友達が欲しかった。


一人ぼっちは辛かった。


だから、夜の街を一人歩く彼女の姿に自分の姿を重ね合わせた。


だけど……


一緒にいる時間が長いほど実感する


俺が恵まれていたことを


そして、彼女を大切にする思いが育まれた


彼女が堂々と外を歩けるように……


そのためなら、俺は……


☆☆☆


「どうした、黒羽。ぼーっとして」

「いや~、今日も平和だな~って思ってさ」

黒羽は考えていた。数日前に焔に言われたことを。

家に帰ってからあの時の焔の言葉がやけに気になってきたのだ。

何故彼女があんなことを言ったのか……。


しかし、あれから、焔に話しかけられることもなかったし、別段様子がおかしいってことも……多分ないだろう。


……友達でもない黒羽には焔の心の変化を敏感に感じ取ることは出来ないだろうが……


そう考えていると、ガラッと教室の扉が開き口橋先生が入ってくる。

「はい、ホームルームを始めます。全員揃ってますか?」

そこで一人の女性とが手を挙げる。

「せんせ~、焔がまだ来てません。」

「本当だ。誰か紅翔さんについて知っている人いませんか~」

先生が生徒たちにそう声をかけるが、みんな隣のクラスメイトや友人と顔を見合わせるだけで答える人はいない。


そして、それはその日だけでは終わらなかった。

次の日も

その次の日も

更にその次の日も


紅翔焔が学校に顔を出すことはなかった……。


☆☆☆

「おかしい。そう思わないか真人」

「そうだな、ただ、行方不明とかなら警察が動きそうなもんだし、無事?ではあるんじゃないか?」


確かにそうだ、もしこれが、誘拐などであれば誰かが捜索願を出して警察が動いてくれるだろう。じゃあ、もっとメンタル的な問題なのだろうか?


例えばいじめとか


ただ、黒羽には紅翔焔がいじめられるというのが想像できなかった。

クラスでも人気者だし、今までそんな姿を見せたこともなかったし、

何より、そんなことをすれば……

すれば?

何だっただろうか……大切なことを忘れている気がする。


何かが引っかかる。

ただ、思い出せない。


「―い。おーい。黒羽?どうした、急にぼーっとして?」

真人が心配そうに、顔を覗き込んでくる。

「い、いや、紅翔さんが心配だと思ってさ」

「そか、まあ、悩んでも俺らに出来ることはないだろうからな」


腕を組み、う~んと唸りながら真人がそう呟く。


「そう、だよな。」

「ああ、紅翔さんならきっと大丈夫だよ。っと、じゃ、また明日な」


そう言いながら、真人が分かれ道を右に曲がる。


その姿を見届けると黒羽は分かれ道を左に曲がった。



正直書いている作者もイケメンイマジナリー現象って何って感じです

しかも、目にドライアイスを当てれば治るという不思議

でも、時々イケメンが光り輝く描写みたいなのもあるし、あんな感じです。


因みに高野さんは別におにぎりを貰った夢喰君に対する嫉妬はちょっとしかありません。

何故かって?

それは…………………………………………秘密だ


誤字脱字報告、感想等お待ちしております。

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