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パンさんさんと、クロワッサンさん

作者: 白猫



周りを海に囲まれた、穏やかな気候の島。


ここは「パン島」。


美味しいパン研究所のパンさんは、今日も新たなパンの美味しさを探しています。




「うーん。

 小麦粉も変えてみた。

 クリームや餡子も包んでみた。

 美味しいのだけど、何かピンとこないな。」


どうやらパンさんは、研究に悩んでいるようです。


するとそこに、研究所の扉を叩く音が。




‘コンコンコン’

「おーい、パンさんいるかい?」


「おや?

 その声はクロワッサンさんかい?」

‘ガチャ’



「やあ、パンさん久しぶり。」

「クロワッサンさん、久しぶりだね。

 今日はどうしたんだい?」




自由気質で、風来坊のクロワッサンさん。

彼は風と共に旅をしては、ふらっとパン島に帰って来るパンさんの友達。



「いや、何。

 どうやら最近、クリームシチュー島が見つかったそうでよ。

 白くて温かい、美味しいスープが採れるらしい。

 パンさん知ってるかい?」

「いや、そんな話は初めて聞いたよ。

 ずっと研究に忙しかったからね。」

「そんなことだろうと思ったぜ。

 どうだい?

 気分転換も兼ねて、一緒に探検しに行かないかい?

 あんたの研究にも役立つかもしれないぜ?」

「そうだね。

 せっかくのお誘いだし、たまには出かけるのも悪くないか。」

「決まりだな。

 じゃあ、明日の昼に港で待ち合わせだ。」

「うん。分かったよ。」




こうして、パンさんとクロワッサンさんはクリームシチュー島へ出かけることになりました。


いったいどんな島なのか、わくわくする気持ちを抱えながら、その日は早めに眠りました。



翌日


港で待ち合わせたパンさん達は、船を1艘借りクリームシチュー島へ向かいます。



「どうだいパンさん、久しぶりのお出かけは楽しいかい?」

「そうだね。

 研究所で色々試すことも大事だけど、外の刺激も良いものだ。」

「そうだろ?

 知らないものや新しいことに出会えるってのは、いつまでたっても心躍るものさ。

 きっと、研究にも役にたつぜ。」

「そうかもしれないね。

 ところで、さっきから随分と寒くなってきた気がするのだけど、気のせいかな?」

「いや、気のせいじゃないと思うぜ。

 なんせ、自慢のパリっとした皮が、パリパリになってきやがった。」

「クロワッサンさん。」

「パンさん、どうやらこの島は、なかなか大変なところかもしれないな。」




島に近づくにつれどんどんと寒くなる気温。

黙々と準備するパンさん達。

大変な苦労を乗り越えれるよう、

しっかりと準備をしていざ島へ




クリームシチュー島

静かさに包まれとても寒く、周りに動くものの気配は感じられない島でした。




「ここがクリームシチュー島か。」

「パンさん、まだ島に着いただけさ。

 ここからお目当てのスープまで向かわなくちゃいけない。」

「そうだねクロワッサンさん。

 気を引き締めて向かおう。」

「とりあえず、あの赤い岩の辺りを目指そうか。」



島には道らしい道もなく、デコボコした荒地を懸命に進むパンさん達



ごろごろした赤い身のニンジン岩を乗り越え


ほくほくした黄色いジャガイモ洞窟を潜り


わさわさした緑色のブロッコリー林を抜ける



すると遠くに、白い湯気を見つけたパンさん達。

茶色いつるつるしたタマネギ丘を登り切ると


目の前には目的地の白くて温かいスープの湖が




「パンさん!」

「クロワッサンさん!」



思わず声をあげたパンさんとクロワッサンさん。

湖の縁まで近づくと、とても暖かくて美味しそうな匂いがしていました。

早速食べてみようと器に掬いましたが、どうやら熱くてこのまま食べると火傷しそうです。



困ってしまったパンさん達ですが、あることを閃きます。

なんと持ってきたパンをスープに付け、パンにスープを染み込ませます。

ふわふわなパンにスープが染み込み、温度もちょうど良い温かさに。


口の中に頬張ると、染み込んだスープとパンが混ざり合い心まで温まる美味しさ。

クロワッサンさんも大満足です。




「クロワッサンさん。」

「どうしたい、パンさん?」

「このスープはとんでもなく美味しいね。」

「そうだな。」

「特に、パンと一緒に食べるとより美味しく感じる。」

「確かにな。

 今までパンってのはそれだけで食べるもんだと思ってたが、こいつはびっくりしたぜ。」

「私は今までパンの美味しさのみを求めてきたが、これからはパンと一緒に食べるという美味しさも考えてみるよ。」

「そいつはいい。

 もっと色々な美味しいものが楽しめそうだぜ。」




クロワッサンさんもこの考えに大賛成

2人は満足しながらパン島へ帰っていきました。




クリームシチュー島へ出かけてからしばらく後

パン研究所にクロワッサンさんがやってきました。



「パンさん聞いたかい?」

「どうしたい、クロワッサンさん。」

「どうやらこの近くに、美味しいスープとスープに合うパンを出すお店が出来たと聞いたのだけど?」

「おや、クロワッサンさんの耳に入るぐらい噂になっていましたか。」




実はパンさん、帰ってきてからスープに合うパンの研究に取り掛かったのです。

その研究の成果として、知り合いのスープ職人さんとスープとパンを一緒に食べれるお店を出していました。



「クロワッサンさん、せっかくだから一緒にお店まで行ってみますか?」

「そうこなくっちゃ。

 パンさんの研究をしっかりと見させてもらうぜ。」




お店の中は大繁盛。

みんながスープとパンを今か今かと待っているようです。

そこに運ばれてきたのは、がっしりしたパンやふわふわのパン、どれもスープにピッタリ合いそうなパン。

スープも運ばれてくると、みんな嬉しそうに頬張っています。



どれも美味しくて幸せな気分です。

それでもパンさん達には、クリームシチュー島で一緒に食べたスープとパンが1番でした。



お終い


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― 新着の感想 ―
[一言] お腹が空いてくるお話ですね! パンにシチューにスープ……食べたい!
2023/04/25 19:35 退会済み
管理
[一言] 一言でパンと言っても、そのまま食べるのが最高に美味しいパンと、スープにあうパンは違いますものね。 個人的には、スープに浸すパンは、パサパサのものであって欲しいのです。 スープをよく吸いますゆ…
[一言] パンと一緒にいただくスープ、美味しいですよねえ。 読みながらなんだかお腹がすいてきました。パンの魅力、包容力は無限大です。どんな相手でも受け入れられる寛容さが、美味しさにつながるのでしょうね…
感想一覧
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