皇妃と女商人
ヴァレンリールには反省させるとして、自動人形から情報を得られなくなった以上、別の方法で現状を調査する必要が出てきた。
西方大陸の情報から、あの自動人形は、西方大陸の『魔女』とかいう超常の存在によって造られたものの可能性がある事が分かっている。もちろん、事実は全く不明だ。似た別物かもしれない。
だが可能性だけで言うならば、西方大陸の『魔女』の手が他にも、この東方大陸に伸びている可能性だってゼロではない。一度、帝国国内にその手が伸びてないか、大規模な調査をする必要がある。
という訳で、俺は宮中伯を呼び出した。
「……だから一度、西方大陸の影響を受けてないか、帝国諸侯を調査したい」
「それは構いませんが……調査対象が多すぎる上に、調査内容が曖昧です。時間はかかります」
確かに、影響力が及んでいるかの調査って、難しいだろな。とはいえ、あまり時間もかけたくない。
「具体的には?」
「数年規模でかかるでしょう。あるいは、それ以上」
最悪数十年? それはかかり過ぎだな。
「人数を増やせば少しはマシになるか」
「そうですね。それでも数年はかかるでしょうが」
それでもマシになるなら人数かける価値はある。
「なら、皇国に送り込んでいる密偵を引き上げさせてしまっていい。この冬、本格的に動き始めればいよいよ皇国にも感づかれる。これ以上残すと狩られそうだ」
機密に関わる密偵は、おいそれと人数を増やせない。子供の頃から時間をかけて技術を教え込み、裏切らないように忠誠心を植え付ける必要がある。半人前になるまでで十年以上の時間がかかり、実地で経験を積ませてようやく一人前になる。
当然、この実地の任務に失敗し、命を落とす密偵も多い。
つまり、密偵とは育成に時間がかかるのに、死亡率が高い貴重な人員って訳だ。可能な限り、消耗は避けたい。
兵士については傭兵等で不足を賄えたりするが、密偵はそうはいかないからな。
「よろしいのですか。皇国の情報が入ってきづらくなりますが」
「それは仕方ないだろう。開戦が避けられなくなった時点で、皇国も密偵狩りに力を入れ始める。それで消耗する方が後々苦しくなる」
密偵を皇国に残しておく場合のメリットもいくつかある。例えば、正確な情報を得られやすくなるってのもその一つだ。
ただ、その情報が絶対に正しい情報とも限らないからな。密偵が裏切っていれば誤情報を流してくるかもしれないし、そうでなくてもニセの情報を掴まされる可能性なんていくらでもある。
具体的には……俺が良い例だろう。愚帝として振舞っていた俺の言動に多くの人間が踊らされていた。結局、密偵と言えど相手の頭の中を覗けるわけではないのだ。見聞きした物が、意図的に流された情報だった場合、却って相手に利用される可能性がある。
「では、皇国の情報は今後、同盟国を頼りに?」
「そうなるだろうな。とはいえ……帝都から出てしまえば、どちらにしろ情報は入ってきづらくなるだろう」
今まで密偵の報告が素早く俺のとこまで来たのは、帝国領内だったり帝都に居たりと、皇帝の居場所が捕捉しやすかったからだ。居場所が分かっているなら、そこにまっすぐ向かえばいいからな。
だが今回は、皇国への大規模な遠征……過去に類を見ない規模での戦争だ。慣れない上に常に警戒が必要な敵地で、遠征中の皇帝の陣地に正確な情報を素早く届ける……というのは、流石に熟練の密偵と言えど厳しい。毎回来るか分からない情報を頼りにするようでは、必ずどこかで足元を掬われる。
「搦手も使えなくなりますが」
確かに、それも残しておいた場合のメリットだ。だがそもそも……。
「農村にまで手は届いていないのだろう?」
「……はい。我々の腕はそこまで長くありません」
密偵には情報収集以外の能力もある。特に帝国の密偵が得意とするものは、民衆扇動とかだが……そのためには、地方の農村に密偵が違和感なく、住民の一人として受け入れられなければならない。そしてこれは、一朝一夕では不可能だ。
この時代の農村って、閉鎖環境だからな……余所者には警戒心が強いし、ましてや扇動できるくらいの発言力を潜伏した密偵が持つには、長い年月を要する。
「確かに、手札は多いほどいい。だが、帝国国内とは違い、切り札にはなり得ないだろう」
もちろん、得意ではないと言うだけで、工作や暗殺もできる密偵は、皇国に残しておいても困ることは無い。もしかしたら使える時は来るかもしれない。だが、なくてもどうにかなる範疇だ。
ちなみに、帝国の密偵は暗殺などは得意ではないが、それを専門としていた組織……というか一族が、『ロタールの守り人』なのだろう。密偵の支配者的立場の一族だけが、「戦闘能力」を持つことで、裏切り者を効率よく粛清できていたんだと思う。
だがその『守り人』の多くを、宮中伯は粛清してしまっている。軍で言う「指揮官」が不足しているから、「兵士」を増やしたところで組織としてまともに運営できない……帝国軍が抱える問題と全く一緒だな。
宮中伯がさっき言っていた『我々の腕』というのはそういう意味なのだろう。
「とはいえ、代替となる情報源は必要だ。偵察ができる人間は極力、遠征軍に入れてくれ。数を確保したい」
基本的に、敵地で偵察を任せられるのは騎馬に乗った兵だ。つまり、貴族や騎士、あるいは訓練を受けた騎兵だな。ただ、騎兵はある程度まとめて部隊として運用したいから、偵察役に回せるのは必然的に貴族や騎士となる。それも、まともなという条件が付く。
「時間をかけて選抜しましょう」
これが国内だったらなぁ……地元の人間とかも偵察兵として有用なんだけどね。流石に天届山脈の向こう側に土地勘ある奴はいないだろう。
「あと、天届山脈以東にいる『アインの語り部』を密偵の代わりに使う」
既に真聖大導者経由でコンタクトは取れている。どのくらい協力してくれるかは分からないが、帝国は彼らにとって敵(聖皇派)の敵なのだ。ある程度は情報を貰えるだろう。
何より聖職者というのは、情報を得やすい立場だからな。ある程度の情報収集能力には期待できる。
「安心しろ、流石に密偵の代わりになるとは思っていないさ。それでも無いよりはマシだろ?」
宮中伯は不満に思うかもしれないと思い、そう付け加える。明らかに宮中伯は、現真聖大導者と因縁があるからな。
あとそうそう、忘れちゃいけない。
「それとシャルル・ド・アキカール……彼も戻してやらないとな」
表向きは帝国の使節として皇国に派遣している、式部卿の三男、シャルル・ド・アキカール。彼の身柄をわざと皇国に押さえさせることで、彼らに帝国の重要人物を握っていると錯覚させる……つまり、元皇王ヘルムート二世と、粛清された式部卿の息子の、疑似的な人質交換を成立させていたのだ。
皇国が、ヘルムート二世の身柄を握っている帝国に対し、緩慢な対応だったのはこれが理由の一つだ。仮想敵国が廃位された元君主匿ってるとか、普通はもっと焦る。ヘルムート二世の暗殺を狙っても可笑しくない状況だ。ドズラン侯の宮廷襲撃事件の際に、ヘルムート二世が怯えて引き籠ってたのはこういう事情があるからだな。
他にもシャルル・ド・アキカールの裏工作のお陰で、帝国は周辺国との戦争を畳む時間を稼げたし、何より女皇王という存在が成立した。
だが帝国がこれから大々的に皇国への出征を叫ぶのであれば、それは完全な敵対行為だ。皇国がシャルル・ド・アキカールの身柄を害する可能性もゼロではない。ここは早逃げ一択だ。
「戻す、でよろしいのですか」
宮中伯が、改めて俺にそう確認する。
彼の言いたいことも分かる。どれほど、今のシャルル・ド・アキカールに俺に対する叛意が無くても、今後そういった野心が湧くかもしれない。そして本人にその気がなくとも、式部卿の三男という生まれは他の者に利用される可能性がある。彼はその存在自体が、俺にとってのリスクだ。
「あぁ。彼の能力は殺すに惜しい。余にそう思わせた彼の勝ちだ」
今回の皇国駐在でも、俺の命令通り「女皇王」を成立させた。そして帝国の法知識にも詳しい。リスク以上の価値があると俺は判断する。だから彼を生きて帝国に戻す。
「密偵の引き上げついでに、宮中のシャルルを拉致して連れ帰ってこい」
とはいえ、帰ってきていいぞと言っても、皇国側が手放すはずもない。つまり、無理やり連れて帰ってくる必要がある。
「……彼の身柄を確実に、というのであれば私が出向く必要がございます」
普段は俺の側から離れようとしない宮中伯が、珍しく自ら出向くと言い出した。つまり、宮中伯自身が出向かないと、本当に上手く連れ帰ってこれる保証がないってことだ。
「分かった。余としても卿に行ってもらった方が安心できる……どうせ余は暫く宮廷から動けぬ」
俺の身に危険はないはずだから、安心して行ってこいと伝える。まぁ、また宮廷が襲撃されたらどうしようもないけど、あんなことはそうそう起きない。
仕事しつつ、体内魔力の回復に努めるよ、俺は。
「かしこまりました。しかし……宮廷に入り込んで身柄を確保するとなると、皇国の密偵と戦闘になるかもしれませんが」
あぁ、それも当たり前か。帝国に密偵がいるように、皇国にも同じ存在はいるだろう。そして当然、宮廷は彼らが守っている。流石の宮中伯も、皇国の密偵に一切見つからずにシャルル・ド・アキカールを回収して帰ってくるのは難しいってことだな。
「どうせ近いうちに敵対を宣言するのだ……シャルル・ド・アキカールの身柄の安全を優先してくれ。それにこれは、卿にとっても帝国の密偵が皇国の密偵より優秀だとアピールするいい機会だ。連中に見せつけてやれ」
「では『封魔結界』を念頭に、『吉兆』も連れていきます。他にも、手練れを数人ほど」
少数精鋭か。妥当だな。
「分かった。くれぐれもシャルルは傷つけるなよ」
それからしばらく、帝都では穏やかな日々が続いた。ロザリアもスカーレットも、今のところは健康そのものだ。
またこの間に、宗教国家トミス=アシナクィが滅亡したとの報告を受けた。だがこっちはあまり良い報告ではない……トミス=アシナクィの実質的な本体とも言える、聖一教継承派の高位聖職者共には完全に逃げられてしまったからだ。
……奴ら、常に国家を維持できなくなった場合を考慮して潜伏計画を練ってやがったな。やっぱ宗教って厄介だわ。
そして俺自身はというと、皇帝としての職務をしつつ、引き続き宮中の庭園などに出て体内魔力の回復に努めていた。
そんな穏やかな日々に、突如として邪魔が入った。
「皇女様がお生まれになったとのことでー、おめでとうございますぅ」
黄金羊商会のイレール・フェシュネールだ。流石は商人、皇女が生まれたと聞いて挨拶に来たらしい。
「ありがとうございます。お忙しいところ、わざわざ来ていただけて光栄ですわ」
ロザリアはそう言って卒なく挨拶を返す。
「何か御入用がございましたら、何卒わたくし共をー」
そう言って深々と頭を下げるイレール・フェシュネール。そこだけ見れば、皇女が生まれたから挨拶にしに来ただけに見える。
……来るタイミングが完璧すぎるのを除けば、だ。
「……そうだな。宮中にいるお前の情報源とか買いたいな」
「はてぇ?」
……間延びしたとぼけ声がうぜぇ。
スカーレットが生まれたその日には、あらゆる商人や貴族から一斉に「挨拶したい」と謁見の要請が入ってきた。まぁ、懐妊したことについては明言していなかったが、時間が経つにつれそういった情報は広がっていく。そして生まれた日には、怒涛の謁見要請があったのだ。
商人も貴族も、第一皇女の誕生への祝いの言葉と贈り物も持って、一斉に押しかけてきた。その中にはイレール・フェシュネールの名前もあった。彼女の贈り物は金銀宝石に、宮中の廊下に敷かれているような敷物やカーペット……他の商人が宝石で装飾された「皇女のおもちゃ」だったり、金刺繍の「皇女のおくるみ」だったり、ロザリアに向けた「産後に食べると良いとされる食べ物」だったり……そういった露骨な贈り物が多い中、イレール・フェシュネールの贈り物は逆に異質だった。
……こういうところが侮れないんだよなぁ。俺の性格を分かってる。
生まれたばかりの我が子や、出産直後のロザリアに、どこの馬の骨か分からん商人から贈られた物を、触れさせる訳ねぇだろ。必要なものは、生まれるとっくの前に信用できる商人に発注してる。
その点、イレール・フェシュネールの贈り物は「気に入らなかったら換金して国庫の足しにしてね」感が凄いんだよな。あと敷物ってお前……実際、靴を履いて上を歩く分、他の贈り物よりは気にならない。直接触れなければ心理的に許せる……っていう、俺の感性を「分かってる」感が非常に気に食わない。気に食わなかったので倉庫に仕舞い込んだ。他の商人共の贈り物も一緒にな。
閑話休題、このように贈り物自体は生まれた直後に届いていた。だが他の商人が贈り物ついでに「一目で良いのでご挨拶を」と言ってくる中、黄金羊商会からは忙しくて挨拶に行けないことを謝罪する手紙が一枚来ていた。ちなみにロザリアにもスカーレットにも、誰も会わせていない。ロザリアの体調が落ち着くまで、有象無象と会わせるわけがないからな。
……で、そのロザリアの体調が落ち着いて、公務に復帰した初日が今日なのだ。もちろん、今日から復帰だなんて、公には一切言ってない。
この女、スカーレットが生まれた直後は「どうせ会えないから」でスルーし、ロザリアが復帰する初日を狙いすまして挨拶に来やがった。そういう効率重視の動きがザ・商人って感じで癇に障る。
あとそうそう、帝国が海軍……黄金羊商会とは事なる海上戦力を作ろうとしている件は、こいつらにはわざわざ伝えない。これは帝国の権利であり自由だからな。そしてこの女も、そこは弁えてる。帝国海軍と黄金羊商会は、将来的に対立しかねないが、これについて文句を言ったりしない。
え、そもそも知ってるのかって? たぶん感づいてるよこの女。だってこの間、追加で借金しようとしたら、初めて使用用途聞かれたし。
という訳で、最近良いようにやられっぱなしなので、ロザリアのいる前だがイレール・フェシュネールに例の女について問おうと思う。
「今日は魔族の女はついてきてないのか」
魔族……おそらく『白紙戦争』以前にいた魔人族の子孫。人間とは異なり、魔法とは異なる能力のようなものを使える。ただ、この魔族と言う存在、東方大陸ではほとんど知られていない。目撃例が少なすぎて、そもそも知っている人がほとんどいない。
だから魔族だから差別される……なんてことはたぶんないと思う。ただ、封魔結界の中でも能力が使えるというのは脅威だ。
そしてマルティーヌ・モヌメン=トゥム=エモリアと名乗った、イレール・フェシュネールが宮廷に来る時はだいたいついてくる護衛の女……それがおそらく、魔族だと考えた俺は、探りを入れるつもりでイレール・フェシュネールに問うたのだ。
それに対し、イレール・フェシュネールはあまりにあっさりと答える。
「あぁ、それで今日はついてこなかったんですかぁ。納得ですぅ」
……いや、普段お前がついてくるように言ってるんじゃないのかよ。まるでいつもは勝手についてきてる……みたいな。
「……随分とあっさりと認めるんだな」
「へ? ……あぁ! 密偵長さんも随分と陛下に嫌われたくなかったんですねぇ」
宮中伯? なぜ今……いや待て。彼の特殊な能力は間違いなく魔族由来だ。だから皇帝はとっくに魔族について宮中伯から聞いていると思っていたと。それで、宮中伯が今まで何も言ってなかったことを知って、俺に嫌われたくなかったからだと解釈したと。そういうことか。
……宮中伯は俺が転生者であることを知っているだろう。もしかして、過去の転生者の中に「魔族」という響きだけで何かやらかした奴がいたのか?
……というか、相変わらず会話が飛び過ぎだコイツは。本当に疲れる。
「嫌われるような存在かも余は知らないのだがな」
「魔族は純血の魔人族ではないようですよー。でも同一視する人の中には嫌う人もいるんじゃないですかぁ」
……こいつ、しれっと重要情報を。
「混血なのか?」
「みたいですよー。興味ないのでよく知りませんけどー」
……『白紙戦争』の伝説によれば、魔人族は最初の覇権種族だ。だが敗れて、隠れ住んでたら、残った種族で戦争して世界は滅びかけたって感じだった。ちなみに、そこで俺たち人類の祖先らしき汎人族もかなりやらかしてるはずだ。
「伝説だけ聞けば、『魔人族』ってだけで嫌われる理由は分からないが」
「彼らの目的は、『魔神』を完成させて、世界を自分たちに都合よく変えることだったみたいでぇ。当時は全種族から忌み嫌われたみたいですよー」
こいつ、重要な情報を次から次へと。それにしてもファンタジーだな、おい。
……ちょっと待て、そんな重要な情報をあっさり聞かせるの、怪しくないか?
「今日は、随分と口が軽いんだな」
「おめでたい時くらい、世間話も弾みますぅ」
おい、それが噓の理由だってことくらい俺にも分かるぞ。
「……で、お前のところの商会には、魔族は何人いるんだ」
「そこまで安い女じゃないですぅ」
まぁ流石に、自分のとこの商会の話はしないか。
だがイレール・フェシュネールは、スカートの端をわずかに持ち上げ、わざとらしくこう続けた。
「お高いですけど買ってくれますかぁ?」
その一言で、場の雰囲気が変わった気がした。
「お前もう帰れ」
……コイツと先帝の関係を薄々感づいてるんだよこっちは。ロザリアに何聞かせてんだマジで。そんでもって、ロザリアも察しが良すぎる……感づいてたよ今。
「本気ですぅ」
「尚更タチ悪いわ」
これはロザリアのいる前で探り入れた仕返しか?
「ちゃんと側室になるならいいですわ」
……あの、ロザリアさん。良くないですよ。
「うーん、商会は捨てられないから無理ですねぇ」
……あれ、もしかして俺よりロザリアの方がイレール・フェシュネールと上手くやり合えるのか? ロザリアは笑顔を崩さず平然としている。
「それで陛下ぁ、本題なんですけどー」
もう帰ってくれねぇかなマジで。
「なんだ」
「皇国との戦争、長引くとタブレン王国が出てきますよー」
……タブレン島は、東方大陸南東部にある大小二つの島の名前だ。それぞれ大タブレン島、小タブレン島と呼ばれている。また島と言っても、かなり大きい。だが、タブレン王国なんて国名は存在しないはず。この二つの島は、四つの国に分かれていたはずだが。
「統一したのか」
「アサンが中心の連合王国ですぅ」
アサン王国はヒスマッフェの世界一周より先に世界一周を成し遂げた海軍力を持つ。何より、世界一周をしたという事は、西方大陸についても知っている。
「なぜ成立した?」
「危機感ではぁ? 西方大陸は特殊ですからぁ」
……やはり『魔女』か。というか、この忠告の仕方だと、帝国側での参戦じゃねぇな。
それとこれを教えてくるのは、彼らの海軍力は、黄金羊商会にとっても邪魔だからか。
「情報提供には感謝する」
「酷いですぅ」
次はタブレン島か……また次から次へと。勘弁してほしいな。