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2 なぜそっちの手を取るのか



 テアーナベ連合とは、俺が傀儡皇帝だった頃に独立宣言した旧帝国領の一地域である。一つの侯爵領と四つの伯爵領からなるこの地域は、元々『テアーナベ語』があるように、帝国の領邦の中ではかなり独自色の強い場所だった。

 とはいえ、帝国との関係が悪かった訳ではない。むしろ帝国内では辺境に位置するこの地域には、昔から一定の自治が与えられてきた。地図を見れば分かると思うが、帝都からみるとド辺境だからな。だから逆らわない限りはゴティロワ族領のように、高い自治を与えても問題なかった。

 宰相と式部卿の派閥争いの最中にあっても、彼らが「中立派」としてまとまって距離を置けたのもこの自治権の高さからだった。だが、彼らはとある商会に焚きつけられ、まんまと独立してしまう。


 ……とはいえ、俺個人としてはこの独立は理解できる。むしろ自然な流れにすら思えるくらいだ。

 だって宰相派と摂政派の政争って、言ってしまえばブングダルト人の内紛だからな。それも皇族であるガーデの血統同士の争い。ただその規模が帝国全土を巻き込むレベルだったから、ほとんどの貴族や民族は巻き込まれざるを得なかった。

 そんな中、この争いから距離を取れたテアーナベ人貴族が、千載一遇のチャンスだと独立を志すのも当たり前の話ではなかろうか。


 だが、彼らには三つの想定外があった。一つは、テアーナベ「連合」の名前からも分かる通り、強力なリーダーシップを発揮する「王」を擁立できなかったこと。もう一つは、自分たちを焚きつけた黄金羊商会が、早々に自分たちを見限って帝国側に付いたこと。

 そして何より、しばらく続くと思っていた帝国の派閥争いが、早々に終わってしまったこと。これが最大の誤算だったろう。俺が粛清という形で無理やり決着をつけた結果、彼らは国家としての基盤を未だに整えられていない。



 そして彼らは……最終的に、帝国に頭を下げるのではなく、宗派も思想も異なる連中の方を選んだらしい。

「やはり、テアーナベ連合も不作気味。そこから略奪するより、帝国を相手にした方が良いとトミス=アシナクィは判断したのか……?」

 まぁ、テアーナベ連合が独立宣言したころから、トミス=アシナクィは彼らを支援していた。両勢力の間には交流もあったのかもしれない。それにしてもテアーナベ連合はさぁ、なんでそっちを選んじゃうかな。

「改めてお聞きしますが、テアーナベ連合はトミス=アシナクィに『降伏』したわけではないのでね?」

 フールドラン子爵の確認に、宮中伯は入ってきた情報をより正確に提示する。

「えぇ。正確には『テアーナベ連合』を解体し、当該地域の一侯四伯の貴族領を独立させたうえで、それぞれとトミス=アシナクィが対等な同盟を結ぶ……これが両勢力の間で交わされた協定のようです」


 もちろん、対等な同盟なんていうものが方便なのは分かり切っている。本当に対等なら、テアーナベ連合をわざわざ解体させたりしない。その一手間を加えた以上、トミス=アシナクィが「主」でテアーナベ連合が「従」の関係だ。むしろ問題なのは……。

「まさに急転直下、ですな。一切の交戦もなくテアーナベ連合がトミス=アシナクィに吸収合併されるとは」

 本当にな……元の鞘に収まるのではなく、よりによってトミス=アシナクィを選ぶとは。

「しかし、相手はあの『継承派』ですよ? テアーナベ連合の諸侯は改宗を受け入れたので?」

 フールドラン子爵もそこは疑問に思うらしい。それに対する事実は、極めてシンプルだ。

「いいや。どうも……彼らはそのまま、西方派の信仰を認められているらしい」

「……馬鹿な。あの、継承派がですか!?」

 いや、ほんとそれな。正直、これが一番信じ難い事実なんだよね。



 聖一教は現在、いくつもの宗派に分裂している。中でも最も過激と言われるのが「継承派」である。彼らは聖一教の歴史において、最初期に分裂した一派……正確に言えば、過激すぎて主流派から追放された連中が、「自分たちこそ正しい教えを継承している」と主張したのが名前の起源になっている。

 まぁ実際に彼らが継承したのは、中央大陸にいた頃に迫害されたことに対する「憎しみ」なのだろう。授聖者アインが他者を憎むなと諭す中、それでも忘れずに憎しみを抱きつづけた結果の過激思想。それがアインの死によって抑えられなくなったのだろう。


 そして聖一教の主流派が天届山脈以東に根を張り広がっていく中、彼らは天届山脈以西で勢力を広げようとした。その流れの中で、ロタール帝国がこの継承派に改宗したりした。

 しかしロタール帝国と継承派は、一時的な利害は一致しても、根本的な部分では決定的に相容れなかった。ロタール帝国は継承派の中でも穏健な一派を「西方派」として都合よく独立させ、異教徒に対し攻撃的だった継承派は異端として排除した。


 ただでさえ過激な思想を持っていた上に、こうして帝国の都合で切り捨てられた彼らは、より過激に、より苛烈になっていった。現在では異教に対して以上に、異端に対して過激になっているくらいに……それが現在の継承派である。

 そして、その継承派を唯一国教とする国家がトミス=アシナクィである。というか、トミス=アシナクィと継承派はほぼ同義だ。トミス=アシナクィの国民は全員が継承派か、あるいは継承派であると偽って生活している。国家の運営は全て継承派の聖職者によって行われ、国家元首も当然、継承派の指導者が兼任する。そもそも、時の宗教指導者トミスが建国したからトミス=アシナクィと名乗っている訳だし。だからこの国は王国でも共和国でもないのだ。


 一方、テアーナベ連合の貴族は西方派の帝国から独立したのだから、当然西方派。継承派が最も嫌う異端である。

「無実の継承派信者ですら拷問によって自白を強要し、異端として処刑する……そのような連中と聞いています。それが、異端である西方派を認めるなんて……」

 粛清と抑圧。密告による監視社会。これによって成立した恐怖政治……それがトミス=アシナクィという国家である。人間としてどうかと思うが、そういう国家運営が成立してしまうことを俺は前世の記憶で知っている。


 ちなみに、今は停止している「異端審問」のシステムが西方派にあったのは、継承派から分裂した際の名残である。

「だが事実、彼らの信仰は保障されております……今のところは」

 宮中伯が最後に一言付け加えたように、これが永続的な処置でないことなど簡単に想像できる。その共存ができないからベルべー王国は滅びかけたんだし。

「当然、後で反故にするだろうな」

 そもそも、継承派信者はトミス=アシナクィにしかいないし、トミス=アシナクィ人は全員継承派である……と言っても過言ではないくらい、孤立した連中だ。外交においては最初から不利を背負っている。


 しかし、孤立した集団とはある種の団結を生む。そうしなければ生き残れないからだ。

 そして彼らの視点で見れば、自国以外は全て異端で、その異端の国に囲まれているのが現状。しかも目の前で日々異端審問の苛烈さを見せられている継承派信者にとって、降伏は死と同義か、あるいはそれ以上に悲惨なものに映る。だから彼らは、死ぬ物狂いで戦うのだ……ベルべー王国がトミス=アシナクィ軍に苦戦していた理由はこの点にある。


「しかし、一時的とはいえ継承派らしくない選択のように見えますな」

 これについては俺もニュンバル侯と同じ考えだ。この妥協は普通の国がする選択だ。

「不純物の混ざらない狂気が彼らの強みだった。よりによって内側に、異端の人間を迎え入れるとは……」

 間違いなく国内での争いの火種になるだろう。異端でなくとも異端として処されるような国で、恐怖によって支配されている民衆からすれば、今回の処置には不満が募るだろう。

「あるいはその不満の矛先すら、勝利で洗い流せると考えているのでは」

 ……なるほど。フールドラン子爵の予想にも一理あるな。結局、戦争に勝てば多少の不満は水に流せてしまう。



「しかし問題は……考えなくても後で反故にされると分かり切っているこの特別措置を、よりによってテアーナベ連合が受け入れてしまったことだ。こんな単純なことすら分からない連中だったのか?」

 正直、テアーナベ連合として独立しようとした貴族たちのことを俺はほとんど知らない。中立派貴族だったとはいえ、別に俺と関わりがあった訳じゃないからな。それでもこれくらいは普通、分かるだろう。

「心当たりと言えば、一つしかございません」

「何かあるのか、宮中伯」

 そこまで帝国を嫌悪する理由もないと思うが。


「現在、陛下の国内政策……特に貴族に対する処置は、極めて寛容なものとなっております。宰相派、摂政派についた貴族の多くを許し、また反乱を起こした貴族の血縁者であっても、本人が加担していなければ一切罪に問うこともありません」

 まぁ、理由なく処罰したら暴政だし。あと複雑な血縁関係が結ばれた貴族社会で片っ端から罪に問うとか、現実的ではないからな。

「しかし、唯一の例外となっているもの……それがアキカール人貴族に対する処置です。分裂したアキカール家の争いと共に、陛下は彼らに出血を強い、そして現在も降伏を許さない姿勢をとっています」

「あー……そうか。内戦で戦った貴族は多くがロタール人かブングダルト人。彼らに対して寛容でも、それ以外の貴族に対しては強硬な姿勢だと思われたわけか」

 つまり、アキカール人貴族の末路が自分たちの辿る未来だと考えてしまったらしい。それでもっとヤバい連中に魂売るのは本末転倒だと思うけどな。



 すると今度は、ティモナが口を開く。

「もう一つ、心当たりがございます」

 ここまで一言も発さずにいたティモナの発言に、俺は頷いて続きを促す。

「言ってみよ」

「この宮廷がまだ宰相らに支配されていた頃、陛下はテアーナベ連合の討伐を強く求めた経緯がございます。そしてその後も、実際に前線を訪れ進捗を確認なさりました」

 あぁ、確かにそんなこともあったな。でもあれはテアーナベ連合というより黄金羊商会を警戒しての行動だし、その黄金羊商会がテアーナベ連合ではなく帝国を選んだ時点で固執する理由もなくなった。

 最近のテアーナベ領への出兵も、俺の考えというより貴族からの要求だからな。


 俺が皇帝になってから独立宣言されてしまった都合上、皇帝の威信を守るためには彼らの独立を認めるわけにはいかないが……別に滅ぼしたくてしょうがないって訳ではない。むしろ皇帝のメンツを考えなければ、帝国としてはテアーナベ連合が降伏せずとも、従属国家になるならそれでもいいくらいだ。

 それくらい、帝都から見ると遠い地にあるし、文化も違う。もちろん、現地の産業は発展しているから統治できるに越したことは無いが……それで定期的に反乱起こされるようでは割に合わない。


 ……だが問題は、そんな俺の考えを彼らは知る由もないという事か。

「我々は当時の陛下の思惑も、そして傀儡に甘んじるしかなかった状況も理解しております。しかし彼らはそれを知りません」

「確かにあの頃、陛下が宰相にテアーナベ連合の討伐はまだかと詰め寄ったことも、その後報告された小さな戦果に異常なまでに喜んだ事も、かなり広まっておりましたな」

 そうか、ニュンバル侯視点でもそうなのか。

「嘲笑と共にか?」

「それは……」

 言葉を濁すニュンバル侯とは違い、フールドラン子爵は納得した様子で呟く。

「帝国では笑い話でも、彼らにとっては笑えない話でしょうな」



 ……あれ? ということは、テアーナベ連合をここまで追い込んだの、俺が原因ってことになるのか。

「……アキカール人貴族は過去にも幾度となく帝国に反旗を翻した歴史があり、そしてその土地も帝国としては野放しにできない位置にある。一方、テアーナベ人貴族の土地は辺境にある。時間や兵力を費やして支配するだけのメリットのあるアキカール人の土地と、そのメリットがないテアーナベ人の土地では、帝国がとる戦略も当然変わるだろう」

「そのように帝国の国益になるかどうかで判断する合理的な君主であられることを、彼らは知りません」

 俺の言い訳のような言葉が、ティモナの正論でバッサリと切り捨てられる。


 ……確かに、テアーナベ連合に関してはトミス=アシナクィ相手の緩衝地帯になっているし、後回しにしてもいいかって考えはずっとあった。だが、放置しすぎたらしい。

「そこまで追い込んだつもりは無かったが、国力差を考えれば過剰な反応をするのも当たり前か……降伏し余の下に頭を下げに来れば、自治くらいは認めてやるつもりだったのだが、今となっては無理だな」

 気を付けているつもりだけど、ミスとか見逃してることが多いよなぁ。自信無くすわー。

 ……でも独立宣言をされた以上、メンツ的にこっちから話し合いを打診するのは無理だよなぁ。



「陛下、改めてまして……トミス=アシナクィへの対応、如何なさるおつもりで」

 今、付近の諸侯を帝都に集めてはいるが、まぁ方針は俺が決めるべきだろうな。

 もちろん、ワルン公やチャムノ伯、ゴティロワ族長辺りがいれば彼らの意見はぜひ聞きたいところだが、彼らは前線にいるからな。

「この件は最優先で対応することにしよう。送れる限りの兵力を送り、撃退のみならず逆侵攻まで行う」

 まぁ、皇国戦を前に周辺国境の安定化は必要だった。想定していた相手ではなくなったが、今回の戦争も向こうから仕掛けてきてくれて手間が減った……と、考えることにしよう。


 さて、重要なのは敵の強さと最終的な目標だ。今回の敵はトミス=アシナクィ……ロザリアの実家、ベルベー王国が長年苦戦した相手。他国から見れば狂信者の軍勢だ……内情が恐怖による統治の結果だとしても、侮れる敵ではない。

 しかも今回、彼らは飢えている可能性がある。その場合、空腹で士気が低下しているのか、あるいは反対に帝国が抱える食糧を求めて士気が上がっているのか、これは現時点では判断しかねる。

 無論、今回の吸収合併で内部に不和が生まれている可能性もあるが、そこに期待しすぎるのも良くない。ガーフル共和国くらいの国家を相手にすると考えるべきだろう。だとすると……。

「投入する兵力は少し過分なくらいがちょうどいいか。ニュンバル侯、補給はどのくらい耐えられるだろうか」

「帝都の備蓄はかなり余裕がございます。また、対ガーフル、対ロコートの戦争が早期に片付いたため、準備していた兵糧も残っている状況です。補給路に関してですが、ベイラー=トレ伯領とクシャッド伯領の反乱鎮圧のため、既に街道整備は済ませ、保管拠点も確立されておりますので……一年近くは耐えられるかと。もちろん、その補給路や……帝都が攻撃されない前提ですが」

 帝都のことは付け加えなくても分かっておりますとも。今回の宮廷が襲撃された事件に関して、口にしないだけでニュンバル侯としても思うところはあるのかもしれない。


「となると、最優先は反乱軍と侵攻軍の合流阻止。その後防衛が安定すれば先に反乱の鎮圧を完遂することもできるか……逆侵攻のことも考えれば、やはりどれくらい増援を送ったところで、送り過ぎという事にはならなそうだな」

 ……しかしアプラーダ王国の攻略は諦めたくない。明確に目標があるし、そもそもアプラーダ王国攻略軍は現在、アプラーダ王国の奥深くにまで侵攻しているはず。距離的にも彼らを呼び戻すというのは現実的ではない。


 となると、呼び戻すべきは目標がない……というか、ロコート王国との講和で事情が変わったところだな。早々に切り上げ、その戦力を対トミス=アシナクィに回すべきだろう。

「よし、ベニマ王国と講和を結ぼう。まだロコート王国の使節団は帰国していなかったな?」

 欲を言えばもう少し成果が欲しかった。対峙しているワルン公だって、むしろここから攻めに転じようという場面だ。勿体ないとは思う。


 だが、アプラーダ王国やロコート王国とは異なり、そもそもベニマ王国には領土を取られていない。そしてもし、今後再び交戦するのであれば国境付近の丘陵地帯は確保したいところではあったが……帝国は既に、ベニマ王国の同盟国であるロコート王国と、単なる講和ではなく、より発展した条約を結んでいる。そしてそのロコート王国が、ベニマ王国から帝国が領土を得ることを望んでいない。

 もちろん、力関係は帝国が有利だ。ロコート王国の意向など無視してもいい。だが、そのリスクに見合うだけの結果が得られそうにない。

「まだ宮廷におられます。ですがもう間もなく帰国なされる予定ではあったかと」

「引き留めてくれ。ベニマ王国と講和を結ぶ際の仲介役にしよう……それを望んでいるようだったし、喜んで引き受けてくれるだろう」

 彼らの思惑通りになってる感じが癪に障るが、これが帝国として最善だろう。



 俺の言葉に頷いた宮中伯が、使節団を引き留めるための手配をすべく、部屋から離れる。

 その間、少し言葉を探すように逡巡していたニュンバル侯が、口を開く。

「しかし……先ほどのティモナ殿の『見られ方』の話でふと思い浮かんだことで……決して意見するつもりではないのですが……」

 随分と回りくどい言い方をするなぁ。別に、ニュンバル侯なら意見だろうが批判だろうが好きにしてくれて構わないんだが。

「そう気をつかわれると狭量な君主と思われているのではと不安になるな……なんだ?」


「いえ、もしかするとこの講和を結ぶ判断の早さが、トミス=アシナクィが攻め込んできた理由かもしれないなと思いまして」

 そしてニュンバル侯は首を横に振りながらさらに続ける。

「無論、財務卿としては陛下の無駄のない、早い段階での講和判断については正しいものと断言できます。即位の儀以降、陛下は意味のない戦争、無駄な戦いは徹底して避けてこられました。むしろ、その若さで名声に執着せず、感情よりも国益を優先する姿には日々感嘆するばかりです」

 いや、俺もそこそこ名声には執着してると思うぞ。


 しかしまぁ、講和の判断は確かに早いかもな。だが中途半端に戦果の拡大を狙い、戦闘が長期化し泥沼化し結果的に得たものと代償が見合わない……というのは最も避けるべきだと思っている。

 兵力も兵糧も、そして時間すらも有限のリソースだ。無駄は決して許されない。ただでさえ、人の命を数字に換算するなんて罪深いことをやってんだから。

「しかしながら、周辺諸国にはそれが分からないのかもしれません。これまで陛下は、自ら他国に戦争を仕掛けることもなく、また一度か二度大勝すると、即座に講和を結んでこられましたので」

 戦争を仕掛けてないっていうか、そんな余裕もなく周辺国が次々と仕掛けてくるって感じだけどな?

 ……でもニュンバル候の言いたいことは何となく分かった。

「なるほど。つまり、余は消極的で逃げ腰な君主だと舐められている訳だ」

「いえ、そこまでは言っておりませんが」

 ニュンバル侯が否定したところで、ちょうど宮中伯が戻ってくる。


「……何か良いことでも?」

「いや? ……あぁ、そうか。余は笑っているのか」

 ニュンバル侯が俺を怒らせたのかと慌てているが、俺はそれは違うと手を振る。例えるなら……獲物が罠にかかった気分だ。

「陛下、ベニマ王国と早期に講和を結ぶ件については分かりました。しかしトミス=アシナクィの侵攻に対しては、現状どのような方針をお持ちでしょうか」

 俺はそう訊ねる宮中伯に、きっぱりと宣言する。


「ここで滅ぼす。徹底的に、確実に」


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― 新着の感想 ―
執筆お疲れ様です! 許してくれるとは夢にも思ってないテアーナベと、 国内の反乱扱いだから、皇帝のメンツにかけて自分からは交渉にいけない帝国と、難儀ですね だいぶ前に会戦で大敗した訳ですし、国家とし…
テアーナベ連合に対して放置し続けてたのは明確にミスだよね こんな感じのミスは珍しいけど ほんとにずっと放置してたからな…他に色々手を回しててやること一杯だったとはいえ…家臣も誰か言えばいいのに… …
皇帝襲撃編のままなのはミスでしょうか?
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