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皇王亡命編1


 皇王の亡命……それは前代未聞の大事件だ。


 皇太子の失脚から自身も権力を失い、貴族らに実権を奪われ幽閉状態にあった皇王ヘルムート二世。

 彼は何を血迷ったのか、恐らく天届山脈にある回廊を抜けて皇国から帝国へ亡命。突如として帝都に現れた皇王に、驚いた帝都から報告が届いたのがつい先ほど。


 そして今、天幕でその報告を受けた俺は頭を抱えていた。



 何がやばいって、元皇王じゃないんだよなぁ、皇王(コイツ)。現役の君主が亡命ってほとんど聞いたことがない。

 普通、こういう亡命事件というのは君主が退位してからか、あるいは国が滅ぶときに起きるものだ。


 なぜなら、平時において君主は亡命しようと思うような事態に普通はならない。衣食住には困らないし、内心は別として貴族から敬われるし、やろうと思えばいくらでも仕事はサボれるからな。

 暗愚な君主で良いなら、働かず、食に困らず、貴族を顎で使い、平民を使い潰す。自分の命令を誰もが聞くんだから、それはもう神にでもなった気分でいられるだろう。


 ……まともな知識さえなければ、傀儡だろうが逃げたいなんて思わないだろう。

 そして、そうではない場合……命の危険を感じ、逃げなければと思うような状況において、普通は逃げられないように厳重に監視される。

 逃げられるようになるのは、退位して用済みとなり、かつ温情で命を許された場合か、あるいは監視を受ける前に逃げおおせた場合くらいだろう。


 だが今回の場合、皇王は元皇太子とともに軟禁状態にあったという話も出ている。つまり、皇国はこの皇王を、次代の皇王に継承させるための暫定的な存在……継承装置として扱っていたということが分かる。

 継承への正当性を損なわないためにも、皇国としては絶対に手元に置かなければならない存在。それが、逃げ出してしまった……普通はあり得ないことが起きている。


 それも、逃げ出した先がよりによって、長年にわたり対立を続けてきた帝国だ。

 フランス革命期のルイ十六世なんか、オーストリアに亡命しようとして失敗。それまで彼を尊敬していた民衆からも反発され、結果的に断頭台の露と消えた。

 今回の一件は色々と事情や条件が異なる。この事件と全く同じと言うことはできないだろう。それでも、これが戦争の火種となる可能性は極めて高い。


 だが皇帝として、この亡命を受け入れないというのは悪手……外交的にも内情的にもあり得ない判断だ。突き返せば皇国に臆したと見られかねないし、亡命を拒否したところで皇国でも帝国でもない第三国に逃げられるだけだ。

 それこそ、リカリヤ王国のような新興国家の手に渡れば……今以上に悪い盤面になるだろう。皇国に対する駒として使ってもらえればいいが、帝国に対する策謀の道具に使われる可能性があるからな。


 そもそも、皇国に対する戦争の火種という意味では皇王の亡命自体はラッキーなことなのだ。今後百年くらい、帝国が皇国に対し優位に立てるよう、皇国の国力は削っておきたい……そのために皇王の亡命は、大義名分としてちょうどいい。



 問題は、タイミングだ。今の帝国は南方三国と戦争中だし、それ以外にも交戦相手を内外に抱えている。それらを片付けた後なら皇国に対し攻撃を仕掛ける「大義名分」となったのだが、今は皇国が帝国に攻撃を仕掛ける理由になってしまっている。

 こんな状況で皇王の亡命を許せば、主導権が皇国の方に行きかねない。特に皇王の亡命を許した皇国の面子(メンツ)はズタズタだからな。その失態を取り消すために強硬手段に出てくる可能性もある。

 ……亡命を受け入れれば、帝国への宣戦布告も、皇王の処遇も、皇国の好きなタイミングで動けてしまうんだよなぁ。


 戦争も謀略も、基本的には仕掛ける側が有利だ。帝国と皇国の対立において、皇国に主導権を握られるのは強烈なリスク。一方で受け入れない場合は、皇王という政治上の劇物が帝国の手で制御できないことになってしまう。ある程度動きの読める皇国との対立より、酷い盤面ができるかもしれない。

 この二択、どっち選んでも地獄だ。どうしたもんかなぁ。



 ……ダメだ。そもそも、どう考えたって情報が足りない。まずはそこからだな。

「陛下」

 判断を仰ぐティモナに、俺は頭の中でやるべきことをまとめる。

「ティモナ、俺は今から倒れる」

「……は?」

 ティモナが珍しい反応をする。たぶんティモナも突然の報に焦っていたのだろう。

「その衝撃的な報告を聞いて失神した、いや元から体調不良の兆候があったでもいいな。なんでもいいから、俺は今倒れて病の身となる。だからすぐに帝都には戻れない」


 ここから数日はこの天幕に引き籠ることにする。その間に、こっちはひたすら情報集めだ。下手に動いて事態を悪化させるより、より詳しく情勢を把握してから動く方が良いだろう。

 基本的に、素早い行動は重要だ。兵は拙速を尊ぶと言うしな。だが今回の場合で言えば、既に後手に回っている。ここは開き直って慎重に動いた方が良い。

「なるほど、時間稼ぎですね!」

 この状況でもテンションの変わらないエタエク伯に、俺はもはや感心するよ。

「それと、この場にいる全員に緘口令を敷く。各自天幕に待機、監視は密偵が行え。監視抜きでは他者との接触も出歩くのも禁止な」

 まぁ、酷い巻き添えを食らったと思って諦めてくれたまえ。


「了解いたしました!」

 ……この命令で元気よく返事できるお前本当に凄いよ、エタエク伯。恐ろしいことに頼もしさすら感じてしまう。元気が良いだけなのに。

「宮中伯、皇国内の詳細な情報が欲しい。現地の密偵から拾えるだけ情報を拾ってくれ。それと、可能なら亡命してきた人間の詳細な趣味嗜好が知りたい。優先するのは皇王と元皇太子だ」

「承知しました」

 今はとにかく情報が欲しい。……いや、でも少しは時間稼ぎも必要かもな。


「あとは……そうだな、事情を知らない人間を使者として皇国に送れ。こちらは困惑しているというアピールがしたい。皇王が現皇王なのか、元皇王なのか。亡命なのか、追放なのか……そういった現状すらも分からない感じで頼む」

 少しでも油断を誘って皇国の動きを遅くしたい。皇王の亡命なんて未曽有の事態、困惑するのは自然な反応だからな。

 ……いや、むしろ皇国に対し、協力的なように振舞った方がいいか。その方が時間を稼げそうな気がする。

「加えて、皇国の希望を聞くとしよう。身柄を拘束の上、即時の引き渡しを要求するだろうが……こっちから伺いを立てるだけで協力的な雰囲気を演出できる」

 まぁ、聞くだけだが。希望を聞いたからと言ってその通りに動く気は無いからな。それでも、これで数日は時間が稼げるだろう。


「なるほど。しかし、皇王一行に対し門前払いとしなかった時点で怪しまれるかもしれません。それについては?」

 ヴォデッド宮中伯の懸念はもっともだ。こっちの思惑を勘づかれたくないし、そこも考えておくべきだな。

「そうだな……では、皇王一行が『亡命の受け入れを断れば第三国に亡命する』と主張している……と偽ってくれ。これで門前払いしなかった理由にはなるだろう」

 下手に拒否すれば皇国にとっても不幸な事態になりかねないと思ったから……そういうニュアンスで伝えられるはずだ。

「そちらも重ねて承りました」


 他に手配しておくべきは……皇国相手だけではないな。

「金が無駄になるから、兵士は帝都に戻していい。この距離なら何かあっても帝都から兵士を呼び戻せる」

 これはちょっとした抑止力になるだろう。もちろん亡命してきた皇王一行に対しての牽制にもなる。皇帝不在の宮廷で、良からぬことを考えないように……という。

 だがそれ以上に、俺の治世を快く思わない貴族や商人に対する威圧行為としてこれは必要だ。


 特に貴族については、仕事のない小貴族が帝都には大量にいる。分かりやすく言えば、職を失った元官僚や元代官……といったところだろうか。彼らは皇帝カーマインの治世を快く思わないだろうからな。そういう連中が変な気を起こし、実力行使にでも出たら流石に厄介だ。


 まぁ、俺は平民には優しいが貴族には厳しいからな。まともに働く気のない職無し貴族連中は俺の足を引っ張りたくて仕方ないのだ……あぁ、そういえば。

「帝都に辿り着かれるまで気が付けなかった原因を探れ。責任者は処分する」

 たぶん旧ラウルの貴族だろうが。理由がないから処罰してこなかったけど、理由があるならきっちりと潰す。別にラウル貴族に思い入れとかないし。

 何より今回の一件、軟禁先から逃がしてしまった皇国もそうだが、帝都に侵入されるまで捕捉できなかった帝国の方も、面子が丸潰れだからな。


 ちゃんと犯人の首を刎ねないと、関係ない人間が代わりに首を刎ねられてしまう……それはあまりに可哀そうだ。

 ちなみに誰の首も飛ばない可能性は無い。そんな事をすれば、帝国が皇王を積極的に引き入れたのではないかと疑われかねない。

「こっちはティモナ、任せていいか」

「かしこまりました」

 そう言ってティモナが一礼した直後、今度は宮中伯が訊ねてくる。

「では陛下の護衛は?」

 ……言外に近衛だけでは不安だってか。俺は足りてると思うけどね。


 そう答えようと思い、俺が口を開こうとしたその時、視界の端に目を輝かせた貴族が映り込んだ。

「……ではエタエク伯家に任せよう」

 なんで仕事が増えるのに目が輝くんでしょうか。

「はっ! お任せください!! 配下への伝令は宮中伯にお願いしてよろしいでしょうか!」

「えぇ、それで構いません」

 はぁ……まぁいいけどさぁ。


***


 それから一週間、俺はこの地で野営を続けた。皇帝が病に()せっているという情報は、瞬く間に広がった……というか、たぶん密偵が広めてくれた。帝都でもこれが事実として広まっているらしい。本当に便利だな、密偵って。


 さて、問題の亡命してきたヘルムート二世についてだが、これは未だに現皇王で間違いない。一週間経った現在でも、次の皇王は擁立されていない。

 これが()皇王なら対皇国出兵の時に担ぎやすいんだけど、現皇王は……流石にちょっと重すぎる。

 お陰でこっちの動きは色々と制限される……だが幸いなことに、同じくらい皇国の採れる行動も制限される。


 当然、皇国内でもさすがに現状はマズいと考えているようで、新皇王擁立に向けて動き始めているとか。ただ、そう上手くいかない事情がある。みんな大好き派閥争いだ。



 そもそも、皇国とは聖一教の影響力が強い国家だ。国教としている聖皇派は、皇国と一心同体と言っていいほどつながりが強い。歴代の王朝はこの聖皇派の影響を常に受け続けてきた……だが、時には対立もした。

 特に現在の王朝、テイワ朝は聖皇派の影響力を極力排除しようと生まれた王朝だ。この辺りの争いは……やはり地球の歴史で例えるなら叙任権闘争だろうか。まぁ、あそこまで派手にはぶつかってないようだけど。


 さて、現在帝国に亡命してきている皇王は、かつて皇国で宮宰のお飾りとなっていた君主だ。当時、宮宰として辣腕を振るっていたのはジークベルト・ヴェンデーリン・フォン・フレンツェン=オレンガウ。彼の独裁の下、皇国はそれなりの安定を享受していた。

 ……ちなみにこの宮宰、皇国の実質的支配者だったが、話を聞く限りと宰相や式部卿より百倍まともに国のために働いている。マジで羨ましい(許せん)


 そんな宮宰は、クーデターにより先代皇王を放逐した男だった。その後、前皇王は聖皇派と組んでクーデターを計画するも露見。先に動いた宮宰によって逃げ込んだ教会ごと焼き殺されたという。

 しかし、ここまで露骨に関与しても聖皇派やそのトップの聖導統はお咎めなしになる辺り、力を持った宗教権威ってのは面倒だよな。



 さて、そんな宮宰の手によって即位したヘルムート二世は確かにお飾りだったのだろう。それを自覚していたヘルムート二世は、尚も野心を隠さない聖皇派も巻き込み出家騒動を引き起こした。

 簡単に言えば、皇王を辞めて聖職者になると脅した訳だ。


 見方によっては、宮宰の傀儡から聖導統の傀儡に乗り換えると言ってるようなものだけどな。

 だが結局、ヘルムート二世は元鞘に収まってしまった。条件とした「前皇王の家系を粛清する」というものを宮宰が受け入れ、達成したからだ。だからもう、前皇王の家系は()()()()()残っていない。


 そして残されたのは、宮宰と教会の対立構造である。恐らくこの時、ヘルムート二世は聖皇派に見限られたのだろう。せっかく支援したのにあっさりと宮宰の独裁を再び受け入れた皇王を、聖導統が面白く思うはずがない。

 あと、この時宮宰は前皇王の家系を騙し討ちで殺した訳だが……これがかなり他の貴族からの反感を買ったようだ。


 その後、孤立した宮宰は何者かによって暗殺された。そして空いた権力の座を巡って政争が発生する。

 この政争は帝国の宰相派、摂政派の争いのようにきれいに分かれていた訳ではないようだ。曲がりなりにも、宰相と式部卿にはリーターシップがあったということだ。



 それでも大きく分ければ対立の主軸は二つ。宮宰の政策を引き継ぐか、批判するか。聖皇派の政治介入を認めるか、認めないか。そこに貴族同士の繋がりや利権も絡んでいたのだから、まぁ複雑だろうよ。

 その分、帝国の政争とは違い、緩やかだったようだが。


 そんな政争の中で、貴族以外にも権力を手にしようとした者がいたらしい。

 それがヘルムート二世の長男で皇太子だったニコライ・エアハルトだ。彼は自分が政治の実権を握ろうと色々画策したらしい。独裁状態にあった宮宰のように、権力を自身に集め、政治に無関心な父親に代わって親政を行いたかったのだろう。

 だが彼には、宮宰のようなカリスマ性も頭脳もなかった。まぁ、最初っから独裁する気満々で動けば反発されるのは当たり前だろうね。


 どの派閥も彼に味方することなく、むしろ一致団結して皇太子を失脚へと追い込むことにしたようだ。どんだけ人望無いんだよ、コイツ。

 んで、そんな皇太子をよせばいいのにヘルムート二世は庇ってしまった。

 自分の息子を庇いたい気持ちは分かるけどねぇ。普段政治に興味なかったから傀儡として見逃されてきたのに、そんなタイミングでいきなり口出しすれば、そりゃ排除されるでしょ。


 だって貴族たちからすれば、これで皇太子が復権してしまえば、失脚に追い込んだ自分たちが今度は失脚させられるんだから。だったら「いっそ先に動いて皇王を幽閉してしまおう」ってなるのも、まぁ当然の判断だな。

 その後、軟禁状態にあった皇王と皇太子は幽閉先から上手く脱出に成功し、無事に帝都まで辿りつきましたとさ、めでたしめでたし。


 ……いや、これはおかしい。あまりに怪しすぎるだろう。だってこの感じだと、「親教会派」とか「反教会派」はいても、「ヘルムート二世派」は存在しなさそうなんだよ。

 貴族も聖皇派も、皇王を助ける理由がない。彼らとしては、皇王らを幽閉している間に政争で次期皇王を決めて、役目を終えた皇王に譲位させる算段だったはずなのだから。

 なのに、軟禁状態から上手いこと脱出に成功している……いったい誰がそれに協力したのか。あからさまな謀略の匂いがする。たぶんこの亡命、何者かによって仕組まれている。


 その場合の狙いは何だろうか。邪魔な皇王の処分か、帝国を脅威に仕立て上げて皇国内での団結を図っているのか、あるいはその両方か。

 こうなってくると、フィクマのローデリヒ・フィリックスなんかも関わっていそうで怪しくなってくる。あの男の思惑は読めないが、その出自が前皇王の一族の生き残りなんだから、ヘルムート二世に好意的なはずがない。


 とはいえ、証拠もないから誰の思惑で踊らされてるのかもわからない……まぁ仮にそうだとしても、それが帝国の利益につながるならいくらでも踊ってやるけどね。



 それはさておき、その皇王が逃げ出した今の皇国における政争だが……これは大きく分けて三つの勢力に集約されたようだ。

 一つ目はヘルムート二世の三男を担ぎ出した勢力。現在、皇国の最大派閥である。

 その特色は親聖皇派。支持基盤が聖職者である以上、日常生活で彼らと否が応でも関わる平民からの支持も得られやすい。聖皇派の聖地である「聖都」はもちろん、地方の大貴族も多く所属するため、面積で言えば皇国の半分近くがこの派閥だと思われる。普通に考えれば彼らが優勢だろう。


 だがそう上手くもいかない事情があるらしい。それが派閥内での主導権争いだ。政治に介入したくてしょうがない聖導統と、自分たちが派閥を主導したい大貴族の間には確かな溝があるようだ。帝国の政争……宰相派にも摂政派にも、そういう動きは大小の差はあれど存在した。大派閥の宿命かもな。

 すぐに分裂するようなことはないだろうが、一枚岩でないことは間違いない。


 二つ目はヘルムート二世の次男を担ぎ上げた派閥。その特色は何といっても反教権的な点にある。

 常に聖皇派の政治介入に抵抗してきた宮宰の方針を引き継いでいる彼らは、親教会派に見劣りしない勢力を誇っている。

 何より、宮宰独裁時代に中枢にいた大貴族らが核になっているため、他の派閥に比べて比較的まとまっている。また宮宰の時代の復活を望む者……宮廷で今も働く官僚や、宮宰の時代に宮廷で働いていて、その後職を失った貴族たちも多く参加する派閥であり、彼らは現首都である「皇都」とかつての首都である「旧都」の両方を実質的に押さえていると言っていい。


 ただ宮宰の政策を引き継ごうとしているところからも分かる通り、当時宮宰に敵対していた貴族、宮宰によって粛清された前皇王及びその一族、また彼らの支持者だった者からは強烈に敵視されている。

 この派閥はまとまりがあるが、孤立しているという印象だろうか。

 そして最後に、ヘルムート二世の四男の派閥。ここは最も勢力が小さいものの、他の派閥が無視できるほどは小さくない。またこの派閥は宮宰によって粛清された前皇王やその一族の名誉回復を約束しており、それらの勢力からの支持を少しずつ集め始めている。


 まぁ、ちょっとなりふり構わず動いてる感は否めないけどな。そうでもしないと、四男が皇王になるのは厳しいのだろう。

 このように、皇国貴族らは皇太子を失脚させ皇王と共に幽閉したときから次期皇太子の座を巡って争っているそうだ。

 もっとも、どの派閥もヘルムート二世の子供を担ぎ出してはいるが、それは貴族らが正当性を欲した結果であり、彼らに実権はないと思われる。実権を得ようとした皇太子が失脚してるんだから、そう見るのが自然だろう。これ、このまま放置してたら王朝交代とかありそうだよね。


 ……それにしても、本当に誰もヘルムート二世を擁護してないんだよなぁ。そんな奴を受け入れなきゃいけないのか、俺は……面倒だなぁ。

 ともかく、これらの派閥は皇王らが国から逃げ出すという異常事態が起きた現在、新皇王を擁立しなければいけないという考えでは一致している。だが、事件が起きる以前から皇子たちを担いで後継者争いをしていたため、引くに引けない状態になっているようだ。


 よりにもよって皇太子だった長男も帝国に亡命してきてるからね。それ以外の皇子から皇王を、となるとどの派閥もそう簡単には譲れない。妥協点が見いだせなくなっているのだろう。

 これはもう少し待っていれば、皇国側からの使者も来そうだな。


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― 新着の感想 ―
これはピンチっていうよりチャンスじゃない? 帝国側は持てる選択肢をたくさん持ってるように思える 臆病ととられかねないってだけなら最悪つっかえしても良いし。同時に何か皇国に要求すれば臆病とも思われな…
[一言] 拝読しました。 いやーここまで混乱してる国だと、「此方の慈悲で関与しないでやるよw」って公言して、くだんの親子の首だけ返送したくなるわw。 国内向けに「攻める口実は別途見つけるからちょっと待…
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