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孫子の何か  作者: 稀Jr.
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7. マシンスペックはプロジェクトの大事なり(2)


 (2)とついているからといって、前章のコピーという訳ではない。二番目という意味だ。前章ですべてを説明できればよかったのだが、長くなったので途中で区切った。区切ったもののカトーとの会話は続いている。コピーではないことを記して、ハルナは五事のうちの「法」について尋ねる。



 「官道かんどうと言いますか、このプロジェクト?でしたか、法はどういう区分けになっているのでしょうか?」

 「法?というと」

 「そうですね。えーと、解り辛いと思うのですが、それぞれの職務というか手駒みたいなものですね」

 「手駒ね。プロジェクトとしては、ソフトウェア開発が増田氏、環境の設定はハードウェア周りは私カトー、そして、デザイン周りがシュヴァルツシルトさんが担当している」

 「しゅ・・・・え?」

 「シュヴァルツシルト」

 「シュル・・・え?」

 「シュヴァルツシルト、ああ、ややこしいのでデザイナさんでいいんですよ」


 増田氏がデザイナさんと呼んでいたのをハルナは思い出した。呼び名がややこしいので略したらしい。ところでデザイナさんの本名は漢字ではどう書くのであろうか?黒い盾?

 

 ハルナは頭の中で兵法の最初の部分を思い出していた。

 五事と言われる「道・天・地・将・法」は、五行に根ざしたものだ。五という数字に拘った五行正義もそうだが、「五」という数字にはさして意味がない。敢えて言えば、片手の指の数が五本だったという理由だろう。もし、三本であれば「三」という数字が優遇されていただろうし、七本あれば「七」が使われていただろう。記憶容量に結びつけられることも度々あるが、指折り数えるときの連想しやすさに結びついている違いない。

 ともかく、全体を「五」に分けること自体が、全体を見渡すことになる。ひとまとまりとして全体を把握するのではなく、分割してそれぞれを統治するのだ。五つに分ければ、ばらつきが出てくる。ばらつきが出てくれば、それに対して弱いところがでてくる。弱いところは防御が弱いのだから攻めやすいところだ。逆に言えば、防御を強化する場所でもある。

 視点を全体を見渡せる場所におき、俯瞰する。


 道:かみから与えられる指示のことだ

 天:天候のようにかみとは別に存在するものだ

 地:これから攻める居場所だ。地形や距離。

 将:将軍の質だ。将軍だけでなく士全体の質といってもいい

 法:軍隊の中の理で規律だ

 

 これが全てという訳ではない。しかし、細分化してしまって森全体を見落としてはいけない。部分が偏れば、全体の力が偏ってしまう。

 具体的な役割?あるいは仕事はわからないのだが、プログラマ、システムエンジニア、デザイナという兵がいるらしい。歩兵や騎兵みたいなものだろう。歩兵も昔は一塊で考えていたが、それぞれの特色を持たせることができる。字義通り歩く兵として、汎用的に数で押すこともできるが、「地」によって兵が持つ武器を変えることができる。槍なのか剣なのか盾を多く持つか。

 ぬかるみが多ければ重たい武装は避けるべきだろう。足軽と呼ばれる兵士のように軽装の防御を有した長槍部隊が適しているかもしれない。岩場が多い地域であれば戦車は向かず、騎馬が向いている。単純な比率ではない。戦場は生き物だ。地はさまざまな顔を持ち、ときには天が味方をするあるいは敵になることもある。火の藁を燃やして攻撃をしようとしたときに雨が降るかもしれない。しめった藁の束は燃えない。圧倒的に有利だと思った知恵でも天に裏切られることがある。しかし、天はかみの及ばないところにある。


 將聽吾計 用之必 留之


 この場合、将は私のことなんだろうか、とハルナは嘆息した。

 見たところ、増田氏とカトーさんは兵のようだ。あと新人は新人なのだろう。デザイナさんと呼ばれているしゅ・・・なんとかさん、ややこしいので、デザイナさんは同じく兵なのだろう。

 私をここに連れて来たxxさん(名前が聞き取れなかった)は、かみなのか?しかし、増田氏のぞんざいな言い方から思うと上という訳ではなさそうだ。


 仮に私が将軍だとして、この場を勝利に導けるのか?

 

 「ところで、しゅ・・・ええと、デザイナさんは何処にいるんですか?」

 「ああ、あそこのいるよ」


 小さめな人形と不思議な紙に囲まれてデザイナさんは居た。彼は呪術師なのか?いろいろな人形が色々な構えをしている。色々な武器や見たこともない武装をしている。

 一様に人形の色は黄色、いやに肌色に近い。ギリシャ彫刻のように裸に近いものも多い。天井から吊るされている不思議な紙には不思議な模様がたくさん書いてある。細長い布の固まりがたくさん床に転がっている。綿でできているのだろうか。寝るには良い形かもしれない。が、そこまで沢山いるのだろうか。不思議だ。

 ハルナの心に表現しきれない不安がよぎった。



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