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孫子の何か  作者: 稀Jr.
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6. マシンスペックはプロジェクトの大事なり


 後で知ったことだがカトーが操作していたのが今回のプロジェクトのサーバー機だった。最近でクラウド化が進んできて、プロジェクトごとにサーバー機を用意することは少ないのだが、時には顧客の要望に対して物理的なサーバーを用意しないといけないことがある。従来であればサーバー室などに置かれて隔離しされていたサーバー機なのだが、今ではその専用部屋はない。ほとんどのサーバー機能がクラウドに置かれるからだ。

 ラックに詰まれたサーバーをカトーが愛してしたかというとそうではない。カトーは自宅にサーバーラックを組むような性格ではなかったが、それが合理的な理由であれば自宅にサーバーを組むこともあだろう。それにカトーの「興味」を引けば自宅のキッチンにサーバーラックを置くことも負担とはないのだろうと思う。いや、それはの想像にすぎないのだが、いったい全体「サーバー機」は何なのか今もってわからない。当然のことながら、カトーと初めて会ったときには「サーバー機」が何なのかハルナは知らなかった。


 突然、その箱から爆音が鳴る。


「あ・・・」

「え・・・・」

「も・・・・」

「???」

「ちょ・・・」

「???」

「もう・・・・・から」

「???」

「も・・・・・・・て」

「???」

「・・・・・・・・・」

「・・・」

「あ、も・・・・・・ら」

「・・・」



 5分ほど経ち、箱(サーバー機?)の爆音がおさまる。それでも、ファーンという扇風機の音と言ってもの時代には扇風機なんてなかったが。勢いよくあおがれる扇位なものだろうか?


 ハルナは尋ねる。

「それは、いったい、何という動物なのですか?」

「動物?いや、これは生命を持っていないからサーバー機だね。いや、ハードディスクが生きているという点では疑似生命かもしれないけど」


 サーバー機という言葉をハルナが聞いたのはこれが初めてだ。

 カトーはサーバー機というものを解説してくれた。


「まずもって、サーバー機ってのは大量に電力を喰う。常にハードディスクが廻っている状態とそれの冷却装置が廻っているという理由もあるのだけど、電力を喰う。電力喰うのでエサ代が掛かる。つまりは電気代ね。電気代がかかるので、お金がかかる。この場合はランニングコストさ」

「ランニングコスト?」

「ええと、つまり、走り続けるための燃料、というかサーバーを飼うためのエサ代みたいなものだね」

「エサ代、ということは動物なのですか?」

「動物?いや、これは生命をもっていないから。というのは前にも云った科白だけど、疑似生命ではある」

「戦車を引く馬のような?」

「戦車?馬?ああ、軍事的なものに喩えればそうかもしれない。機動力とか戦闘力とかそういうものかな。あと使い続けるためのメンテナンスコストが掛かる」

「メンテナンスというと?」

「サーバー機も機嫌が悪くなったり、故障したり病気になったりするからね。病気ってのは何らかのコンピューターウィルスのこと。病気になれば、ウィルス対策ソフトで病気を治すこともできるけど、どうにも上手くいかない場合はハードディスクごと廃棄にすることもある。最近はハード部分に巣くってしまうウィルスもあるからね」

「病気をするんですか?」

「病気というのはものの喩えだけど、コンピュータウィルスという形で現実のウィルスや菌と同じように繁殖や蔓延されることがある」


 よくわからないが、サーバー機も飼うことができるし、サーバー機も病気にかかることがあるらしい。馬のように動くのだから騎馬として使うのだろうか?それとも、後詰の牛車か。


 兵國之大事 死生之地 存亡之地 不可不察


 まずは全体を把握して、兵法に従って「道・天・地・将・法」がどうなっているのかを調べることだ。まずは現状の戦力を把握しなければ戦場にもいけない。必敗ひっぱいだからだ。


「そのサーバー機というものの他に、地、ええとつまりは手元にある戦力はどのくらいなのでしょう?」

「戦力、ああ、プロジェクトメンバならばさっき増田氏の云った貴女をあわせて5人。ハードウェアのことならば、ここのあるサーバー機の他にPCがいくつかある」

「ピーシーというのは?」

「サーバー機の子供、というか、クライアント用のマシンだね。増田氏が使う開発機と検証機、デザイナが使う mac なんてのがある。macをPCというと怒る人もいるからね、macはmacと言うことにしている」

「その大きな板みたいなものは?」

「液晶モニタは、各PCに2枚以上ついている。作業効率を優先さえて増田氏が会社から引っ張ってきたものだ。予算をケチってノートPCで作業する場合もあるけど、今回の場合は短納期というのもあって、ある程度の予算は最初から降りてきているんだ」

「小さな板は?」

「あれは、スマートフォンだね。新システムに移行するついでに社内スマホを使おうという案で持ってきた備品なんだけど、そこまで手がまわるかどうかわからない」

「敵?ということですか?」

「ああ、敵、ってほどではないけど、横槍かな。社内でも部署ごとに軋轢があるし、できるだけ突っ込みたいところは突っ込みたいし」


 会社というのは「道」みたいなものだろうか?帝に従う民という意味では、会社も似たようなものなのだろう。何か占領を下達されて先手を打って出るという作戦らしい。

 増田氏の言葉はまったくわからないのだが、カトーさんの言葉はできるような気がした。


 法のことを聞いてみたい。


「それで、カトーさん、質問があるのですが」

「いや、カトー」

「え?カトーさん?」

「いや、カトーでいいから」


 やっぱり、カトーもよくわからない。


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