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空
朝目覚めると、空が真っ赤に染まっていた。
まるで塗料を混ぜたくったかのような、異様な色をしていた。
しばらくマンションのベランダから呆然と眺めていると、
突然インターホンが鳴り響いた。
玄関へ行ってみると、いつも見るドアは気味の悪い肉塊に覆われていた。
汁を垂らしながらうごめくそのぶよぶよとした何かはゆっくりと
しかし確実にこちらへ近づいて来ていた。
言いようのない恐怖を感じ、思わずベランダに逃げ戻り「助けてください」と叫んだ。
すると、赤い空に何かがほうっと映り始めた。
よく見るとそれは今いるマンションと、見慣れた街並み。
それをはるか上空から覗き込んでいるような、そんな光景だった。
藁にもすがる思いでその半透明の街並に手を伸ばすと、
体がふわっと浮かび上がり、そのまま空へ吸い込まれていった。
目を覚ますと、マンションの屋上だった。
ふと横を見ると薄緑のつなぎを着た用務員が立っていた。
「あんた運が良いよ。」
そう言って彼は去って行った。
空を見上げてみた。いつもの青い青い空だった。