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どう転んでも規格外

 翔が使用しているプログラムは3つ。


 ——総合型統括用AI【ISTARUS(イスタルス)

 その名称の通りゲームの『イスタルス』に関連する世界の構築、演算、管理、統括を主な役割としているが、ゲーム外でもよく働いてくれている。



 ——思考記憶補助ソフト【SECOND(セカンド) BRAIN(ブレーン)

 翔のプレドマに唯一搭載されている補助ソフトであり、トレースした思考を元に予測される結果を使用者の記憶とする……。

 使い方によっては3時間を3年に変えることをも可能とするソフトである。



 ——セキュリティソフト【セーちゃん】

 ただのセキュリティソフトにしかすぎなかったものにAIが組み込まれ、喋って考え日々更新される自動式ソフトに進化した。

 やけに俗物的な名称となっているのはAIを組み込んだ張本人である【ISTARUS】の付けたアダ名がそのまま採用された結果だ。


 以上。



 総合的に統括されているプログラムを【ISTARUS】と分けて考え、挙げていくなら数は増えるけれど、その詳細についてをここで特筆する必要もないだろう。


 念のために付け加えておくが、たったこれだけのプログラムでプレドマを機能させることができるのは翔くらいのものである。

 照充は断言する。


 規格外だ。常軌を逸している。

 何をどうすればAIがAIを生み出すなどという奇行に走るようになるというのか。

 いくら学習機能を有していると言ってもそんな奔放なプログラムに成長するなどという話は聞いた試しが他にない。


 今日、翔の家を訪ねた最たる理由はそのカラクリを解き明かすことにある。



「別に、言うほど特別なことはしてないんだけどな……」

「それは君の基準で言って、だろう。ここに来て出し渋らないでくれよ」

「出し渋るほどのものじゃない」


 手を伸ばした翔は端に寄せていたデバイスを引き寄せる。

 旧機器のソフトを読み込みための周辺機器だ。

 それと、プレドマを4つ(・・・・・・・)

 現在使用中のものとは別口で追加する。


「人の感情を再現するのに喜怒哀楽、それぞれを担当するプログラムを置いたら、あとは【SECOND BRAIN】で時間をカサ増ししつつ延々とゲームを周回するだけだ」


 俺がやってるゲームはこれ、とディスクを機器から取り出して見せる。


 ……容量の都合で分けてはいるけど、追加した4つのプレドマにはそれぞれ『喜』『怒』『哀』『楽』のデータが保存されており、メインのプレドマに搭載された簡易版を含めて、そのプログラムは【ISTARUS】の統括下にある。


 それぞれが演算した結果を元にして構築された『反応』がゲーム内のキャラに反映されて、より現実に近い世界を創り上げる。

 ゲームに求めた感情(リアル)がAIの感情(知能)として定着した……。


 ただ、それだけの話。


「やってる内に今の【ISTARUS】になる」

「……プレイ時間の桁が可笑しくないかい?」

「ゲーム内の時間で算出されてるからな」


 実際の時間で言えばもっと少ない、と翔は続けるが年数を単位として3桁を記録している時点で色々と可笑しい。……そう思う自分こそが可笑しいのか、と照充は一瞬考えたけれど、隣で京介が「うっわ、お前こんなやり込んでたのかよ」と呆れ混じりに驚いていることから感覚が狂っているのはやはり翔の方であろう。


 年数で3桁ってなんだ。


「……まあ、ここまでやり込まなくても10年分くらい……モブも演算に含んで動かしてたら自立プログラムの基礎は固まる、と思う」


 だから桁が可笑しいんだって。


「……多島くん、君、10年分の時間をゲームに費やせるかい?」

「費やせるかどうかの前にモブも演算に含むって時点で処理落ち確定だっつの」


 翔のプレドマは限られたプログラムで機能しているのではなく、プログラムを限らないと機能しなかった……。

 そう言い換えた方が正しいに違いない。


 まあ、それでも、AIを自立させるほどゲーム特化を極めるというのは常軌を逸していると言う他ないのだけれど。

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