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ようこそプレドマの世界へ!

 初めに言っておこう。

 これはゲームの話である。


『Playing Dream Machine』

 通称プレドマ。


 ワイヤレスイヤホンと同型のコントローラーが神経系と繋がって仮想空間を作り出す。

 ポータブル機器の1種である。


『DREAM on DREAM ——夢を夢に——』


 第1世代と呼称される初号機の売り文句はテレビCMはもちろん、店頭の至るところに並び、その年の流行語にも選ばれた。

 本体の売れ行きについてはもはや語るまでもないだろう。


 発売から数年で普及率は世界人口の約9割を占めた。


 第2世代ではソフトをインターネットからのダウンロード制にすることで軽量化を計り、記憶容量が増加された第3世代では史上最多の予約数と収益を記録する。


 パソコン。電話。テレビ。ゲーム機。

 あらゆるハードウェアを複合すると共に過去遺物へと変えた。

 プレドマの使用用途は様々だ。


 課題に取り組む学生。

 接待をするサラリーマン。

 ドラマを見る主婦。

 娯楽も仕事も学習も全て寝ながらにして行えるのである。


 プレドマを起因とする過眠症の発症者が続出し社会問題としてニュースに取り上げられたこともある程で——。



          *




「カケル! あそこじゃないか、ハルメア地下道の入口」


 減藍(へりあい)色のショートボブを揺らして振り返った女が快活な声を響かせた。

 彼女の名はユースピリア。

 人に近い容姿ながらその頭部に生えた猫耳が目を引く……。


 照り付ける日差しに目を細めた信山(のぶやま)(かける)は額から流れ落ちた汗を手の甲で拭った。

 砂漠の乾燥した風が肌を撫でる。


 ……ここ、イスタルスの世界は獣の特徴を備えたまま知恵を得た、いわゆる獣人が各国の中枢を担っている。


 風を守護する鳥のルィロ族。

 地を守護する狼のプレザ族。

 水を守護する魚のバリエナ族。

 火を守護する猫のシャルト族。

 エトセトラ。


 そして、獣人ならざる者たちの中でも翔のような霊長目ヒト科の哺乳類、ホモサピエンス。

 ……何の特徴を持たない人間はアンス族と呼ばれている。


 ユースピリアはシャルトとアンスの合いの子だ。


 翔は彼女の隣に立つと眼下を見下ろした。

 地図屋から買い付けた地図と依頼人の話を合わせ1つ頷く。


「間違いなさそうだ」


 東ガトビエナ砂漠の中腹にあたる『砂風に微睡む丘』の西の外れ——。

 迂回して下り立ったそこは岩壁に囲まれていた。

 影の中に入れば日射しにあてられた体を癒す。


 周囲に人気はない。

 使われなくなって久しいのか入口横の井戸は朽ちて枯れていた。


「……けど何でまたこんな場所に入ったんだ?」


 預かった鍵で比較的新しい造りの扉を解錠しながらユースピリアは呆れ混じりに呟く。

 依頼人の話だろう。


 魔法が使え、魔物が蔓延り、移動手段の一つにドラゴンが含まれる。

 四大元素を守護するそれぞれの種族が国を、大陸や海を治めている。


 そんな世界で、遺跡を荒らしたりモンスターの討伐依頼を引き受けたり。

 気の向くままに資金を集めながら過ごしている2人は旅人というよりも盗賊に近い。

 物の価値を計る『目』は持っている。


 何の飾り気もなく造りも荒いここが、一攫千金、お宝の山を見込める場所には到底見えなかった。


 それに……。

 依頼人の小汚い姿を思い出してユースピリアは眉をひそめる。


 砂漠はリュンクス。

 シャルトの治める地にある。


 跡地とは言え地下道は国の管理下にあるはずだ。

 人相からして役人とは言い難かった相手がどうして鍵を所持していた?


 今回、引き受けた依頼の内容はハルメア地下道に住み着くコウモリ型のモンスターの討伐及び依頼人が落としたという荷物の回収と、比較的単純だが、しかし、その理由も目的も不明……。

 理由や目的を明かさなければ依頼できないなんて決まりもないけれど世間話程度に軽く話す者が大半と言える中で頑なに語りたがらなかった。

 はっきり言って怪しさしかない。


 地図をしまいながら翔はユースピリアの疑問にさらりと答えた。


「牢獄にブチ込まれてる仲間を助けたかったんじゃないか?」


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