第1章 6話
御在所サービスエリアを出発し、しばらくしたらカラオケ大会が行われる事になり、弥生は「久しぶりに一緒に歌おうよ」と誘ってきたが、今は歌いたい気分では無かったから「今日は弥生一人で歌って」と流れる雲を見ながら言った。
彩月は昴の様子がおかしい事を気付き、昴と一緒に歌える歌を本で探した。彩月はこれをお願いしますと言い本を彩月に回した。弥生は昴の事を心配し、昴の手を握った。昴も握り返して弥生は笑顔になっていった。
カラオケの順番が回ってきて、マイクは一本しか無かったから弥生は昴にマイクを持っていった。弥生がリクエストした曲はミックス92の「嬉しい夢を……」のイントロが流れた。彩月はやはりこれを選んできたかと思った。
弥生は昴が歌いやすくする為にイントロに合わせてコーラスした。歌い出しの歌詞に出た瞬間、自然に【その出会いに名前をつけましょう】と自然に歌っていた。いつものように二人のハーモニーになっていて、めぐみも二人の歌声に聞き込まれた。最後のサビ、二人は歌い慣れているから、いつもようにお互いの事を見つめ合って【The bonds are connected by eternal special love】とラブラブなハーモニーで曲を締めた。
この歌を歌うとなんか初心に返るような気持ちになって自然と笑顔になった。それに気付いた弥生が「昴、やっと笑顔になったな」と小声で言った。その様子を見ていた彩月は岡岡コンビは相変わらず仲が良いなと思いつつも何故めぐみがあんな嘘を言ったのが分からなかった。
次の休憩ポイントについて、急に彩月が弥生に「弥生、ちょっと昴を借りていい?」と聞いた。「聞かなくていいよ」と言い昴は彩月についていった。
めぐみも続けて降りて行った。その時めぐみの鞄から洋型封筒が落ちた。それに気付いた弥生が「めぐみちゃん、めぐみちゃん」と言ったがめぐみには聞こえなかった。仕方なく弥生が封筒を拾おうとすると、封筒からある写真が出てきた。拾ってその写真を見てみると、ゴーグルを取って笑っているめぐみちゃんの隣に写っていたのは昴に似ていたがゴーグルかけていてはっきりとは分からなかった。もしかしてめぐみちゃんが言っていた好きな人ってまさかねって思いながら誰も気付かれないように写真を封筒に戻した。
昴はめぐみと初対面って言っているがこの写真に写っているのは、もし昴だったとしたら、私達に嘘をついている事になる。どうして私達に嘘をつく必要があるのだろうと思いながらボーとしながら考えていた。めぐみちゃんに告白したのってまさかな、そんな事あり得ない。考えたくもなかった。
バスに残っていた海翔が「弥生ちゃん、なんか浮かない顔をして昴となんかあった?」と心配して声をかけてきた。「何にも無いよ。ちょっと疲れただけ」と誤魔化しつつ自分の手提げ鞄にその封筒を入れた。