第1章 4話
一時間四〇分ぐらい経ってようやく最初の休憩ポイント、東名阪自動車道の御在所サービスエリアに到着した。普段だったらしおりで予定を確認する昴だが、めぐみの事が気になり予定表を見るのを忘れて「ここで休憩するの?」と弥生に言ったら、昴が予定表を見ていなかったのが、あまりにも意外な表情をしながらも「そうだよ。三十分間の休憩だよ。昴、予定表を見てなかったの?珍しいね」と昴に教えた。
「そうか」と言いながら貴重品などを持ち、観光バスから降りて弥生と手をつなぎ中に入って行った。弥生と名物のお店を見て回り昴はトイレと煙草を吸いたくなって弥生に「弥生、僕トイレに行ってから一服してきて良い?」とジャンパーのポケットから煙草を取り出した。それを弥生に見た時一瞬むっとしたから、昴は吸うのやめようかな雰囲気が出て横目で見た弥生が笑顔になって「いいよ。煙草吸ってき。私もトイレに行って外の空気を吸ってからバスに戻っているから」と笑顔で言って二人はトイレの前で別れた。
弥生を見送ると、昴は我慢していたから早足でトイレに入っていた。トイレは車椅子でも通れるぐらいの広々な空間で、壁の二面に小便用便器が設置され、もう一つの壁側には個室のボックスが四つあった。昴は一番右隣にある小便器に立ち、シンガポールのマーライオンの噴水のごとく、とどまる事無く用を足していると、海翔が昴の横に来て「昴」と声をかけた。
「海翔かバスに酔ってないか」とわざとらしく聞くと「酔うわけ無いだろう」と笑いながら話して「それより、弥生の友達の美容師さん。きれいだよな。僕タイプかも。昴は弥生が居るから関係ないか」と海翔はめぐみに一目惚れしたような雰囲気を話していた。「確か、星口さんだったって」とぼけながら「それより、海翔スペインに彼女居なかったって?」問いかけた。
「言っていなかったって。とっくに別れているよ」と言い昴は「じゃあ新しい恋するチャンスだから頑張れよ。星口さんは冷静な人だから」と言ってしまい「昴、初めて会ったのに何でそんな事分かるの?」と突っ込まれて、昴は表情を隠すように手を洗いながら「なんとなくかんだよ。単なる見た目でそういう人かなと思った」と誤魔化して「僕煙草を吸ってからバスに戻る」と言って逃げるように男子トイレを後にした。
昴は急ぎ足で一番西側にあるガラス張りの喫煙室に入ったらちょうど誰も居なかった。ポケットから一㎎の煙草を口にくわえ、マッチで火を付ける。大きく煙を吸い込んで、気持ちを落ち着かすようにふーと息を出した。気持ちが落ち着いた所で、弥生にめぐみに告白した事を知らせたらどうしようと思いながら空を見ながら煙草を吸っていた。