第3章 最終話
「まもなく京都です――」とアナウンスが聞こえたから昴はそっと弥生を起こした。「もうついたの?」と寝ぼけながら言ってきたから「もうすぐだから準備しよ」と言って三人は降りる準備を始めた。
京都駅に着いたらもう日が落ちていて、さらに冷えていた。八条口の時計を見たらもう十七時過ぎていた。弥生は寒さに負けて太ももをさすっていた。それを見た昴は鞄から膝掛けを出し弥生にかけてあげた。
「ありがとう」とお礼を言い、横断歩道で信号待ちをしていたら、弥生が「昴、彩月」と急に呼んだ。二人とも同時に弥生の方に顔を向けたら、弥生が目線で合図しながら「あそこにいるのって海翔とめぐみちゃんじゃない?」と言ったから、二人は弥生の見ている視線改めてみた。
「本当だ。星口さんと海翔だ。あの二人いつの間に出来ていた……もしかして予定ってデートだったのかな」と驚きの表情で言った彩月だが、それに対して昴はとうとうやりがったなと思いながら二人の様子を見ていた。その様子に気付いた弥生は「あの二人の関係の事知っていたの?」と不思議そうに聞いてきた。「いや、ここまでは知らなかったけど」と言葉を切った。「けどって何よ。もったいならないで教えてよ」と彩月が詰め寄ってきた。
「箱根旅行の行きのトイレ休憩時にめぐみちゃんに一目惚れしたような事言っていたから、とうとうやりがったなと思っただけ」と答えに、弥生と彩月はなんか納得した表情でめぐみちゃんと海翔を頬ましく見ていた。海翔を見ていると、短い時間でめぐみちゃんとデート出来るなんてすごいなと思いつつ羨ましかった。いつの間にか弥生の事を見て、弥生の事を幸せにして行こうと思った。
「おーい昴、青信号だよ」と弥生が言った。「ごめんごめん」と言いながら車椅子を押して横断歩道渡って「私の顔に何かついていたの?」
「いや、何でも無いよ」と昴は言うと「しっかりしてよ。昴」と言って「分かってるよ」と明るく答えた。
昴に聞こえない声で「……いや、私の旦那さん」と笑って言ながら、私が頼りない旦那さん昴を支えて、二人で笑って歩いて行こうと弥生は前を見ながら思っていた。