第3章 12話
境内の樟が、若葉の季節には、緑という黄金色に輝いて、初夏の空の蒼によく映ったある日、海翔は弥生に紹介してもらった美容院のドアを開けた。
「いらっしゃいませ」と言いながらドアの方へ向いた。「あっ弥生ちゃんのお友達の織田さんでしたよね」と笑顔で迎えた。
「覚えていてくれたですね。なんか嬉しいな。弥生ちゃんに聞いて星口さんのお店に来てみようと思いまして」「弥生ちゃんからのお客さんなら気合いを入れないと」と言いながら心臓が急にドキッとした。
美容院の椅子に座るとめぐみと目が合うと、時間が止まり周りが透明になってめぐみの声が聞こえなかった。めぐみが「織田さん、織田さん」と肩を揺すって声をかけた。海翔は我に返って「あっ星口さん、どうしましたか?」と聞き返すと、私の事を見ていた事を知らないふりしながら「どんな髪型にしますか?」と聞いた。
「初めてだから、星口さんにお任せします」と言い「分かりました」と言い切り始めた。海翔の髪をととえながら「岡さんとの付き合い長いのですか?」と昴の未練が無くなってもつい気になって聞いてしまうめぐみだった。
「昴か、小学校からの付き合いですよ。僕より長いのが弥生ちゃんかな。あの二人は保育園のときからですし」と答えて、改めて弥生ちゃんと昴君がこんな長い付き合いなら、元々勝ち目がなかったかなと思ったことに表情に出て自然に手が止まっていた。
「星口さん、大丈夫ですか?」と心配したような表情で聞くと「ごめんなさい。何でもありません。進めますね」と言い髪を切ることを再開した。
星口さんに髪を切ってもらっているんだと思うと急にドキドキし始めた。あっという間に時間が過ぎ「終わりましたよ」と海翔に声をかけた。鏡を見ながら「かっこよくしてくれて、ありがとうございます」とめぐみにお礼を言いレジの方に向かった。
「弥生ちゃん割引で一割を引いて三千六百円になります」と値段を見せた。「安くしてもらって悪いですね」と言いながら提示された額をめぐみに支払った。
「いやいや、また来てくださいね。弥生ちゃんの話もまた聞かせてくださいね」
「はい、これから通わせてもらいます。今日はありがとうございました」と言いお店のドアを開けた。
「またのご来店をお待ちしております」と笑顔で見送りながら、なんだか昴君とのメールしていた頃の気持ちと似た感じがめぐみの中でしていた。




