第1章 1話
弥生達と箱根温泉ツアーに行く為に実家を出ると、京都らしい底冷えの寒さで手袋をしないといけないぐらいの寒さだった。去年クリスマスに弥生からもらった、赤い革の手袋をして昴は早めに京都駅八条口のバスターミナルに向かった。京都駅のバスターミナルに着いて皆で観光バスを待っていたら、「岡君、おはよう」と後ろから聞き慣れた優しい声が聞こえた。聞こえた方向に振り向くと昴は急にびしっとして「榊部長、おはようございます」と自然に会社で会うように言ったら榊部長は笑って「ここは会社違うし、プライベートで来てるから岡君リラックスしてよ。吉岡さんお久しぶりです」と言ったら昴は表情が和らいだ。
「お久しぶりです。いつもこの昴がお世話になってすいません」と言ったら昴は少しむっとしたが、榊部長が「岡さんが居る事で助かってますよ。岡さんは若いのにもう私の右腕で部長代理ですよ」と弥生達の前なのに、いつものプライベートの褒め方で榊部長が昴の頭となでながら言った。
彩月が驚いて「あの昴がもう部長代理なの?」と驚きながら昴は「一応」と渋々答え、榊部長に、「榊部長、その褒め方はやめてくださいよ。恥ずかしいです」と言ったが、急に海翔が「そう言いつつも昴、嬉しそうじゃん」と突っ込まれそれを見て、この雰囲気が彩月はいつものこの四人の雰囲気だなと微笑んでいた。
彩月が弥生に「昴、いつの間にか出世コースのまっしぐらじゃん、すごいな」と話したら、弥生はみんなには聞こえない声で「まあね。だけど昴には荷が重たいみたい。いつも電話で疲れた声で弱音を吐いているから」と答えたら、彩月が「はいはい、惚気はここまでね。でもすごいよ」と言ってくれて弥生は自分の事にように嬉しい気持ちになっていた。
「岡君、私は二号車だからまた後で」と言って榊部長は二号車に乗り込んで行った。昴達は一号車に乗り込んで、弥生はいつもと変わらず昴の隣に座り、「昴君、実はいつも私の髪を切ってくれる友達を誘ったし、来たら紹介するね」
「分かった。クリスマスの時も可愛くしてくれたからお礼を言わないといけない」と言った瞬間、めぐみがバスに乗り込んできたの弥生が気付き、めぐみに手を振り「こっち」と声をかけた。めぐみが近づいてきて、昴は星口めぐみさんだと気付き、頭が真っ白になってパニックになり弥生に気付かれないように窓に目を向けた。