第2章 10話
その頃、救急車の中では、救急隊員が集中治療が出来る大きな救急病院を探した。箱根で大きな国立病院の神奈川病院に運ばれる事になった。星口さんは昴に伝えようと昴の携帯に電話をした。
昴はバーから出てホテルのエントランスで彩月と榊部長の三人で、海翔からの連絡を待っていた。昴の携帯が鳴った。昴は携帯を見たら知らない携帯番号だったから、電話を切った。すぐに同じ番号から電話がかかってきたから弥生に関する事かなと思って電話を出た。
「やっと出てくれた。もしもし、私、星口めぐみだよ。弥生ちゃん、神奈川病院に運ばれる事になった」と昴の事を海翔に頼まれたから星口さんは自分の気持ちを押し殺しながら伝えた。
「星口さん、伝えてくれてありがとうございます」と素直に感謝の気持ちを伝え「すぐに僕も病院に向かいます」と言い電話を切った。いつの間にか榊部長が居なくなっていた。急いでホテルを出たら榊部長がタクシーを止めていて、榊部長が手を振り、昴と彩月を呼んで三人でタクシーに乗り込んだ。運転手に「急いで神奈川病院へお願いします」と言い、昴は手を合わせ弥生の無事を祈っていた。
弥生は病院について、すぐに手術室に運ばれる事になった。手術室の前で星口さんは手を頭に当てて手術室の前の椅子に座っていた。そこに昴達が走って手術室の前にやってきた。
「星口さん」と声をかけた。それに気付いた星口さんは昴の表情を見て、自然と涙が溢れてきた。昴は手術室の赤いランプを見て「弥生の状態どうなの? 教えてよ」と言いながら、泣いている星口さんの肩を持って責め立てた。黙って何も言えずに星口さんは昴からの攻撃を受けていた。それを見た、榊部長と彩月はさすがにまずいと思ったから、昴の両端から無理矢理星口さんから離した。「彩月、榊部長離してよ」と昴は暴れ出した。さすがに二人は呆れて榊部長が言いかけたその時、彩月が「昴、いい加減にしなさい」と昴には普段見せない表情で怒った。
昴は急に静まり、我に返って「分かっているけど星口さんが近くに居ながらも弥生が事故にあった事に星口さんに当たってしまった。星口さんごめんなさい」と謝罪をした。「昴君の私に当たる気持ちも分かるから気にしないで。弥生ちゃんの状態なんだけど正直危ないみたい。強く打ってしまって生存率が四割ぐらい」と真剣な目で言った。先ほどまで怒っていた彩月も黙って聞いていた。
昴はしばらく弥生に付き添ってあげたいと思ったから「榊部長、ちょっとお願いがあります」と言ったら榊部長が分かっている素振り「お願いって有休でしょ」と昴の言いたい事お見通しと思いながらも真剣な表情で「いつまでほしいの?」と聞いてきた。
昴は少し考え「とりあえず三日間ほしいです」と頭を下げながら言ったら「岡さん、頭あげて。三日間は有休をあげます。私は岡さんの業務の引継ぎとかあるからここで失礼するけど、吉岡さんが回復されるの願ってます」と言い昴の肩をポンポンと叩いて病院を出て行った。
榊部長が見えなくなって、僕が弥生からも星口さんからも逃げ出さなかったら弥生がこんな目に遭わなくで良かったのにと昴は悔しくなり壁を思い切り叩いた。二人はその様子を黙ってみていた。