プレゼント Ⅰ
「じゃあ、まずはサンディからだ」
ヤーコブがサンディへ差し出したのは、濃緑色の小さな箱だった。
彼女が開けてみるとそこには鎖の付けられた金色の懐中時計が収められていた。
「まあ……小さいのに、とっても綺麗で……素敵ですわ」
とても気に入った様子のサンディが時計を裏返してみると、様々な形の草花が彫られた、賑やかな柄があしらわれていた。
窓の光を受けて輝くそれを見て、サンディの表情は明るくなる。
「気に入ってくれたかな?」
「ありがとう。とっても、気に入りましたわ。久しぶりにあなたからプレゼントを貰えましたわね」
「それなら、よかったよ」
サンディは愛おしそうに時計に頬ずりしていた。ヤーコブも満足そうに頷き、笑っていた。
レイシーは幸せそうな二人の様子を見て、自分までも和やかな気持ちになっていた。そして。誕生期を迎えているのはサンディだけでなく、自分もだ。自分にはどんなプレゼントがあるのだろうと、早くも胸をときめかせていた。
「レイシーにも、プレゼントがあるのよ」
アリエッタがレイシーの肩を叩く。待ってましたとばかりに、レイシーは笑顔を向けた、
「やったあ!」
「うんうん、レイシーへのプレゼントはねー、私とアリエッタで選んだんだー!」
「こっちも、気に入ってもらえると嬉しいわ」
アリエッタは大きな白い箱を差し出してきた。サンディへのプレゼントと比べると、とても巨大な箱だ。
一体何だろう。わくわくしながら箱を開くと、白い箱よりも更に真っ白な、畳まれた服が現れた。
「あ、服! 着てみてもいい!?」
「ええ。きっと似合うと思って、市場の服屋さんで選んできたのよ。私もそれを着たあなたを見てみたいわ」
「今の服を脱がなくても、袖を通すだけでいいよー!」
言われたとおりにレイシーは、白い服を着用する。話を聞いていたオルガが用意してくれた鏡で自らの姿を見てみると、それはエプロンドレスだった。
実際に着てみると色はより白く感じられ、純白と言っても差し支えないほどで、自らの黒い髪とは対照的だった。
肩と裾の所にはふんわりした印象を与えるレースのフリルが付いている。最低限の装飾でも少女らしい可憐さがよく表れていた。
そして何よりも、友だちが自分の為にこれを選んでくれたのだと思うと、胸の中があたたかくなる。このまま何分も、何時間も着ていたいような気分になった。
「すてき……」
レイシーは思わずつぶやいていた。
「お、似合ってるねー! かわいい!」
「まあ、すごくいいわね! 元気そうで、かわいくて。 きちんと選んだ甲斐があったわ!」
「本当に、とってもすてき! オーネ、アリエッタ、ありがとう!」
オーネとアリエッタがにこにこしながら褒めてくれる。嬉しくなったレイシーは他の人にも感想を聞いてみたくなり、部屋にいる人全員に聞いて回った。
「どう? わたし、かわいい?」
「ええ、すごくかわいいですわ! こういう服もあなたには似合うのですわね。今度、探しに行きましょう!」
「僕もそう思うよ。女の子らしい可愛さと眩しさが見事に一緒になっている」
「素敵でございます。一つ、今度の刺繍にしてみましょうか」
口ぐちに称賛を受けさすがに少し恥ずかしくなったものの、それ以上にレイシーは得意気だった。
食事の片付けをしている爺やにも早く見せてあげたくなった。
御無沙汰しております。ようやく更新できました。今回のお話は文字数も少しだけになってしまいましたが、2月にはきちんと復活しますので、今後とも本作をよろしくお願いします。